2015年6月1日から改正道路交通法の施行に伴い、自転車に対する取り締まりが強化されました。これにより、「危険行為」とみなされる運転を3年以内に2回以上繰り返した14歳以上の者には、自転車運転者講習の受講が義務付けられます。従わない場合は5万円以下の罰金。
施行されるやいなや、一部からは”厳しすぎる”との声も上がった今回のルール改正。具体的にはどのような制度なのか、調べてみました。
危険行為とは?
そもそも危険行為とはどんな運転を指すのか? 改正道路交通法で認定される危険行為は下記の14項目です。
- 信号無視
- 通行禁止違反
- 歩行者用道路徐行違反
- 通行区分違反
- 路側帯通行時の歩行者通行妨害
- 遮断踏切立入り
- 交差点安全進行業務義務違反等
- 交差点優先車妨害等
- 環状交差点の安全進行義務違反
- 指定場所一時不停止等
- 歩道通行時の通行方法違反
- ブレーキ不良自転車運転
- 酒酔い運転
- 安全運転義務違反
ざっと見た限りでは当然のルールばかりに思えますし、新設されたものでもありません。しかし、摘発者の多くが悲鳴を上げていることから、判定が厳しくなったこと、案外やってしまいがちなものが含まれていることは確か。そこで、特に注意したい項目に特化して解説していきましょう。
3.歩行者用道路徐行違反
「歩道を走るときは徐行せよ」「歩行者の通行を脅かすな」と、平たく言えばそういうルールです。自転車は車扱いなので車道を走行するのが基本ですが、
- 車道が(工事などで)危険
- 自転車通行可の標識がある
- 運転者が13歳未満or70歳以上、または身体障碍者
の3つの場合のみ、歩道を走ってもいいことになっています。ただしその際は時速8キロ以下で徐行するのが条件。歩行者が遅いからといってすり抜けたりするのはアウトです。また、歩行者を妨害しないという意味からベルを鳴らすのも禁止されています。
4.通行区分違反
自転車通行禁止の歩道を走ったり、車道の右側を通行していはいけないというルールです。ポイントは車道の右側通行、つまり車から見て逆走してはいけないという点。これは2013(平成25)年12月1日の「軽車両の路側帯通行に関する規定の整備」で施行されました。
目的地によってはわざわざ反対側の道路に回らなければならず、面倒なことからついついやってしまいがちですが、違反の対象となるので注意しましょう。
5.路側帯通行時の歩行者通行妨害
路側帯は車道であり、自転車が走行できる部分ですが、ここに歩行者がいればその通行を妨げてはいけないという決まりです。
10.指定場所一時不停止等
「止まれ」の標識や赤の点滅信号では、きちんと自転車を止めて足を地面につけなさいということです。厳しい!と思うでしょうが、オートバイに乗っているのと同じだと思えば理解しやすいでしょう。したがって、停止線オーバーも違反の対象になります。
11.歩道通行時の通行方法違反
3と同じく歩道通行時のルール。自転車がやむを得ず歩道を走る場合は、車道寄りまたは通行指定部分を徐行しなければいけません。「歩道では決められた場所しか走行できない」ということです。ただし歩行者がいない場合は大丈夫です。
14.安全運転義務違反
ざっくりとした言葉でまとめられており、今回の法改正のなかで最も警戒すべき項目。「他人に害を及ぼすような運転を禁止する」という意味で、代表的なのは傘やスマートフォンの使用による片手運転、イヤホンで音楽等を聞く「ながら運転」などです。路面が濡れた状態での片手運転が危険なのは当然ですし、スマホの画面やイヤホンの音楽に気を取られた状態での運転がいかに危ないかも理解できると思います。
「警戒すべき」と言ったのは、この項目が、そのときの交通状況によって審判に差が出ることがあるため。実際、イヤホン装着のながら運転でも「片耳イヤホンならセーフ」と言われた人もいるようで、これは運転者の周囲に人がいなかったなど、現場の警察官が問題なしと判断したためでしょう。しかし別の警察官なら「片耳を塞ぐ時点で安全運転に反する」と判断したかもしれず、基準は曖昧です。
当サイトとしては、取締を受けたくなければグレーな行為は控えることをお勧めします。
自転車運転者講習制度が設置された狙い
前述の危険行為を犯し、3年以内に違反または交通事故を2回以上繰り返した14歳以上の者に対しては、都道府県公安委員会から安全運転講習(手数料5,700円)を受けるよう命令が下ります。テキストや視聴覚教材、ディスカッションなどを通して交通ルールをたっぷり3時間かけて学び直すという内容で、冒頭で述べたとおり、受講命令に背くと5万円以下の罰金が課せられます。
自転車は自動車やオートバイと違い、違反行為を反則金の納付をもって処理する(=起訴しない)「青キップ」はありません。あるのは刑事罰を問われる「赤キップ」の交付か、「注意」という非常に落差の大きい制度下に置かれていたため、今回はその「注意」の延長線上に自転車運転者講習制度を設置した形です。
「厳しすぎる」との声も目立つ新ルールですが、増加傾向にある自転車事故の抑制にどの程度貢献できるのか? 引き続き注目したいと思います。