告知義務違反は請求時にバレる?保険会社が行う調査の概要

保険会社は、保険に加入したい人に対して、過去の病歴や現在の健康状態を告知するよう求め、その告知書(質問書)をもとに加入可否の審査を行います。

用意周到な保険会社のことですから、この審査で根ほり葉ほり調べられそうなイメージがありますが、実はこの時点ではさほど詳しく調べません。調査費用がかかるというのもありますが、基本的には加入希望者の自己申告を信じ、1つでも多くの契約を取りたいと考えているようです。

では、いつ本気を出すのかというと、それは保険金が請求されたときです。特に、保険の契約が有効になる責任開始日から2年以内の請求に対しては、少しでも疑問がわけば全力で調べてくると思ってください。

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“クロ”を暴き出す調査内容とは?

「全力で」と言いましたが、調査方法としてはごくごく当然の内容です。

  • 診断した医療機関・医師へ問い合わせ
  • 加入者へのヒアリング
  • 健康保険の利用履歴の照合
  • 健康診断の実施記録の確認 など

このうち、診断書に記載されている医療機関・医師への問い合わせで大抵発覚すると言われています。理由は、医師には本当のことを話しているケースが多いから。治療にあたってのヒアリングで答えた過去の病歴や健康状態はすべてカルテに記録されているため、ここに怪しい点があれば徹底機に洗い出します。

医療機関が個人情報保護法を盾にカルテの開示を拒否することもあるようですが、弁護士を通じて照会を求めてくるので通じません(=弁護士照会[23条照会])。

過去に受療した病院がバラバラでカルテを探すのが困難でも、怪しいと思った請求に対しては国民健康保険や勤務先で加入している健康保険組合の利用履歴まで調査します。この流れで健康診断の結果も引き出すことが可能です。もちろん、加入者本人の同意を得ての照合になりますが、拒否した場合には保険金の支払いに応じないという旨が約款に記載されているため、拒否されたところで保険会社は痛くも痒くもありません。

調査結果がアウトだった場合

調査期間は通常なら1~2ヵ月、こじれると半年以上かかることもあります。調査の結果、加入者が告知義務違反をしたと判断した場合、次のいずれかの“処分”下されます。

(1)保険金は支払われるが、契約は解除

→告知しなかった傷病と、請求した傷病の病気に因果関係がないときは、保険金が支払われるケースが多いです。ただし、告知義務違反の罪で契約は解除されます。

(2)保険金は支払われ、契約も続行

→(1)に加え、告知しなかった傷病が重大ではい(つまり通常に告知していても加入基準を満たしていた)場合、事なきを得る可能性があります。また、治療期間が短かったうえ、完治してから随分経っていた場合や、そもそも病気だと認識していなかったなど、自覚症状のない告知漏れの場合もセーフになることがあります。対応は保険会社によります。

(3)保険金は支払われないが、契約は続行

→たとえば帝王切開など、部位不担保(この場合は異常分娩・異常妊娠)を受け入れていれば加入に問題がなかった場合、保険金は支払われない代わりに契約解除は大目に見てくれることがあります。このケースも保険会社により対応が分かれるでしょう。

(4)保険は支払われず、契約も解除

→告知しなかった傷病が重く、加入後に請求した傷病との因果関係も認められた場合、完全アウトとして何も支払われず契約も解除されます。悪質な場合は詐欺行為を問われます。

全体を通して

病歴を隠して保険契約を結ぶのは決して難しいことではありませんが、契約どおり保険金を受け取ろうとするのはかなり難しいということです。弁護士照会や健康保険組合への問い合わせなどでほとんどの不正は暴かれるといっていいでしょう。

正確に告知すると保険に加入できないと悩む人には、引受基準緩和型保険もあります。保険料は割増になりますが、審査基準が緩やかなので加入できる確率はぐんと上がるでしょう。保険を”安心のお守り”と考える人には適していると思います。

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