がん保険選びで見落としてはいけない7つの項目

がん保険は、生命保険と比べるとだいぶ複雑です。「人が亡くなった」というはっきりした事実をもとに保険金を支払う生命保険と違い、「がん」という病気にも、たとえば上皮内がんなどの種類や段階がありますし、保障内容も診断・入院・手術・通院といった、保険金給付の対象になる事柄がいろいろあり、それぞれに細かな条件があるため、にわかに理解しにくい内容になっています。

ここでは、がん保険選びをするときに、まずおさえておきたい、がん保険の注意点を見ていきたいと思います。

1 がん保険の保険料は、60歳あたりで急激に上昇する

まず、保険には、期間が決まっている定期保険と、保障がずっと続く終身保険とがあります。終身保険は、保険料はずっと変わらないのに対して、定期保険は、更新するたびに上がっていきます。

定期保険は、若いうちは保険料が安いのがメリットです。反面、年齢とともに保険料が上がっていくため、長期間加入するつもりなら避けたほうがいい保険です。

特に、60歳前後からがん保険の保険料は急激に跳ね上がります。これはそのころからがんにかかるリスクが上昇するためです。3社の保険について年齢ごとの月額保険料を調べてみました。

保険会社 A社 B社 C社
契約可能年齢 満20~満69歳 満20歳~満70歳 満6歳~満74歳
20歳 750円 467円 1,340円
30歳 920円 792円 1,430円
40歳 1,350円 1,467円 1,930円
50歳 2,390円 3,292円 4,460円
60歳 4,580円 7,327円 8,310円
70歳 15,597円 15,550円

グラフにしてみると、60歳以降の急激な値上がりがよくわかると思います。

60歳以降の急激な値上がり

さらに、「契約可能年齢」にも注意してください。今回調べた中でも、A社の商品は70歳では契約できませんでした。ほかの保険会社でも、保険には原則として契約可能な年齢の上限がありますので、定期保険を更新し続ける形にしていると、いつか保険に入れなくなる(更新できなくなる)時期が必ずやってきます。年齢が上限に達しなくても、がん以外の病気になってしまったことが原因で、審査が通らず次の更新ができないということもありえます。

一方で、年齢が上がるほどがんのリスクは高まっていきます。国立がん研究センターがん対策情報センターの統計でも、男女とも50歳代からがんの罹患率(がんになる割合)が増加していき、特に男性は60歳以降、急に上がっていきます。

がんの罹患率

そのため、定期保険では、もっともリスクが高まる70歳前後以降に、がん保険に入れないという事態になってしまうのです。

保険料を抑えるために定期保険に入る場合は、定期保険はあくまで一時期のものと考え、保険に頼らずに済む貯蓄などを準備するか、もしくは終身保険に入るかしたほうがいいでしょう。

2 医師の診断確定のみでは、給付金の支払い対象にならないケースもある

がん保険には診断給付金があります。これはがんと診断された時点で保険金が受け取れるというものです。最初にまとまったお金を受け取れることで、今後の医療費、通院治療中の生活費などで持ち出しが発生するのを防げるのが、がん保険の重要なメリットだと言えます。

ところが、この診断について、ただ単に医師に診断されただけでは給付金がもらえないケースがあります。これは、商品によって診断だけでなく、それにともなう入院や手術が支払要件になっているものがあるからです。

診断給付金なのに、診断だけではダメと言われるとなんだか釈然としない人も多そうですが、決まりは決まりです。事前に、「診断給付金の条件」をよく確認しておくべきです。

入院が要件の場合、さらに入院日数などの条件がある場合も多いので注意しましょう。また、責任開始日以前に入院をして、その後に診断確定した場合、対象にならないこともあります。

3 診断給付金が支払われるのは「最初の1回だけ」という場合がある

診断給付金については、回数についてもよく確認しておきましょう。診断給付金には支払い回数の要件があります。一度がんと診断されて給付金を受け取った後、新たに別のがんと診断されたとき、2回目が支払われるものと支払われないものとがあります

複数回支払われる場合でも、回数に上限がある場合や、最初の診断から一定年数を経過していなければ支払われないなどの条件がある場合があります。

もちろん、複数回、できれば何度でも給付される商品のほうが保障が厚いと言えます。一度でもがんにかかってしまうと、以後、新たに別のがん保険を契約したり、医療保険に入ったりするのが難しくなります。そのため、何年も経ってから再度、がんにかかったときの保障のために、診断給付金は複数回受け取りたいところなのです。

特に注意したいのは、次に解説する、がんの種類により給付金の差を設けている場合です。複数回給付金が受け取れたとしても、最初の診断が上皮内新生物で、給付額が少なかった場合、次に通常のがんの診断を受けた時に回数制限・年数制限で診断給付金が受け取れないなどということになると、受け取った保障額の面でかなり損をしてしまいます。

4 がんの種類によって給付金が下りない、給付金額に差が付いている場合がある

がんには、上皮内新生物と呼ばれる、組織の浅い部分にでき、浸潤(組織内で増殖して広まっていくこと)を起こさないタイプのがんがあります。上皮内がんとも呼ばれます。

上皮内がんではないがんは、区別して悪性新生物などと呼ばれます。基本的に、上皮内新生物(上皮内がん)は、がんとしては「軽い」がんだと言えます。

そのため、がん保険は、がんが上皮内新生物だった場合は、給付金を減額したり、対象外にしたりしているものがあるのです。たとえばある保険会社のがん保険は、通常のがんの場合、診断給付金100万円が受け取れるところ、上皮内新生物の場合は10万円としています。いきなり1/10になってしまうのです。

上皮内新生物かどうかにかかわらず、同額の保障をしている保険もありますので、ここは事前に確認しておきたいところです。ただし、上皮内新生物は、悪性新生物に比べて治療が容易であることも事実です。それだけ医療費もかからないですむということですから、その意味では給付金額が違うことの合理性はあります。上皮内新生物も同額保障されるかわりに、保険料が高いということもありますので、給付条件を頭に入れた上で保障内容と保険料のバランスを見ていくことが大切です。

5 入院日数は減少傾向にあるため、通院給付金を重視すべき

がん保険が必要だと言われるのは、がんは治療が長引きがちな病気だからです。よく「5年生存率」とい言葉を聞くと思いますが、これは治療後5年間再発がないことをがんが完治したことの目安としているからです。逆に言えば、5年程度は治療や検査などが起こりうるということです。

ただし、統計では、がんによる入院日数は減ってきています。厚生労働省の統計「患者調査」で、傷病分類別にみた「退院患者平均在院日数」(退院するまで何日間入院していたか)の推移をみますと、新生物については平均でひと月以上入院していたのが、15年で20日以内にまで減少してきています。

がんによる入院日数

これは、医療の進歩などにともない、がんの治療が入院主体のものから、通院主体のものに変化してきているからです。

そこで気を付けたいのががん保険の保障内容。入院を基準とした給付になっている商品が多いのですが、入院日数が少ないと、結果、保障額があまり受け取れないことに。にもかかわらず、通院治療が続けば医療費はかかってしまいます。これでは保険に入っている意味がありません。

最近のがん保険は、がん治療の実状に沿って、通院治療でも給付金が受け取れるタイプのものがあります。今後のがん保険は、通院給付金に注目して選ぶのが重要だと言えます。給付にあたっては、入院後の通院治療や抗がん剤治療での通院に限られる場合など、条件があることもありますので、合わせて確認したいところです。最近は、通院保障の中に、往診も含むとしている保険もあります。

6 90日の免責期間が存在するので、がん保険切り替えの時は注意

がん保険特有のものに、「90日の免責期間」があります。

通常、保険には責任開始日というものがあり、その日以降に発生した出来事に対して、保障がありますという取り決めのことです。がん保険なら「責任開始日以降にがんと診断された場合」、保険金が受け取れるわけです。

責任開始日は以下の3つのことがすべて完了した日を言います。

・申し込み
・告知・診査
・第1回保険料の払込み

つまり、申し込んだだけでは保険に入ったことにならず、必要な告知や診査を終え(保険によって医師の診断が必要な場合それを終える必要があります)、なおかつ最初の保険料を支払ってはじめて、責任開始日が始まります。「申し込み」「告知・診査」「第1回保険料の払込み」の順番は問いませんが、3つすべてを完了しなくてはなりません。

がん保険は、ここからさらに90日の免責期間があり、それが終わってからでなくては責任開始日が始まりません。その期間も、保険料などは支払っていくことになるのですが、この期間にがんと診断されても保険金は受け取れないのです。

重要なのは、がん保険を見直して、別の保険に切り換える場合です。新しい保険に入ることになって、前の保険を解約してしまうと、新しい保険には90日の免責期間があるため、保障に3か月の空白ができてしまいます。

かといって、その間、前の保険を継続すると保険料の支払いを二重になってしまうため、悩ましいところなのですが、運悪く免責期間中にがんになってしまうリスクを思うと、できれば空白ができないように契約時期を考えたいものです。

7 がん保険の先進医療特約は、がん治療の先進医療しか保障されない

がん保険には先進医療特約をつけられます。これはまだ保険適用になっていないため、医療費が高額になってしまう先進医療を受けたときに、医療費を保障してもらえる特約です。

先進医療にはさまざまなものがありますが、多くはがんの治療に使われるものです。陽子線治療や重粒子線治療などが代表的でしょう。

平均技術料 年間実施件数 医療機関数 平均入院日数
陽子線治療 約258万円 1628 8 18.3
重粒子線治療 約299万円 1053 3 21.4

※平成24年度先進医療技術の実績報告より

実施件数は決して多くないので、受けることになる確率は低いですが、もし受けることになった場合、公的保険は利用できず、300万円程度の医療費を自費で負担しなくてはなりません。

先進医療特約をつけるとそのぶん、保険料は上がりますが、さほど高額ではありません。月額にしておよそ数百円の違いでしょう。

<ある保険会社で、30歳男性が入院日額1万円の終身がん保険に加入した場合>
先進医療特約なしの月額保険料……1,220円
先進医療特約ありの月額保険料……1,660円

これくらいなら、もしものときを考えるとつけておいたほうが無難です。

ただ、注意したいのは、別に医療保険に入っている場合です。医療保険にも先進医療特約はつけることができます。医療保険には入っておらず、がん保険だけに入るなら、がん保険に先進医療特約をつければよいのですが、両方に入っている場合、ふたつの保険それぞれに特約をつける必要はありません。内容がだぶってしまうからです。

それではどちらにつけるか、という点ですが、結論から言うと医療保険につけるべきです。

がん保険につけた先進医療特約は、がんの治療で先進医療を受けた場合のみ保障されます。先進医療はがん治療のためのものが多いことは事実ですが、万一、がん以外の病気にかかって先進医療を受けることになった場合、これでは保障されないことになってしまいます。

医療保険の先進医療特約は、もちろんがん治療のための先進医療も保障されますから、保障範囲の広い医療保険のほうに特約はつけておいたほうがいいのです。

●まとめ

がん保険を選ぶときに気をつけておきたい7つのポイントを解説しました。最後にもう一度、要点をまとめます。

1 がん保険の保険料は、60歳あたりで急激に上昇する
→定期タイプの保険は高齢になると保険料が高くなります。また、契約可能年齢の上限があるため、いつか更新できなくなります。定期タイプの場合は、高齢時には保険をやめて貯蓄で対応できるよう準備しておくか、がん保険に入り続けたい場合は終身タイプを選んだほうがいいです。

2 医師の診断確定のみでは、給付金の支払い対象にならないケースもある
→診断給付金の支払いに入院を条件にしている場合があります。診断されただけで出ると思っていてあてが外れないよう、事前に確認しておきましょう。

3 診断給付金が支払われるのは「最初の1回だけ」という場合がある
→診断給付金が受け取れるのは、1回切りか、複数回か。複数回受け取れる場合の条件は。など細かな点でがん保険には違いがあります。比較の際はよく理解して比べましょう。

4 がんの種類によって給付金が下りない、給付金額に差が付いている場合がある
→上皮内がんと、その他のがんで扱いを変えている保険がありますので事前に確認。同額保障の保険は保険料が高いこともあるので、バランスを考えて比較してください。

5 入院日数は減少傾向にあるため、通院給付金を重視すべき
→がん保険は入院日数に応じて給付金を受け取れるのが一般的ですが、がんの治療は入院より通院が主流になってきています。今後は通院でも保障されるタイプを選んだほうがよいでしょう。往診なども対象になる商品もあります。

6 90日の免責期間が存在するので、がん保険切り替えの時は注意
→がん保険は、加入後90日の免責期間があり、この間にがんになっても保障されません。今のがん保険を解約して別の保険に入りなおす場合、免責期間のために保障の空白期間ができないよう注意しましょう。

7 がん保険の先進医療特約は、がん治療の先進医療しか保障されない
→医療保険・がん保険にある先進医療特約。もし医療保険とがん保険両方に入っている場合、特約は医療保険のほうにつけておきましょう。がん保険の特約はがん治療の場合しか保障されないため、医療保険のほうが同じ特約でも保障範囲が広くなるからです。

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