関心度は高いのに、ミックスローンがあまり利用されないのはなぜか?

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住宅ローンを借りるとき、誰もが迷うのが金利タイプの選択です。金利変動を気にすることなく、安定した返済プランで返していきたいなら固定金利型ですが、低金利で借りられる変動金利型も魅力です。どちらもメリットデメリットがあるため選ぶのが難しいですが、異なる金利タイプを組み合わせるミックスローンという方法があります。

ミックスローンを検討する前に

一般的には、景気が回復傾向にあり、金利の上昇が見込まれる局面では固定金利型、しばらくはデフレ経済が長引くと予想され、低金利が続くもしくはさらに金利が下がる局面では変動金利型が有利だと言われています。しかし、将来の金利がどっちに動くかなんて、蓋を開けてみなければ分かりません。どちらを選ぶのが正解だったかは、住宅ローンを完済するときになって初めて分かることで、だからこそ誰もが金利タイプの選択で頭を悩ませるわけです。

多くの人が、固定と変動ではどちらがお得かを基準に選んでしまいますが、失敗しない金利タイプの選び方は、金利予測が外れた場合に損失が少ないのはどれかという視点で考えることです。リスクヘッジに対する考え方は、ミックスローンでは特に重要なポイントとなってきます。ミックスローンを検討するには、まずは金利タイプのそれぞれの特徴を把握し、メリットだけでなくデメリットを理解しておく必要があります。

住宅ローン図解【ミックスローン】_03

ミックスローンはどのように組むのか?

ミックスローンの大きな特徴は、複数の住宅ローン契約を結ぶことです。たとえば、3,000万円の資金を借り入れる場合、借入金額1,500万円の全期間固定金利型の住宅ローンと、それとは別に1,500万円の変動金利型の住宅ローンを組むといったふうに、2本建てで契約を結びます。金利タイプの組み合わせは、長期固定金利型と変動金利型のミックスに限らず、長期固定金利型と短期固定金利型を組み合わせることも可能です。それぞれが独立した住宅ローンになるため、金利タイプだけに限らず、借入金額や返済期間などの条件も自由に選ぶことができます。

【一例】

  • (Aローン)全期間固定金利型 借入金額2,000万円 返済期間30年
  • (Bローン)変動金利型 借入金額1,000万円 返済期間10年

1つの銀行でミックスローンを組む際、銀行によっては返済期間を変えて設定することができない場合があります。どうしても返済期間を変えたい場合は、複数の銀行から借り入れて、ミックスローンを組むことになります。

金利上昇のリスクを分散できることが最大のメリット

ミックスローンを組む最大のメリットは、変動金利の低金利を享受しつつ、変動金利のみで借りるよりも金利動向の影響を受けにくいことです。下の表は、借入金額3,000万円、返済期間30年の住宅ローン(元利均等返済)を、全期間固定金利(金利1.2%)のみ、変動金利(当初金利0.8%)のみ、1,500万円ずつ全期間固定金利と変動金利をミックスして組んだ場合の返済額を比較したものです。

■借入金額3,000万円、返済期間30年の住宅ローン(元利均等返済)
金利タイプ 5年間 6年目以降、金利上昇時
金利 返済額(月) 総返済額 金利 返済額(月) 総返済額
全期間固定金利のみ 1.20% 9万9,272円 3,573万7,974円 2.20%
(1.02%適用)
9万9,272円 3,573万7,974円
変動金利のみ 0.80% 9万3,760円 3,375万3,636円 1.50% 10万1,928円 3,620万4,037円
ミックスローン 内訳 9万6,516円 3,474万5613円 10万761円 3,597万789円
固定 1.20% 4万9,636円 1,786万8,887円 2.20%
(1.20%適用)
4万9,636円 1,786万8,887円
変動 0.80% 4万6,880円 1,687万6,726円 1.50% 5万1,125円 1,810円1,902円

借入当初の返済額を見ると、低金利で借りられる変動金利のみが最も負担が少なく、このまま完済まで金利が上がらなければ、変動金利1本で借りるのが最も有利です。しかし、同じ金利水準で推移するとは限らず、上昇する可能性も考えておかなければなりません。仮に6年目以降、金利が1%上昇して、その金利水準が完済まで続くとします。変動金利のみだと、月々の返済額は借入当初よりも8,168円アップしますが、全期間固定金利と変動金利を1/2ずつミックスにした場合では、4,245円の増加額にとどまります。

変動金利で借りて金利が上がり始めたら、その時に固定金利に変更すればいいのでは? と思うかもしれませんが、金利動向に合わせて金利タイプを乗り換えるのは現実的に難しいと言えます。変動金利が上がる段階ではすでに、固定金利はかなり上昇していて、乗り換えしたくても手遅れになっているケースがほとんどです。将来、急激な金利上昇が起こったときに慌てなくて済むことも、ミックスローンの大きなメリットです。

リスクが半減するが、メリットも半減する

ミックスローンは金利上昇リスクが分散できる一方で、金利が下がった場合に得られるメリットも分散されることに注意が必要です。下の表は、先の表とは逆で、6年目以降に金利が0.3%下がり、完済までその金利水準が続いた場合の返済額を表したものです。

変動金利のみで借りている場合、金利が下がれば返済負担はさらに軽くなり、総返済額は全期間固定金利のみと比べると、299万4,945円も少なくなります。しかし、ミックスローンを選択していると、全期間固定金利に配分した返済額は変わらないので、その分、利息軽減効果は半減してしまい、全期間固定金利のみとの総返済額の差は、149万7,653円にとどまります。ミックスローンには、「リスクを減らせるが、メリットも減ってしまう」性質があることを十分理解しておく必要があります。

■借入金額3,000万円、返済期間30年の住宅ローン(元利均等返済)
金利タイプ 5年間 6年目以降、金利下降時
金利 返済額(月) 総返済額 金利 返済額(月) 総返済額
全期間固定金利のみ 1.20% 9万9,272円 3,573万7,974円 0.9%
(1.02%適用)
9万9,272円 3,573万7,974円
変動金利のみ 0.80% 9万3,760円 3,375万3,636円 0.50% 9万391円 3,274万3,029円
ミックスローン 内訳 9万6,516円 3,474万5613円 9万4,831円 3,424万321円
固定 1.20% 4万9,636円 1,786万8,887円 0.9%
(1.20%適用)
4万9,636円 1,786万8,887円
変動 0.80% 4万6,880円 1,687万6,726円 0.50% 4万5,195円 1,637円1,434円

固定と変動の借入割合はどのように決めるのか?

固定と変動を組み合わせてミックスローンを組む場合、必ずしも「固定5:変動5」の割合で借りる必要はありません。「固定6:変動4」「固定3:変動7」というように、自由に設定することができます。

固定の割合を多くすると、金利上昇リスクに対する不安は減りますが、借入当初の返済金額が割高になり、金利が下がった場合の利息軽減効果が薄れます。一方、変動の割合を多くすると、借入当初の返済金額が少なくてすみ、金利が下がればさらに返済額が減少しますが、将来金利が上昇すると毎月の返済額が増える可能性があります。

住宅ローン図解【ミックスローン】_11

どのような割合でミックスローンを組むのがいいかは、将来の金利動向をどう捉えているか、金利上昇によって家計が被る損失をどの程度まで受け入れられるかによって大きく変わってきます。また、安定志向が強く、金利上昇に対する精神的不安を少しでも減らしたいと考える人は、固定の割合を高めに、金利の動向がそれほど気にならない、金利が上昇しても繰上返済や借り換えなどで、素早く対応する自信があるという人は変動の割合を高めにというように、自分の性格も考えて、慎重に割合を検討する必要があります。

諸経費が割高になる点に要注意!

低金利とリスク分散の両方のメリットがあるミックスローンですが、興味を持つ人は多いものの、結局は利用しないと判断する人が多いそうです。その理由として、諸費用が高いこと、管理が煩雑になること、が挙げられます。

ミックスローンは、複数の住宅ローンを組み合わせて借りるため、それぞれの住宅ローン契約ごとに、印紙税、抵当権設置にかかる費用、融資手数料、保証会社に支払う手数料などが必要です。銀行によっては、1本のローンとして扱われ、かかる費用も1本分だけで済む場合もありますが、返済期間が同じでなければ借りられないなど、条件が制約されることが多いようです。また、返済予定表などの書類は、住宅ローン契約ごとに送られるため、返済額や利息の管理が面倒、といったデメリットもあります

ミックスローンはどんな人におすすめ?

夫婦共稼ぎで、夫の収入だけでなく妻の収入を合算して、それぞれの名義で住宅ローンを借りる「夫婦ペアローン」では、自分たちの将来設計に合わせて、金利タイプや返済期間を変えてローンを組むことができます。たとえば、夫名義の住宅ローン契約は「返済期間30年の長期固定金利」、妻名義の住宅ローンは「返済期間10年の変動金利」に設定し、10年後の教育費がピークを迎える時期までに、妻の名義の住宅ローンを完済しておくことで、10年目以降の返済負担を減らすことができます。

率的に繰上返済をしていきたいと考える人にも、ミックスローンはおすすめです。低金利が続いている間は、金利が割高な固定金利を優先的に繰上返済して借入残高を減らしていき、金利が上がった場合は、変動金利を繰上返済することで、金利上昇リスクを回避できます。繰上返済をする時点で有利な選択ができるのは、利用者にとって大きなメリットと言えます。

逆にミックスローンに向かない人は?

ミックスローンは、金利上昇リスクを軽減するための有効な手段ですが、リスクが全くなくなるわけではありません。変動金利での借り入れ分がある以上、常に金利の動向を心配しなければならず、結局は変動金利のみで借りているのと大して変わらない状況と言えます。

なので、金利上昇リスクが怖くて、金利が少しでも上向くと不安になるような人は、ミックスローンで限定的なリスクヘッジをするよりも、リスクゼロの全期間固定金利型を選ぶことをおすすめします。金利は割高になりますが、精神的な重圧がなく安心して毎日を送れることが、長い目で見ると正しい選択かもしれません。

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