統計から見る、男女・年齢・地域別「日本人がかかりやすいがん」

がんは、年齢や性別、地域によってかかりやすさに傾向があります。性別、年齢、地域の3つの視点から「日本人がかかりやすいがん」について見ていきましょう。

目次

男女別、かかりやすいがんの傾向

男性と女性では、かかりやすいがんが異なります。以下は、公益財団法人がん研究進行財団が発表した2016年の男女別がん罹患数(統計をもとにした予測値)です。

男性女性
1位前立腺がん乳がん
2位胃がん大腸がん
3位肺がん肺がん
4位大腸がん胃がん
5位肝臓がん子宮がん
6位腎・尿路がん膵臓がん
7位膵臓がん肝臓がん
8位食道がん悪性リンパ腫
9位悪性リンパ腫甲状腺がん
10位膀胱がん皮膚がん
※公益財団法人がん研究進行財団「がんの統計’16」を元に作成

※公益財団法人がん研究進行財団「がんの統計’16」を元に作成 このように、男性と女性ではかかりやすいがんが明確に違います。たとえば、男性1位の前立腺がんは男性特有のがんですし、女性1位の乳がんもほぼ女性特有のものです(乳がんはごくまれに男性でもかかるケースがあります)。他にも、男性は胃がんにかかりやすいのに対し、女性は胃がんよりも大腸がんにかかりやすい傾向にあることがわかります。

ただ、ここで注意しておきたいのが「かかりやすいがんと、死亡原因になりやすいがんは違う」という点です。

以下は、同じく2016年の男女別部位別予測がん死亡数ランキングです。

男性女性
1位肺がん大腸がん
2位胃がん肺がん
3位大腸がん胃がん
4位肝臓がん膵臓がん
5位膵臓がん乳がん
6位前立腺がん肝臓がん
7位胆嚢・胆管がん胆嚢・胆管がん
8位食道がん子宮がん
9位悪性リンパ腫悪性リンパ腫
10位腎・尿路がん卵巣がん
※公益財団法人がん研究進行財団「がんの統計’16」を元に作成

表を見ると、男性の罹患数1位だった前立腺がんは6位に、罹患数3位だった肺がんが1位になっています。また、女性でも罹患数1位の乳がんは5位に、罹患数2位の大腸がんが1位になっています。

これは、前立腺がんを例に挙げると、「男性は前立腺がんにかかりやすいが、それだけで死に至る可能性は高くない」ということです。かかりやすいがんと、それが原因で死に至るがんは異なるという点は、しっかり頭に入れておきましょう。

年齢で見るがんの傾向

年齢によっても、がんのかかりやすさに傾向があります(以下、本項目の数値は国立がん研究センター「最新がん統計」及び前掲「がんの統計’16」から引用)。

全体的な罹患率としては、40代後半~50代から徐々に上がっていき、60代以降に著しく高くなります。この傾向は男性において特に顕著で、30代後半~40代までの罹患率は女性の方が男性よりもやや高いものの、60代以降は男性の方が圧倒的に高くなります。

たとえば、「生涯においてがんに罹患する確率」で比較した場合、男性は63%なのに対し女性は47%。この差をどう見るかはありますが、男女である程度の差があることは間違いありません。

また、年齢によってがんにかかりやすくなる部位も変わっていきます。男性では、40歳以降で胃、大腸、肝臓といった消化器系がんが約50%~60%と大半を占めますが、70歳以降になると肺がん、前立腺がんの割合が大きくなっていきます。

女性では、40代だと乳がんが約50%、子宮がん・卵巣がん合わせて約20%ですが、高齢になるにつれそれらの割合は小さくなり、胃、大腸、肝臓といった消化器系がんの割合が大きくなります。

このように、がんは40代後半から徐々にかかりやすくなり、年齢によってもかかりやすい部位が変化していくといえます。

住んでいる地域でかかりやすいがんが違う?

驚いたことに、がんは住んでいる地域によっても罹患率や死亡率に差があることがわかってきました。公益財団法人がん研究進行財団の統計によると、2015年の「都道府県別75歳未満年齢調整死亡率」※は以下の通りです。

ワースト5 (がんによる死亡率が多い)ベスト5 (がんによる死亡率が少ない)
1位青森県(96.9)長野県(62.0)
2位秋田県(91.2)滋賀県(69.4)
3位鳥取県(88.1)大分県(70.5)
4位北海道(87.7)福井県(71.1)
5位大阪府(84.4)山形県(71.4)
※「都道府県別75歳未満年齢調整死亡率」とは、各都道府県の年齢構成が同じになるように調節した上で、75歳以上の死亡数を省き、がんによる死亡数を人口で割った数。人口10万対(=10万人に対して何人いるか)で表示する

青森県と長野県では大きな違いがあります。地域差の原因については、食習慣、喫煙状況、初出産年齢などが関わっているといわれています。たとえば、

「青森県はBMIで見ると肥満の割合が大きいので、大腸がんになりやすい」
「胃がんの原因であるピロリ菌は胃の塩分濃度が高いと生き延びやすいため、塩分濃度の高い食事が多い東北や日本海側の地域では胃がんが多い」

といった具合です。ただ、これらの原因はあくまで推測の範疇であり、引越しによる転入・転出などもあるため、「その地域に住んでいる人は特定のがんにかかりやすくなる」と断言できるものではありません。あくまで「統計上はこういった傾向があるのか」というぐらいの認識に留めておきましょう。

統計から考える、効果的ながんの予防

ここまでの内容を振り返ってみましょう。

  • 男性と女性ではかかりやすいがんが異なる
  • かかりやすいがんと、それが原因で死に至るがんは必ずしも一致しない
  • がんは40代後半からかかりやすくなり、女性よりも男性の方がかかりやすい
  • 年齢によってかかりやすいがんの部位は変わってくる
  • 地域によって罹患率に差があるものの、明確な原因はわかっていない

以上はあくまでも統計上の話ですから、自分や家族がいつ、どんながんにかかるか、かからないか、といったことは誰にも予測できません。しかし、傾向を知っておけば、たとえば「そろそろ40代なので検診に行こう」といったふうに、がん予防に関心を持ち、より効果的な予防に努めることができます。がん予防において重要なのは検診を受けることです。かかりやすいがんの傾向がわかれば、検診にも役立てられます。

女性のがん(乳がん、子宮頸がん)については20代後半~30歳前後になったら、毎年きちんと検診を受けはじめ、40歳頃から毎年人間ドックを受けるとよいでしょう。男性は、50歳をこえたら前立腺がんの検診(PSA検査)を追加するようにしましょう。

「職場で行われる健康診断を受けているから大丈夫」と考えている方がいるかもしれませんが、健康診断では最低限のことしかチェックしないことが多く、人間ドックとは異なるものだと覚えておきましょう。

人間ドックではさまざまな検査が用意されています。CT検査は精度が高い検査ですが、放射線の被ばくもあるため、何も所見がないのに毎年受けるのは過剰かもしれません。また、胃や腸といった、中が空洞の臓器に対してはCT検査の診断効果は低いため、内視鏡検査を受ける必要があります。PET検査も人気ですが、不得意ながんもありますので、万能ではありません。毎年の健康診断で優先したい項目としては、腹部超音波検査・採血検査・尿検査・胸部レントゲン検査・婦人科検診・乳がん検診などは必要性が高いでしょう。

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