個人年金保険は老後資金づくりに使えるか?

老後資金が公的年金だけでは不安。そんな人のために、保険会社が用意しているのが個人年金保険です。

保険とは、リスクに備えるための商品。個人年金保険は「長生きするリスク」に備えるものだと言えます。長生きすることがリスクというのはおかしな話に聞こえるかもしれませんが、収入がなくなった老後も、生活費などがかかってしまう、という意味でリスクなのです。

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老後資金づくりの前に知っておきたい、金融商品の3つの性質

個人年金保険以外にも、老後資金を準備するための保険商品はありますし、公的保険を補完する国の制度もあります。また、単純に、貯蓄をしておくという方法もあります。

老後資金を準備する方法はさまざまにあると言えますが、それぞれ特性が異なるので、よく理解したうえで選ぶ必要があります。

まず、老後資金をつくるうえで外せないポイントをおさえておきましょう。

資金の準備には、次の3つの要素があります。

  • 流動性
  • 安全性
  • 収益性

これは金融商品の性質としてあるものです。ですがどんな金融商品でも、このすべての面で優れたものはありません。ですので、老後資金づくりにあたっては何が大事なのかを知っておくことで、老後資金づくりの方法に適した商品が選べます。

(1)流動性

流動性とは簡単に言うと「現金に換金しやすいかどうか」ということです。

公的年金は、一度支払った保険料を返してもらうことはできません。何があっても、将来、年金として受け取る以外ではお金は手元に戻ってこないのです。一方、個人年金保険は、いつでも解約することができます。このとき、個人年金保険のほうが流動性は高い、ということになります。

途中解約してしまうと、元本は戻ってきたとしても、解約しなかった場合に得られるはずだった利率は放棄することになります(解約の時期によっては元本割れすることもありえます)。ですから解約はしないに越したことはないのですが、事情で急にまとまったお金が必要になることもあるでしょう。

そんなとき、流動性が高い方法で資金づくりをしておくことは、そうでない場合よりメリットがありますね。たとえば確定拠出年金など絶対に払い戻しのできない方法で資金を準備していたら、解約ができずにお金に困ることになります。

(2)安全性

安全性とは、言葉どおり、その方法で運用した資金が減ってしまうリスクの少なさのことです。

個人年金保険は、原則として元本保証であり、支払ったお金がその総額より少なくなってしまうことはありません。

どんな資産運用も、お金を増やすために行うわけですが、安全性は次に説明する収益性と裏表の関係にあり、安全性を追求すると収益性は劣ることになります。銀行の普通預金も、元本保証ですが、利息はほとんどつかないくらい低いですよね。普通預金はいつでも引き出すことができて流動性も高いので、収益性はとても低い商品なのです。

(3)収益性

どれほどのリターンが期待できるか、それが収益性です。

述べたように、安全性を犠牲にして、リスクをとればとるほど収益性は高まります。株やFX、デリバディブと呼ばれる複雑な金融商品などは、資金を何倍にも増やせるチャンスがあるかわりに、瞬時に元金がゼロになってしまう危険性さえあります。

年金商品の中でも、変額年金保険と呼ばれるものは、個人年金保険よりはリスクをとることで少しでも収益を確保しようとした商品になります。

老後資金のために個人年金保険を使うのはアリかナシか?

以上の3つの要素の中で、老後資金づくりで大切なものはなんでしょうか。

それは安全性です。

老後資金は、働いて収入を得ることの難しくなった老後に必要なお金です。たとえば株やFXで老後資金を貯めようとして、運用に失敗し、いざ老後にはお金が足りなくなってしまったら、その時点から失敗を取り戻すことは非常に難しいでしょう。

そのため、老後資金は元金を減らさないことが大事だと言えます。

しかし、安全性を重視すれば収益性は下がってしまいます。ある程度は仕方ないのですが、少しは増えないとわざわざ資金を投入する意味がありません。

老後資金づくりは、安全性を最重視しながらも、どれだけの収益性を確保できるか、という選び方になるのです。

そうした老後資金づくりの観点から個人年金保険を見直してみますと、安全性という意味で合格ラインだというのがわかります。基本、元本保証だからです。

加えて、銀行の預金よりは利率の良い返戻率があり、収益性の面で普通預金・定期預金を上回っています。

流動性の面では引き出し自由な普通預金には劣るものの、途中解約も可能ですから悪くはありません。つまり、老後資金づくりに選ぶのに、バランスのよい商品だと言えるのです。

さらに、支払った保険料に応じて所得控除が受けられるなどのメリットもあります。

余裕資金をすべて個人年金保険に入れてしまうのはよくないですが、普通預金の貯蓄や、少しはリスクをとった運用(株など)などもやりつつ、個人年金保険を確保しておくというのは、老後資金づくりとしては適した方法だと言えるでしょう。

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