先進医療技術は随時改定、医療や保険とどう付き合う?

TVなどの医療保険のCMで「先進医療」の言葉が聞かれるくらい、先進医療技術はメジャーになってきているようです。

「先進医療」とは、「厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養」等を指し、「医療技術ごとに一定の施設基準」が設定され、「施設基準に該当する保険医療機関の届出」によって健康保険診療との併用が認められるものです。
2015年3月、4月と先進医療技術の内容が改定され、厚生労働省のHPに最新版が掲載されています。私たちは将来、こうした最新の医療技術も受けられたら安心と、つい民間の医療保険でも「先進医療」の保障に目がいきがちですが、医療や保険に関しては、まず第一に自分自身で確認すべき大事なことがあるように思えてなりません。そのきっかけとなる記事がありましたのでご紹介します。

外科医の技量とは(3)安全意識 技術支える

先進医療は医療技術の最先端として注目を浴びがちですが、病院の先生など医療の現場ではどのように対応しているのでしょうか?今回、高度な医療を提供する特定機能病院の承認取り消しにあたり群馬大病院の調査に携わった先生は、「医療安全の手続きを軽視したがゆえに重大な事故が起き、結局、そのことで先進医療の中断を余儀なくされた」と警告しています。医療の現場でも先進医療をめぐる競争があり、他より早く新しい医療を展開するという使命から、安全のための面倒な手続きが二の次になることも。医療の技術を支え、着実に成功させるためには、安全と倫理面が重要という医療現場の意識改革の必要性が問われています。

これは、医療事故が明らかになった病院の調査を通して露呈した医療技術に関する課題だと思います。群馬大病院、東京女子医大病院については、高度な医療を提供する特定機能病院としての承認を取り消す方向で審議され、患者死亡がわかった千葉県がんセンターは、既にがん診療連携拠点病院の指定から外されています。こうした処分に伴って、新たな先進医療の実施が難しくなる点も危惧されています。

ここで私たちにとって大事なのは、医療技術に対する見方と、私たち自身の医療に対する考え方の2つではないでしょうか?

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先進医療技術自体も随時、内容が更新されている

厚生労働省の先進医療についてのページを見ると、先進医療技術は、最近だけでも、3月12日に続き、4月10日および13日付けでも改定されています。このように不定期に内容が改定され、2015年4月現在の先進医療技術は108種類。そのうち、実際に実施されていた先進医療技術数は、2014年6月末で95、2013年6月末で107、その前2012年の6月末で123あり、ここ数年を見るだけで増加のみでなく減少していることもわかります。

なお、最近1年間で実施件数が多かった技術は、「前眼部三次元画像解析」で7458件。全く実施されなかった先進医療も16項目あり、先進医療技術から削除されるか、しばらく継続など対応が検討されています(注1)。

特に、先進医療技術料の自己負担については、健康保険の適用にならないため、全額自己負担になってしまうという点で、家計面から特に意識して備えたいという気持ちもわかります。

しかし、そもそも先進医療技術は、新しく開発された治療法なだけに厚生労働省の基準と合わせて随時改定され、健康保険の対象へと移行されたり、そのまま削除されたりと移り変わりがとても大きいことは、ここでしっかりと認識しておいたほうがいいでしょう。医療技術に対して現状を延長したイメージで、将来に備えようというのは視野が狭くなりがちです。

医療や保険に対する自分のスタンス・方針が大事

では、そうした医療に対する見方とともに、私たち自身はどう考えて行動したらいいのでしょうか?先ほどの記事を読んで、私は、将来、先進医療技術を受けられるという可能性にただ期待するだけでは不十分ではないかと思えてなりません。
医療面も技術や機能などのスペックばかりに左右されるのではなく、その前にしっかりと自分自身がどのような治療を受けたいのか、また、リスクに対してはどう向き合うかを考えて、医療方針の共有や自分のスタンスを確認しておくことが大事なのではないかと考えさせられました。

人の生き方やライフスタイルは各個人ごとに異なります。みんながどうしているかではなく、自分のこれからの人生や生活スタイルから、医療にかかる方針を自分で決めておくことが何より大事ではないでしょうか?

例えば、私の場合、子どもが成人して自立するくらいまでは、治療の選択肢を広げるために貯蓄や保障を充実させて対策をとっておくが、子どもが巣立った後は、過度な医療に頼らず、延命措置もとらずに自然に任せるなど、自分に万一の際の想いを整理しておくと、民間の医療保険で必要な保障内容も自然と絞り込まれてきます。

民間の医療保険を選ぶ際も、他の人がどうしているかではなく、「自分はこう過ごしたい」というイメージやポリシーを先に明確にしておくことが、結果的に納得のいく金融商品に出会い長く付き合える大きな鍵になると思っています。

参考

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この記事を書いた人

一般社団法人円流塾代表理事、STコンサルティング有限会社代表取締役。一橋大学卒業後、保険会社の企画部・主計部を経て1994年独立。CFP®、1 級ファイナンシャルプランニング技能士。約20年間、金融商品は扱わず、約3300件の家計を拝見してきた経験から、お客様の行動の癖や価値観に合わせた「美しいお金との付き合い方」を提供中。TV出演、著書多数。

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