ロストバゲージの対応手順と遭わないための予防策を考える

搭乗前に預けたスーツケースなどが返ってこない「ロストバゲージ」。帰国後の便で起こるならまだしも、旅の始まりである海外で見舞われるとたまったものではありません。

運悪くロストバゲージに遭ってしまったらどうすればいいのか? 基本的な対応手順を解説します。

目次

ロストバゲージとディレイドバゲージの違い

本題へ入る前に用語の説明をしておきましょう。ロストバゲージとは、航空会社に預けた荷物が、何らかのアクシデントや人為ミスによって紛失、または延着することを指します。対して「ディレイドバゲージ」は、純粋に荷物の延着だけを意味します。ロストバゲージの方が広義なことから、予定どおり荷物が到着しないことを総称してロストバゲージと呼ぶことが多いです。

知っておきたいのは、航空会社はロストバゲージについては補償してくれるものの、ディレイドバゲージについては一切の責任を負わないということ。「遅れたのは悪かったけど頑張って見つけたから許してね」というスタンスなのです。

紛失か延着かによって対応が異なるのは海外旅行保険の補償項目でも同じで、ロストバゲージは携行品損害ディレイドバゲージは航空機寄託手荷物遅延費用が守備範囲になります。

荷物が届かないときはこう対応する

1.空港のスタッフに調べてもらう

自分の荷物が出てこないことを、利用した航空会社のスタッフに伝えます。近くにスタッフが見当たらない場合は、バゲージクレーム(荷物引取所)エリアにある対応カウンターを利用しましょう。このとき、荷物を預けた際に受け取ったタグ(行き先などを示したバーコード付きのシール)が必要になるので、航空券と共に提示します。

2.手荷物事故報告書を作成する

スタッフが探しても荷物が出てこない場合、ロストバゲージの疑いがあるとして「手荷物事故報告書」という書類を作成します。自分の荷物のメーカーや色形、内容物などの特徴と共に、見つかったらすぐに送ってもらえるよう、ホテルやゲストハウスなど滞在先の住所・電話番号などを記してください。

申請書の控えには、航空会社の連絡先や問い合わせ番号が書いてあるはずなので、絶対に失くさないようにしましょう。

3.航空会社の補償を受ける

搭乗前に預けた荷物には、洗面用具や着替え、女性なら化粧品など、なくては困る生活必需品を入れている場合がほとんどだと思います。ディレイドバゲージの場合、航空会社は一切の責任を負わないと前述しましたが、一応のお詫びとして、最低限の生活必需品を現品支給してくれることがあります。航空会社によっては、現品ではなく見舞金を補償してくれることも。

仮にこうした対応がなくても、ロストバゲージが(後日)確定すれば、現地で調達した生活必需品の購入代金は航空会社に請求することができます。請求範囲や手続きの仕方は各社によって異なるため、買物をする前にしつこいくらい確認しておきましょう。後日請求するための大前提として、購入した商品のレシートは捨てないでください。

4.保険会社に連絡する

念のため、海外旅行保険の事故受付センターなどに連絡し、補償内容を確かめておきましょう。通常、目的地に届くはずの荷物が6時間以上遅れた場合、そこから3日~4日以内に購入した身の回り品は航空機寄託手荷物遅延費用の補償対象内になります。

空港で6時間も待機するのは非常に辛いでしょうから、ロストバゲージの申請を済ませたら、ホテルにチェックインするなり、旅程どおりの目的に向かうなりするほうが建設的だと思います。どうしても必要な身の回り品があるなら先に購入するのもいいですが、6時間以内に荷物が出てきた場合は保険が効きません。

なお、航空会社から既にいくらかの補償を受けているケースでは、その金額を差し引いた分が保険適用になります。海外旅行保険の航空機寄託手荷物遅延費用の補償額が5万円で、航空会社から1万5,000円の補償を受けた場合は、差額の3万5,000円分までカバーしてもらえるということです。

5.発見の連絡と荷物の到着を待つ

後は運を天に任せて連絡を待つだけです。たいていは1~2日で見つかりますが、運が悪い場合は帰国後に連絡がくることも。考えても仕方がないので、気持ちを切り替えて旅行を楽しみたいものです(といっても難しいですが……)。

荷物が出てきたら、海外に滞在中なら空港または宿泊場所に、帰国中なら宅急便などで自宅に送ってくれます。[4]で述べたように航空機寄託手荷物遅延費用の対象となるので、領収書など必要書類を揃えて請求しましょう。

ロストバゲージが確定したらどうする?

延着ではなく紛失が確定した場合、航空会社に責任があるとして補償を受けることができます。ただ、補償内容は航空会社によってさまざまで、自社に非があるにもかかわらず出し渋りとも取れる上限額を設けており、納得のいく金額になることは少ないようです。

一方、海外旅行保険に加入している場合は、携行品損害の対象になるので、限度額(20万円や30万円)まで請求ができます。もちろん、現金や小切手などは補償対象外になるほか、1つあたり10万円までと限度額が定められているなど、失くしたものが完璧な状態で返ってくる訳ではありません。

ロストバゲージへの対策

ロストバゲージに遭うと非常に厄介なので、できるだけ巻き込まれない予防策と、巻き込まれたとしてもダメージが少なく済む対策をしておくのがベターです。

全世界の空港で報告されているロストバゲージの発生数は1年間で3,000万個以上とされており、その原因のほとんどは、乗り継ぎ時の積み替えミスや、スタッフによる仕分けミス、行き先や便を示すタグの発行ミスなどのヒューマンエラーです。また、目的地の空港に到着しているにもかかわらず、旅行かばんのデザインが似ていたために他の搭乗客が勘違いして持っていくなんてケースもあります。

以上から、

  • 仕分けミスの元になるような古いタグは外しておく
  • 発行されたタグはその場で確認
  • 目立つステッカーを貼るなど判別しやすい荷物にする
  • 荷物のピックアップは素早く行う

などを心がけておくと、ロストバゲージに遭遇する確率を(気持ち程度かもしれませんが)減らせるでしょう。同時に、万一遭ってしまったときを想定するなら、次のものは手荷物として持ち込むのが理想です。

  • コンタクトレンズやメガネなど携行品損害の対象外になるもの
  • 薬など現地では調達しにくいもの
  • デジカメやパソコンなど高価な貴重品
  • 最低限の着替え

預けた荷物が完全に行方不明になることは稀ですが、いざというときに焦らないよう、一通りの知識や手順は頭に入れておくに越したことはありません。

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