見落としがち?!必ず知っておくべき医療保険が下りないケース

病気で入院した、または手術をしたから保険金を請求したのに、保険会社から「お支払いできません」と言われてしまった……。不払いだ!出し渋りだ!と憤るのは分かりますが、もしかしたらその保険金、下りなくて当然かもしれません。

支払事由に該当するかどうかは、判断がややこしいものもありますが、パンフレットや約款にきちんと明記してあるにもかかわらず、加入者が理解していないだけのケースも大変多いのです。

請求する段階になって嫌な思いをしないよう、医療保険の「下りる・下りない」ケースを知っておきましょう。

目次

【ケース1】同じまたは関連性のある病気で再入院した

入院費をカバーするための入院給付金は、1度の入院につき支払限度が設けてあります。「60日」や「120日」、「180日」のほか、生活習慣病など特定の病気のみ支払限度日数が延長されるタイプなど、商品やプランによりさまざまです。

注意したいのは、一度退院したあとで再び入院するケース。このとき、再入院の原因が直前の入院と同じ病気や、病名は違っても医学上、関連性のある病気の場合は、前回の入院日数を引き継いで「1入院」とカウントする決まりがあります。つまり、「1入院60日」の医療保険に入った人が、ある病気で40日間入院し、後日、同じまたは関連性のある病気で30日間入院した場合、入院日数は計70日とカウントされ、10日分の入院給付金は受け取れないことになります。

もちろん、再入院の原因が前の入院と関連性がない場合は別々の入院として認めてもらえます。また、たとえ関連性があっても、退院日の翌日から再入院までの間に180日以上経過していればこのルールは適用されません。

■関連性のある病気で再入院し「1入院」とカウントされる場合

【ケース2】日帰り入院……のはずが通院だった

入院日と退院日が同一の入院を保障する『日帰り入院保障』。ホームページやパンフレットで、「日帰り入院から保障します!」などと宣伝されているのをよく見かけますが、給付対象になるのは「入院基本料」という診療報酬が算定されるケースに限ります。

つまり、入院用のベッドを使い、検査や手術を受けたうえで当日中に退院する場合であり、外来用のベッドで点滴や人工透析を受けても保険金を受け取ることはできません。また、たとえ手術を受けても、医師が入院の必要なしと判断した場合は「通院」になることを覚えておいてください。

外科そけいヘルニア手術
腹腔鏡下胆嚢摘出術
痔核手術
甲状腺切除術
巨大脂肪腫摘出術
乳腺腫瘍摘出術
循環器科経皮的経管冠動脈形成術
心臓血管外科シャント造設術
下肢静脈瘤手術(ストリッピング)
脳外科手根管症候群手術
泌尿器科後部尿道ステント
コンジローマ手術
呼吸器科ステント挿入術
頚部腫瘤切除術
眼科白内障手術
翼状片切除術
内科肝動脈塞栓術
肝動注化学療法
形成外科眼瞼下垂
皮膚皮下腫瘍摘出術
陥入爪手術
瘢痕
鼻骨骨折・頬骨弓骨折

【ケース3】受けた手術がまさかの保障対象外

手術給付金は、入院給付金に次ぐ医療保険の基本保障ですが、保険会社によって給付対象となる手術が異なるので注意が必要です。医療保険における一般的な手術の定義は、「治療を直接の目的として、器具を用い、生体に切断、摘除等の操作を加えること」なので、次のケースは該当しないと考えてください。

  • 生検(せいけん)など、検査のみを目的としたもの
  • 吸引、穿刺(せんし)、神経ブロック(注射による麻酔)など処置の範疇にあるもの
  • 美容整形など治療を目的としないもの

逆に給付対象になるのは、大きく分けていずれかの2種類です。

  • 約款で定められた88項目(約600種)の手術
  • 公的医療保険適用手術(約1,000種)

2010年頃までは、88項目の手術を給付対象にしている商品がほとんどでした。保険会社が独自に整理・区分けした手術のみを保障するというもので、たとえば虫垂炎切除術は対象内ですが、扁桃腺の摘出術は対象外。腕や足の切断術は支払われますが、指先の手術は支払われないなど細かく決められています。

それに比べると、最近主流の公的医療保険連動タイプは分かりやすく、600種から1,000種と拡大したことでお得感もありますが、1泊以上の入院を伴わない手術は給付対象外など、相変わらず各社商品により違いはあります。

他にも支払事由を細かく設定していることがあるため、契約のしおりの確認はもちろん、担当者に細かく聞くなどしてきちんと把握しておきましょう。

【ケース4】入院を伴わない通院

入院治療から通院・在宅治療にシフトしてきている昨今、通院にかかる負担を軽減する通院給付金特約は魅力ある保障ですが、入院を伴わない通院は保障対象外であるケースがほとんどです。さらに、「入院開始日の前日より60日以内」「退院日の翌日から120日以内」などと期限を限定していることも忘れてはいけません。

通院保障があるのは心強いですが、今のところは特約で付帯するのが主流なので、「特約料を追加してまで備えるべきか?」「通院したときにもらえる金額は大きいか?」など、しっかり考えたうえで追加しましょう。

【ケース5】「所定の状態」を満たさない三大疾病

三大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)に備えて付帯する三大疾病保障は、支払事由が誤解されている代表のような特約です。契約者が三大疾病にかかり、保険会社が定める所定の状態を満たしたときに支払われるものですが、この「所定の状態」が非常に厳しく、営業担当者も詳しく説明しない傾向があるため、あまり知られていません。

所定の状態は、各社商品によって異なりますが、よく目にするのは以下のような条件です。

■がん
責任開始日以降に初めて悪性新生物に罹患し、医師によって診断確定されたとき(責任開始日から90日以内に罹患したがんは対象外)。

■急性心筋梗塞
責任開始日以降に急性心筋梗塞を発病し、初めて医師の診察を受けた日からその日を含めて60日以上の労働の制限を必要とする状態が継続したと診断されたとき。

■脳卒中
責任開始日以降にくも膜下出血、脳内出血、脳梗塞を発病し、初めて医師の診療を受けた日からその日を含めて60日以上の言語障害、運動失調、麻痺などの他覚的な神経学的後遺症が継続したと診断されたとき。

三大疾病にかかっただけでは出ないのは当然として、それぞれ個別の支払条件が加えられていますね。
まず、がんは、悪性新生物で診断確定されないと下りないものがあります。最近は上皮内新生物でも保障してくれるものも登場していますが、悪性新生物のみのタイプもまだまだ見かけます。

急性心筋梗塞は、60日間の労働制限ですから、約2ヵ月間ほとんど動けない状態が続いたときのみ保障されます。ただ最近は、「急性心筋梗塞の治療のための手術を受けたとき」に保障されるタイプも販売されています。

脳卒中も、神経学的後遺症が60日もの間継続したときと決められています。さらに支払事由を満たすのは、100種類以上ある脳血管障害のうち、くも膜下出血、脳内出血、脳梗塞の3つのみ。非常にハードルが高いですが、急性心筋梗塞と同じく、治療のための手術を受けたときに保障してくれる商品も登場しています。

知らなきゃハマる、三大(特定)疾病保障特約の落とし穴

さいごに

支払事由のあれこれを約款から読み込むのは骨が折れますが、知らないと損をするのはこちらです。自分で調べる、分からないところは担当者に聞くなどして、給付金が下りるケースはもちろん、下りないケースについても確認しておきましょう。一見よさそうに見えても、実は頼りにならない保障は意外にたくさんあります。

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