家族なのに他人扱い?! 保険における「家族」のさまざま

昨年10月に全国に先がけて自転車保険加入義務を条例化した兵庫県に続いて、今年7月に大阪府でも義務化がスタートし、10月には滋賀県も続く予定です。保険加入は現状「努力義務」の東京都や埼玉県も「他県の状況を見て義務化の必要性を考えたい」との構えだといいます。

兵庫県民の自転車保険加入率、義務化条例で一定の成果・・24%→60%〝大幅向上〟

《要約》昨年10月に全国で初めて自転車保険への加入を条例で義務化したことに関連し、兵庫県は今年6月時点で自転車利用者に行ったアンケート結果を発表した。条例制定より前の平成25年時の調査では24・3%だった加入率が60%と大幅に向上した。県の担当者は「加入率が50%に満たない地域もあり、今後も啓発などを強化したい」としている。

自転車保険加入の必要性が注目されるようになったきっかけのひとつに、小学生による自転車事故に関する神戸地裁の判決(平成25年7月)がありました。この不幸な事故の教訓は、多くの人々が日常的に使用している自転車が、とてつもなく危険な乗り物となり得る事実でしたが、実はもう一つありました。それは、小学生の子供自身が負うことが出来ない賠償責任について、監督義務者としてその母親が問われたことでした。

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「自分は関係ない」では済まない、家族が負う賠償責任

この子の母親は自分が起こしたわけではない事故で、またその現場にすら居合わせなかった事故で、1億円近い損害賠償を負うことになりました。この判決の法的背景には民法の規定にある「責任無能力者」と「監督義務者」の考え方があります。(民法712条、713条、714条)

また、今年の3月に最高裁判決があった認知症患者の起こした鉄道事故に関しては、その家族の監督義務の有無や、果たすべき責任の範囲などが争点となって議論されました。結果としては認知症患者の家族に賠償責任は無いという判断でしたが、状況の違いによっては責任を問われるケースが考えられることから、保険の世界にも少なからず影響を及ぼしました。(一審・二審では家族に賠償義務があるとの判決でした)

前者の自転車事故のような場合、もしも母親が個人賠償責任保険に加入していた場合にはその賠償金について補償を得られたはずです。(実際には未加入だったようです)

また後者の鉄道事故の裁判推移を受けて、損害保険各社は商品改定などを行い、従来の被保険者の範囲(同居の親族および別居の未婚の子)に「責任無能力者の監督義務者」も加えられるようになりました。

家族を守る保険がいう「家族」とは?

自転車保険に限らず、個人賠償責任保険に加入していれば、家族が他人への賠償責任を負った場合に補償の対象となります。ですから、家族がそれぞれで加入する必要はありません。

しかし、それはあくまで個人賠償責任保険の場合。その他の保険でいう「家族」は、定義が異なることがあるので注意が必要です。まずは個人賠償責任保険についてもう少し詳しく解説しましょう。

個人賠償責任保険の被保険者(補償の対象)としての「家族」

この保険の被保険者は家族であり、正確にいうと、本人、配偶者、それぞれの同居の親族、および別居の未婚の子です。別居している既婚の子は対象外ですし、別居しているその他の親族も対象外になっています。

ただし対象外の家族であっても「被保険者が無能力者であった場合には、その監督義務者であれば別居の親族も対象になる」というのが最近行われた改定です。

家族も含めて被保険者となる賠償責任保険ですが、事故の被害者が家族である場合は基本的に補償対象外です。

自動車保険の運転者を家族限定とする場合の「家族」

自動車保険では、運転者を限定すると保険料が下がります。この限定された家族の範囲は同居の家族と別居の未婚の子です。したがって、独立して別居しているお子さんは補償範囲内ですが、結婚した場合、規定上は家族でなくなります。

自動車保険の運転者年齢条件が適用される「家族」

自動車保険の保険料は運転者の年齢によっても異なり、21歳、26歳、30歳、35歳などが区切りとなっています。その年齢条件が適用されるのは同居の家族までであり、別居の未婚の子に関しては年齢を問わない保険会社がほとんどです。

別居している20歳の大学生(未婚)が実家の車を運転する場合に、35歳以上かつ家族限定の自動車保険でも大丈夫というわけです(しかし、いつも運転していない人が運転するときには、念のため保険の内容を確認するようにしたほうが無難です)。

自動車保険の事故被害者と「家族」

また、自動車保険の最重要な補償である「対人賠償補償」「対物賠償補償」ですが、事故の被害者が同居の家族である場合には補償対象となりません(この規定は個人賠償責任保険とほぼ同様です)。例えば、車庫入れの際にガレージで遊んでいたお子さんに大ケガを負わせた場合などは保険金が受け取れないのです。

搭乗者のケガを補償する「搭乗者傷害」や「人身傷害補償」については家族でも他人でも補償対象です。

「家族型」傷害保険や旅行保険

傷害保険や旅行保険では家族も補償するタイプを選べますが、加入可能な家族の範囲は同居の親族および別居の未婚の子までとなっています。

ご夫婦だけの場合、夫婦と子供、父親と子供、または母親と子供、あるいは祖母・祖父も含めるなど、色々な組み合わせで選択できる可能性があります。小学生の児童などでは医療費が掛からない自治体もありますから、必要性に合わせて選ぶとよいですね。

「家族型」の医療保険やガン保険

医療保険やガン保険には一つの契約で家族を保障できる家族型がありますが、一般に長期契約であることが多いこれらの保険では、家族構成の変化などによって保険の有効性が失われることもあるので、少々注意が必要です。

夫を「主たる被保険者」としている夫婦型の医療保険の場合、夫が死亡すると保険自体が終わってしまう場合があります(奥様も継続できるタイプもあります)。

また、離婚したために本人の保険に新たに加入しようとしたが、持病があって入れない場合なども考えられます。家族型の医療保険などの加入は慎重に検討されることをお勧めします。

生命保険受取人の「家族」

生命保険の死亡時の受取人は基本的に家族ですが、その範囲は2親等内の親族までというのが一般的です(祖父母・父母・兄弟姉妹・子・孫)。しかし、家族関係の在り方や、結婚観の多様化が進む社会情勢の変化を受けて、例えば同性パートナーも指定できるようになるなど、保険の規定も様々な変化を見せつつあります。

また、生命保険金の受取人の権利は「民法上の相続の規定に関わらず」固有の権利として守られるという特性があります。あまり深く考えることなく、何となく家族にしておけば良い、というのは安易で危険な考え方とも言えます。

住宅ローン対策生命保険の「家族」 

住宅ローンの契約時には、団体信用生命保険などに加入するケースが殆どです。ローン契約名義も保険の被保険者も共にご主人である場合でも、実際には奥様の収入も併せて家計のやりくりが行われていることもあるでしょう。手続きに必要だからというだけで形式的に保険加入するのではなく、家計の実態に合わせて万一への備えを検討する必要があると思います。最近は夫婦連帯で加入できる団体信用生命保険もありますので、情報を整理して家族会議で検討してください。

以上、保険においての家族の様々な扱い方を見てきましたが、我々が日常口にする「家族」という言葉は少しあいまいでもあります。保険契約上の家族、法律上の家族、社会通念上の家族はそれぞれ性質を異にする場合が多いですし、その考え方も時代の変化とともに移り変わります。

保険を考えることは家族を見つめ直すこと、と言えるかもしれません。

参考

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この記事を書いた人

博多生まれの東京育ち。国立市在住30年。老舗機械商社営業マンから突然!脱サラ。当時外資系だった生命保険会社の営業マンとなり、独立自営へのステップとして成果報酬の保険営業を9年間経験。その後ファイナンシャルプランナー(FP)として独立し、現在は保険相談を中心に独立系FP事務所&総合保険代理店を経営している。
本当に必要で本当に役に立つ保障システムの構築と、資産の安定化の実現をサポート。誠実と向上心をモットーに顧客の利益最大化を目指す。

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