富士山噴火による収益減少を補償? 業界初「富士山噴火デリバティブ」とは?

2014年の御嶽山の噴火をはじめ各地で火山の噴火が相次ぎ、観光地が直接噴火の被害を受けるだけでなく、風評被害によっても収益が大きく減ってしまうことが懸念されています。こうした被害を補償する「富士山噴火デリバティブ」が6月1日損害保険ジャパン日本興亜株式会社から発売されました。

損保ジャパン日本興亜「富士山噴火デリバティブ」、富士山噴火の損害などに備え

《要約》富士山噴火デリバティブは富士山の噴火に伴って事業者がかぶる収益減少や費用の損害に備えることができる金融派生商品。気象庁が富士山の噴火警戒レベル3以上および噴火を発表した時あらかじめ決められた一定の額を支払う。損害査定は不要で当座の運転資金としても活用できる。

「富士山噴火デリバティブ」は実際の損害額を支払う損害保険の商品と異なり、噴火警戒レベルが一定の状態に達したという条件を満たすと、損害が発生していなくてもあらかじめ約束された金額を受け取れる金融派生商品です。

デリバティブ(金融派生商品)の手法を使った商品はほかにも「天候デリバティブ」※や「地震デリバティブ」※があります。事業者用の商品であるため一般の方にはあまりなじみがないかもしれませんが、噴火だけでなく、地震や異常気象などに揺れ動く日本列島の災害リスクについて、従来の保険とは違う新しい手法を用いたリスクマネジメントの視点から考えてみたいと思います。

デリバティブは新しいリスクマネジメントの手法

デリバティブは金融派生商品とも呼ばれ、金融商品の取引に用いられる用語です。先物取引やオプション取引などを総称した取引で、将来一定の時期にあらかじめ約束した条件で取引を行う予約の一種です。損害保険の新しい手法として損害のリスクマネジメントに応用されるようになりました。

保険に応用されるデリバティブの大きな特徴は以下の3つがあります。

  1. 保険会社による損害額の査定を必要としない。
  2. 実際の損害額ではなく事前に約束した補償額が支払われる。
  3. 再保険のように保険会社だけがリスクを負うのではなく、金融市場など広くリスク移転するため保険会社のリスクは限定的。

地震や噴火のように大きな損害が発生した時、保険会社だけでは損害を補償できないリスクがあります。一般の保険は再保険という形で保険会社が保険会社を補償しますが、大きな自然災害が起こると再保険料が高騰してしまいます。そのため保険会社だけでなく金融・資本市場へリスクを転嫁して、保険会社のリスクを限定的にすることで大きな損害に対応します。

富士山噴火デリバティブの特徴は

デリバティブの手法を用いた富士山噴火デリバティブは具体的にどのような内容になっているか見ておきましょう。

富士山噴火デリバティブの特徴

加入する対象者 備えられるリスク 受取金の特徴
観光地の事業者

ホテル・旅館・土産物店・ロープウェイなど観光地の乗り物・レジャー施設等の事業者

噴火による実際の損害・風評被害による営業収益の減少・運転資金など 物的損害を伴わなくても収益の減少や発生する費用に備えることができる。損害額の査定をしなくてもあらかじめ決められた一定額を受け取ることができる

具体的な契約例は以下の通りです。

  1. 対象期間:1年
  2. 噴火が予想された場合の受取金額:1億円
  3. オプション料:300万円

受取金の条件は、気象庁が発表する噴火警戒レベル3以上、および噴火の発生です。

オプション料(保険でいえば保険料)を300万円支払い、1年以内に富士山の噴火レベルが一定条件になると、特に損害を受けていなくても1億円を受け取れます。

噴火発生確率の評価手法

富士山噴火デリバティブはSPMPOリスクケアマネジメント株式会社が「噴火発生確率の評価手法」を開発したことにより商品化されました。自動車保険が車種ごとの自動車事故発生確率をもとに保険料が計算されるように、富士山噴火デリバティブは世界の噴火発生確率研究を調査するとともに、過去の噴火情報を網羅的に収集・公表している気象庁や産総研地質調査総合センターの資料を参考に算定されます。

今後は「噴火発生確率の評価手法」を活用した対象火山を増やしていくとのことです。

噴火だけでなく、熊本に続いて函館でも震度6弱の地震が発生し、台風やゲリラ豪雨の被害も増える中、デリバティブ商品も少しずつ認知される時代になってくるのではないでしょうか。とはいえ、これ以上の大災害は発生しないことを祈りたいものです。

参考

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