がんに関する俗説。「がん家系」「若い人は進行が速い」って本当?

がんについて、こんな話を聞いたことはありませんか?

  • がん家系(がんになりやすい家系)がある。
  • 若い人はがんの進行が速い

よく聞くこれらの説は、本当なのでしょうか。

目次

「がん家系」は存在するか?

「親戚にがんで亡くなった人がいる。自分も同じがんになるのではないかと心配」。そんな不安はよく聞くところです。

病気のなかには、遺伝的な特性だけで発症が左右される、いわゆる遺伝病というものがあります。血友病などがそうです。ですが、多くのがんは遺伝病ではありません。しかし、遺伝がまったく関係ないかというと、そうではないことがわかってきています。

がんは細胞内の遺伝子がキズつくことによって起こりますが、遺伝子にキズがついても、それを修復する遺伝子というものが人間にはあります。これが正しく働いていれば遺伝子にダメージがあってもがんはできませんし、がんができても免疫系が働くことによって排除されます。しかし、まれにこの遺伝子がうまく働かない人がいて、そういう人は「他の人よりがんになりやすい」といえます。

この、がんになりやすい特性が遺伝することがあるため、遺伝的にがんになりやすい家系が存在することは事実です。

最近の研究では、すべてのがんのうちおよそ5%程度が、この遺伝的特性で発生したものではないかと考えられています(5%の人ががん家系だ、という意味ではありません。がんのうち5%が、家系によるものではないか、という話です)。

ただし、そのような家系だからといって必ずがんになるとは言えませんし、その家系でなければがんにならないわけでもありません。まして、「親戚にがんになった人がいる」から、自分がそのような家系だと断定することもできないのです。がんは珍しい病気ではありませんから、遺伝的な特性が関係しなくても、親戚にがんになった人が複数いたって不思議なことではありません。

ですので、過剰に心配しすぎる必要はないでしょう。 ただ、同じ種類のがんを発症している人が多い場合や、何度もがんにかかる人がいる場合などは、一度、専門的な検査を受けてみるのもありです。遺伝的にがんになりやすいとわかったからといって、そのリスクを取り除く方法はまだ確立されていませんが、リスクがあるとわかれば、こまめに検診を受ける、リスク要因となる生活習慣を改めるなどの対策はとれるからです。

若い人はがんの進行が速いってホント?

次に、「若い人はがんの進行が速い」という説について。結論からいうと、これは誤りとも正しいともいえます

一般的に、精巣腫瘍などを除く多くのがんでは、高齢者の方が発症しやすいことがわかっています。これは、年齢を重ねるほど遺伝子のキズも増え、がん細胞がそれを排除する仕組みをすり抜ける、といったことが増えることによります。

その点でいえば、若い方が発症するがんは、よりがんとしてたちが悪い場合があります。遺伝子の修復機構や免疫系等がしっかり働いているにも関わらず、増殖してくるわけですから、それだけ強いがんである場合があるのです。

一方で、高齢者においては、たとえば前立腺癌は超高齢者にもなれば1~3割程度の罹患率に及びますから、がんと診断されながらも寿命の方が早くくるという例もしばしばみられます。

そうしたことで、ある意味では、「若い人はがんの進行が速い」とも言えますし、「高齢者だからがんの進行が遅い」とはいえません。

「若い人はがんの進行が速い」という考えは、「歳をとってからかかったがんは進行が遅い」という意味合いを含んで使われがちですが、実際にはそうとは言い切れないのですから、このような考えは危険です。がんと診断されたら、医師の話をよく聞き、適切な治療をすみやかに受ける必要があります。

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