「老後資金3,000万円」の根拠は?支出と収入から検証

ネットや雑誌の記事を見ていますと、よく「老後資金は最低3,000万円必要」というのを、見かけます。
果たして本当に3,000万円も必要でしょうか? 反対に、3,000万円あれば安心と言えるのでしょうか? 検証してみました。

目次

よく聞く「老後資金3,000万円」の根拠は?

一般に言われる3000万円というのは、会社勤めなどを辞めて、公的年金以外の収入がなくなったとき、必要な支出に対して、年金では足りないぶん(取り崩していかなくてはいけない貯蓄額)のことを指しています。

当然ですが、そういったものは人によって違うわけです。

まずもって、夫婦2人の生活費を前提に考えていることが多いですから、独身の人は事情が異なってきますね。その意味でも、一口に3,000万円というのはざっくりした計算なのですが……。とはいえ、個別の事情を言い出したらキリがありませんので、

  • 夫婦2人の暮らし
  • 二人は65歳で無職
  • 夫は現役時代に会社勤めをしていて厚生年金がもらえる
  • ふたりはそれぞれ平均的な寿命まで生きる

と考えて調べてみましょう。

総務省の家計調査によりますと、高齢無職世帯(世帯主が60歳以上の無職世帯)で、夫婦2人の世帯の消費支出は月平均23万9,878円でした。2人でおよそ24万円です。

ちなみに単身世帯ですと14万3,060円で、これは公的年金で受け取れるお金がこれくらいですから、単身者で平均的な暮らしをするなら一応大丈夫なのかな?といったところです。

問題はやはり夫婦世帯の場合。厚生労働省の統計で、65歳男女の平均余命は男性18.89歳、女性23.82歳でした。そこで、20年くらい夫婦の暮らしがあるものと考え、計算してみます。

24万円×12か月×20年=5,760万円

支出の総計は5,000万円以上です。

一方、収入は公的年金があります。家計調査では、社会保障給付という言葉でまとめられていますが、これが月平均20万4,976円あるとのことですから、月20万として計算してみましょう。

20万円×12か月×20年=4,800万円

この計算では5,760万円-4,800万円=960万円となるので、1,000万円程度の準備で良いということになりました。

ただし、あくまでも概算です。国民年金は満額で年額78万円ですが、支払っていない期間があったりすると減額の可能性がありますし、今後、支給額が減っていく可能性もあります。厚生年金も平均月収が30万円だった人が40年間働いていた場合で年額約79万円程度ですから、それで考えると月20万円の年金は多いようにも思えますね。

確実に下がる収入に対して、ライフスタイルの予測が重要

結局は人によって必要な老後資金はかなり幅が出てきてしまうので、3,000万円というのは、ひとつの目安に過ぎないということが言えると思います。

大事なのは、自分の場合はいくらくらいになるのか、きちんと予測をしておくということです。

高齢無職世帯の平均支出が、夫婦世帯で月平均約24万円、単身で14万円という統計がありましたが、平均はあくまで平均です。一方収入のほうですが、国民年金は満額で年78万円と決まっていますし、この額は今後、減る可能性があります。厚生年金は、現役時代の平均報酬額に応じて給付されますが、報酬からの比例には上限があるため、一定以上からは収入がどれだけ高くても年金額には反映されなくなります。

具体的には月額62万円以上は62万円として計算しますから、月収が62万円以上であれば同じで、受け取る年金は国民年金と合わせて月額20万円程度になると思います。

つまり、公的年金は月20万円程度と考えて、生活できるかどうか、できないなら足りないぶんを準備しておけるか、という点が重要なのです。

月60万円の収入があった人が、月20万円になるのですから、そのままの生活スタイルや感覚では難しいでしょう。「老後資金3,000万円」と言われるのは、このギャップを埋めるためのひとつの指針だと考えることもできます。

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