「自動運転車」は超高齢社会に安心と安全をもたらすか?

2015年の東京モーターショーは、日本の超高齢社会に内在する認知症患者の増加という社会問題と自動運転が結びつく形となりました。

モーターショー 自動運転も人間主役で

モーターショーの報道向け公開が始まった初日、宮崎市中心部で軽乗用車が歩道を暴走し、歩行者ら七人が死傷する痛ましい事故が起きていた。運転者は七十三歳の男性。因果関係ははっきりしないが、認知症の症状もあったという。

認知症の方に免許を返納してもらう、ご家族が車を運転しないように目を配るということはもちろん重要です。しかし、介護をするご家族も高齢であり、若い世代は仕事や学校に外出していると、常に目を配っていることは難しい状況でしょう。特に車がないと生活が不便な地方では、車を手放す勇気を持てない高齢者やそのご家族も多いのではないかと思います。

今回は、こうした高齢者とその家族にとって自動運転車が事故防止につながるのかどうかを考えてみたいと思います。

目次

自動運転の分類は5段階

自動運転は米運輸省国家道路交通安全局(NHTSA)により自動化のレベルが5段階に分類されています。

レベル詳細
0運転手がブレーキ、ステアリング、スロットル、原動力を常に自ら完全にコントロールする。モニター等があっても自動制御できなければレベル0。
1運転手は主操縦系統である車間距離自動制御やブレーキ、スロットルなど限られた権限を単独で自動制御できる。運転手が物理的に運転から解放されるものではない。
2自動ブレーキ、走行車線維持、車間距離自動制御などの機能を同時に作動させることで、ハンドル、ペダルを同時に離して運転することが可能。たとえば、高速道路の中央車線を自動で走り続けることなどが可能になる。
3運転手は一定の交通条件の下で運転をすべて自動車に任せることが可能。自動運転を維持できない状況も、運転手が手動に切り替える時間的余裕をもって信号を送ることが可能な自立走行車。
4運転者が目的地や運行支持をインプットするだけでいかなる運転もしない。有人と無人があり安全運転の責任はすべて自動走行システムにかかる。

現在開発が進んでいる自動運転車のレベルはすべてレベル1の段階です。レベル4までの道のりが遠いたためか現状では「安心安全に人間が運転できるためのサポート」がほとんどの日本車メーカーの目標となっているようです。しかし、この目標から団塊の世代が後期高齢者となる10年後には、高齢者や障害者、認知症患者でも安心して自動車を運転することができる時代が来るのではないかという期待も生まれます。

軽自動車の自動運転化で高齢者の生活は変わる?

自動運転車の技術は、すでに高級車で先行して開発されています。平成26年には富士重工が前方を走る車との距離に合わせて減速や停車を自動で行うレヴォーグを発売しています。また自動ブレーキの開発なども各社高級車から先行して取り入れられています。

しかし、今回の東京モーターショーでは、トヨタ自動車が「自動運転車は高齢や障害などで、運転をあきらめざるを得なかった人の移動を自由にする」と、生活の中で運転をサポートしていく方向性を打ち出しています。

もし、自動運転車が高級車ではなく軽自動車やコンパクトカーで実現すれば、生活に身近な足代わりの車として普及する可能性も出てきます。レベル1やレベル2の自動運転であっても、運動機能や認知機能が衰えた高齢者の運転をサポートし、安全性が増すでしょう。

自動車保険のリスク区分に与える影響は?

自動運転の軽自動車やコンパクトカーが普及した場合、自動車保険のリスク区分はどのように変わるでしょうか?

先に走行距離や運転技術で保険料が変わるテレマティクス保険についての記事を書きました。https://hokensc.jp/news/2015731/

ドライブレコーダー等で運転技術を分析し、安全なドライバーの保険料をより安くしようというのがテレマティクス保険の一つの形でした。しかし、通信機器等の技術開発にコストをかけている間に自動運転の技術が普及すれば、運転技術と事故率の関連性は低くなるでしょう。そうなると運転技術が上がれば自動車保険の保険料下がる、というテレマティクスクス保険の考え方自体に矛盾が生じます。

テレマティクス保険は自動運転が完成するまでの過渡期の保険なのか、自動運転の完成があるのかないのか気になるところです。

レベル4へGoogleの挑戦

自動運転車の究極は人間がいなくても目的地に安全につくことができるレベル4の実現です。レベル4の実現は不可能ともいわれている今、実は最も実現に近いところにいるのは自動車メーカーではなくGoogleだと言われています。

すでに2009年以来10台以上の実験車を開発し48万キロを走行。高速道路以外の公道でも走行実験を行い、6年間に起きた事故は自らの原因ではない「もらい事故」16件のみ。車ではなく車に乗っていない周囲の人的ミスが原因だそうです。

もし、Googleの試みが完成すれば、車はロボット化し運転自体に人間は必要ないことになります。

こうした完全なる自動運転化は認知症の方の事故防止につながるかもしれませんが、「車を運転する」という価値観自体が変わってしまう気もします。運転手として人間が車を操っていた時代から、いつしか人間が車に支配される時代に・・・。Googleの走行実験を通して車と人間とのかかわりを深く考えさせられることになりそうです。

参考

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この記事を書いた人

有限会社ヒューマン・マエストロ取締役。大学卒業後、地方銀行にて融資業務担当。結婚、出産後7年間の子育て専業主婦。その後、住宅販売、損保会社、都市銀行の住宅ローン窓口を経て独立。現在は中央線を中心に活動する女性FPグループ「なでしこFPサロン」のメンバーとともに、さまざまな専門分野を持つFP・士業と連携しながら、お客様の悩みをワンストップで解決することを目指している。身近なお金の問題に役立つ講演・執筆多数。

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