生命保険協会が提供する無料の健康増進アプリ、その活かし方と今後の期待

無料で使える健康アプリは既にたくさん出回っています。体重はもちろん、食事からカロリー計算、中には血圧や体脂肪の管理などの機能がついているものもあり、ダイエットや健康管理に使ってみようと思う人も多いのではないでしょうか?

こうした健康アプリをなんと、(社)生命保険協会がオリジナルで開発し、無料提供を始めました。今回は、生保業界団体がアプリを提供する意図を探り、私たちが活かせるポイントを確認するとともに、米国の保険会社の動きを参考にした期待を整理してみました。

生命保険協会が提供 健康アプリ「健増くん」…適切な食事量など把握

運動と食を中心に生活習慣の改善をサポートする健康管理アプリ「健増くん」を生命保険協会が開発し、無料提供をはじめた。スマホにダウンロードし、歩数計・カロリー検索・動画(ヨガやストレッチ)・簡単健康診断・知識入手の5つのコンテンツを利用できる。

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この記事を読んだときに、真っ先に浮かんだのは、なぜ生命保険協会が健康関係のアプリを開発し、どう浸透させて、どのような効果を期待しているのか?という点でした。

生命保険協会は、カタカナ生保なども含め、日本で営業している生命保険会社が加盟している業界団体です。私も、今まで生保業界の情報交換会などで何度も訪問させていただきました。同協会は、生命保険会社が遵守すべき自主ガイドライン等の作成や、税制改正など政府関係各方面への提言、生命保険の調査研究など業界としての動きの他、一般のお客様からの相談なども受け付けています。

その生命保険協会が、健康管理アプリを開発したのはなぜか?

答えは、政府の方針を受け、健康寿命の延伸に貢献するために2014年11月に展開を始めた「健康増進啓発プロジェクト」の一環です。自治体との共催で行ったイベントでは、健康啓発ツールの一つとして「健増」くんをその他のリーフレットとともに推奨していました。

では、このように保険業界と自治体が連携することで期待している効果は何でしょうか?

まずは、社会貢献です。各自治体との共催イベントでは、7千人から8千人程度の参加があった地域もあり、その活動を通して、生活習慣病の予防および健康寿命が延びることが期待されています。

さらなる効果としては、財政的な改善があげられます。保険会社側にとっては、生活習慣病や死亡などによる給付金や保険金の支払が減り、経営に余裕が生まれるでしょう。また、自治体にとっても、健康寿命が延びることで、国民健康保険や介護保険の社会保障制度の財政改善に寄与します。両者ともに財政的な効果につながることが、連携して展開している背景ともいえるでしょう。

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健康管理ツールは楽しく効果を実感できることが重要

実際にこのアプリ「健増くん」を使ってみた率直な感想は、良くも悪くも、内容がいたってまじめで教科書っぽいということ。どの年代層をイメージして開発されたかはわかりませんが、自治体のイベントを活用するなら、50歳60歳以上の年齢層を意識したほうが良いと思います(私自身も以前、自治体などで健康とお金のセミナーをさせていただい際に、比較的元気な高齢者が多かったのを覚えています)。

よって、イベントに参加されるような高齢者の方も含めて使いやすいこと、そして続けやすい仕組みが必要だと思います。現時点で、動画は見やすくて良いですが、そのほかの文字が小さく、文章として読むのに辛いのではないかと懸念されます。

利用者の声をもとに、今後、アプリを改定されるのなら、自分という主人公をイメージさせるなど、ゲーム性を持たせたり、自分の変化を確認して嬉しいご褒美を楽しめるような工夫があっても良いのではないでしょうか。

とはいえ、食事のカロリーが気になる方、一日の運動量を確認したい方は、食事によるカロリー検索が充実しており、写真のように歩数によるカロリー消費とも連動して確認できるので、使ってみる価値はあるでしょう。

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なお、同様の健康管理ツールに関して、以下の米国の保険会社の動きは非常に興味深いと思います。

NY拠点の保険会社が健康管理端末プランを導入

ウェアラブル端末が注目されている米国では、いち早く、保険会社が健康トラッキング端末プランを発表し、加入者に利用できるサービスをスタートさせています。

NYの保険会社が健康トラッキング端末プランを発表、歩数ゴール達成でお小遣いも

NYを拠点としたOscar Insuranceは、大規模な保険会社ではないが、契約者向けに健康トラッキング端末プランを提供し、注目をあびている。その内容は、本人の健康状態に合わせたゴール(歩数)が設定され、それを達成できると毎日1ドルの小遣いが付与されるというもの。米国で深刻な肥満や生活習慣病対策として、既に1万7000人以上が利用し、今後は歩数プランのみでなく、自転車や水泳にも広げたいとのこと。その他、アプリを使った医師との連絡機能などもあり、独自の戦略が光る。

こうした米国の一保険会社の戦略をみても、ワクワクと達成感を味わいながら続けられるための工夫がひと味もふた味も違うような気さえします。

健康管理サービスは、その人の生活習慣の中に入り込んで、ずっと続けられるような工夫が大事です。端末など技術開発は非常に早いでしょうから、日本の保険業界も、今回の健康管理アプリ開発で満足することなく、ユーザーの声を吸い上げて、生活者や契約者が継続しやすい付加サービスをより高めていけるよう期待したいと思います。

参考

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この記事を書いた人

一般社団法人円流塾代表理事、STコンサルティング有限会社代表取締役。一橋大学卒業後、保険会社の企画部・主計部を経て1994年独立。CFP®、1 級ファイナンシャルプランニング技能士。約20年間、金融商品は扱わず、約3300件の家計を拝見してきた経験から、お客様の行動の癖や価値観に合わせた「美しいお金との付き合い方」を提供中。TV出演、著書多数。

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