診療報酬改定で在宅医療重視へ。民間の医療保険はどれだけ応えられる?

最近、独立開業している医師と話す機会が増え、診療報酬の改定が私たちの受けられる医療に与える影響が非常に大きいということを感じています。

診療報酬とは、患者が保険証を提示して医師などから受ける医療行為に対して、公的保険制度から医療機関に支払われる報酬のことです。それぞれの医療行為に点数が決められているので(1点10円換算)、これが改定されることは、医療機関の経営にも大きなインパクトが生じます。

先日、2016年度の診療報酬改定案が発表されましたが、今後の医療はどう変わっていくのでしょうか?また、今まで加入してきた民間の保険会社の医療保険は、その変化に対応できるのでしょうか?

診療報酬改定案 「地域・在宅」医療を重視

《要約》厚生労働相の諮問機関、中央社会保険医療協議会(中医協)の答申によると、2016年度診療報酬改定は、在宅医療を前提にした「かかりつけ」が患者の健康増進や薬を減らすことで、医療費抑制の効果を狙うという方向性が打ち出されている。

従来より厚生労働省は「かかりつけ医」を推進してきたが、今回は、地域の診療所のみでなく、地域の薬剤師や薬局にも「かかりつけ」の役割を広げようとしている。薬剤師が24時間体制で患者の相談や薬の重複や飲み合わせの確認や、処方箋を出した医師に変更を求めることもでき、それらの診療報酬が高まる内容となっている。

その他、診療報酬改定案には、「地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携に関する視点」として、「在宅復帰機能強化加算の新設」「夜間看護体制の充実に関する評価」「退院支援に関する評価」「在宅医療における重症度・居住場所に応じた評価」などが盛り込まれ、急性期から地域包括ケア、そして在宅医療へと円滑な連携を目指していることがわかる。

診療報酬の改定は医療全般に影響をもたらす

「在宅医療のほうが外来診療よりも〇倍儲かる」
複数の医師からこの言葉を聞いたとき、私は驚きました。

最近、在宅医療という名称がつくクリニックが増えているのも、実は在宅医療に関する診療報酬が高めという背景があるそうです。このように、診療報酬改定の動きは、病院の経営、そして医療関係者のサービスに影響を与え、最終的には私たち生活者の受ける医療にも変化が生じます。

最近の診療報酬改定からうかがえる主な医療の傾向として、以下があげられるのではないかと思います。

  1. 高齢社会の中で慢性疾患が増え、病床数が足りなくなるという問題を解決し、安心して必要なときに入院できる病床の確保
  2. 多様で高価な機能のある病院施設でなくてもできる医療については、「地域包括ケア」を推進。地域の専門家がチームでサポートし、病院以外の在宅で医療を受けられるように、診療所や薬局の役割を整理し、病院との機能分化をはかる

これらを通じて、人口構造上、どうしても逼迫しつつある社会保険財政に対して、医療費負担を抑える効果を国は期待しています。と同時に、私たち生活者にとっても、身近で安心して医療を受けられる体制が浸透するのは望ましいこととして、現在、国主導で在宅医療を含めた変革が推進されています。

民間医療保険における「在宅医療」の台頭

医療がこうした方向にあることがわかると、私たちも、今までの前提から作られた医療保険だけでは、将来の変化に対応できなくなる恐れがあるのではないかと気になってしまいます。

従来の医療保険は、「入院したら1日あたり1万円」「手術をしたら20万円(入院日額の20倍)」といった入院・手術保障がベースで、最近は、入院期間の短期化や通院の増加などの傾向から、「通院給付金」を盛り込んでいる商品も増えてきています(ただし「入院を伴う通院」など支払条件が各商品によって異なるので、注意が必要です)。

この「入院」「手術」「通院」の他に増え始めているのが、「在宅医療」のカテゴリ。先述した診療報酬の改定や、在宅医療クリニックの増加などを受けての動きです。

在宅医療は、広義には「病院以外で行う医療」、狭義には「医師や看護師、薬剤師やリハビリ従事者などの医療者が通院困難な患者の自宅もしくは施設に定期的に訪問して行う医療」を指します。

入院・通院と比べると下記のような違いがあげられます。

入院・通院と在宅医療の違い
  入院 通院 在宅医療
目的・役割 集中的な検査や治療 病状に応じた診察・投薬・定期的な検査 医師等による居宅等の定期的な訪問で行う診察・投薬・検査
メリット ・24時間、体調をチェックしてもらえる ・比較的、医療費負担は低い ・住み慣れた環境で治療ができる

・待ち時間がなく、診察時間外でも対応してくれる

・費用は入院より低め

デメリット ・入院費の家計負担が大きい

・入院ルールに合わせる必要がある

・待ち時間があり、診察時間外は一般的に対応が難しい

・交通費や付添が必要な場合もある

・患者をサポートする家族の負担が大きくなる

・費用が通院より高めになることもある

実際、在宅医療を行っている先生にお伺いすると、定期的な訪問計画を書面でご本人やご家族と取り交わし、24時間365日体制で、インターネットを駆使してチーム内で連携をとって対応しているそうです。その内容も、病気や傷害の種類関係なく、診察から検査、薬の処方、予防的な指導などまで多方面にわたり、医療機器も持ち運びやすく性能が良くなるとともに、医療の幅も広がっているとのことです。(レントゲン検査まで在宅医療で可能になってきているのだそうです。)

在宅医療を行う先生の中には、病院の大掛かりな施設や機材に頼ることなく、患者さんとのコミュニケーションや肌感覚で、しっかりと診療できることにやりがいを感じている方もいました。

医療は、国による仕組みとサービス提供者である医療者、そしてそれを受ける患者の三者の状況によって、これからも変化していくと思わざるを得ません。

医療の変化に幅広く対応できる保険選びを

今後の医療保障を考える際に大事なことは、こうした医療の変化を見据えて視野を広く持つことだと思います。

「入院・手術などで〇〇万円の保障、少しでも割安に」といった視点に囚われず、今後の医療が、入院・通院・在宅医療という流れに広がっても、加入している医療保険で給付を得られるかどうかをチェックしていくことが重要になるでしょう。

例えば、がん保険の「がん診断給付金」は、がん(主に悪性新生物)と診断確定されたら一時金が受け取れるという保障で、治療法に関係なく給付されるので、非常に汎用性が高く、使い勝手がいいと思います。

また、最近は、「在宅医療に関する特約」を扱う医療保険が登場し始めています。まだ取扱数は少ないですが、今後、在宅医療の給付も含めた医療保険も増えてくるのではないでしょうか(末尾参照)。

特に、慢性疾患が増えていることから、在宅医療を受ける期間が長期化する可能性もリスクとして捉えられています。健康保険が適用される医療なら高額療養費制度により負担上限もありますが、数か月から数年へと長びくことへの不安は、本人にとっても家族にとっても一番辛いのではないでしょうか? (実際、脳梗塞のリハビリなどは、40代で患うとかなり長引く例もあるそうです。)

医療保障については、将来の様々な医療の受け方に対応できる保険という視点で、ぜひ、現在のご加入内容をチェックしたり、今後の見直しの視点に活かしていただければと思います。

参考1

参考2 在宅医療に関する保障(特約)のある商品(2016年2月現在)

  • SBI生命 …… 終身医療保険(無解約返戻金型)「も。」の終身在宅医療特約(無解約返戻金型)
    すべての傷病に対して、月1回以上の在宅医療受診で、入院給付金日額の6倍(70歳以上50%)の在宅医療給付金、通算36カ月。
    http://www.sbilife.co.jp/products/medical-Mo/index.html
  • マニュライフ生命……「こだわり医療保険with PRIDE 無配当無解約返戻金型」の「特定在宅治療支援特約」
    在宅医療のうち所定の治療の指導管理を受けた月ごとに一律3万円の給付金、通算60回(10年更新)。
    http://www.manulife.co.jp/kodawari-iryo-pride
  • フコクしんらい生命……「解約返戻金抑制型医療保険(医療自在FS)」の「特定在宅治療支援特約」
    在宅医療のうち、自己注射療法や人口透析療法、酸素療法など5つの療法に対して一時金(入院給付金日額の50倍、1回限り)の給付。
    http://www.fukokushinrai.co.jp/personal/iryojizai/index.html
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