老後の家計に直撃する制度改革が目白押し…! 増していく自助努力の重要性

公的年金の支給額を抑制する新ルールを盛り込んだ年金制度改革関連法が成立し、今後、年金額は減っていきそうです。また、医療保険・介護保険の高齢者負担を増やす制度改革も検討されています。どちらも、老後の家計に直撃します。今後、ますます自助努力が求められるということです。

年金制度改革関連法が成立

《要約》国会は14日、会期末を迎え、参議院本会議で年金支給額の新たなる改定ルールを盛り込んだ年金制度改革関連法案が、自民・公明両党や日本維新の会などの賛成多数で可決され、成立しました。

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公的年金が減る新しいルールとは?

老後の家計に直撃する制度改革で、入ってくるお金に影響するのが公的年金改革です。老後の生活費の柱である公的年金は、現役世代が納めている保険料を高齢者に給付する「賦課方式」です。この方式は、現役世代が多ければ年金給付に問題はないのですが、少子高齢化で現役世代が減っていくと支障が出てきます。

そこで、2004年に、少子高齢化が進んでも公的年金制度を維持できるよう、年金給付を抑制する大改革を行いました。それから約12年たちましたが、抑制策はうまく機能せず、このままでは将来世代の年金給付が危うくなるのは必至です。このため、これを是正する内容を盛り込んだ年金制度改革案が今国会で審議され、成立しました。主な抑制ルールは、物価と現役世代の賃金を年金額に反映する「物価・賃金スライド」の見直しと「マクロ経済スライド」の強化の2つです。

現在、年金額は物価が上がると、それにスライドして増えます。しかし、物価は上がっても賃金は下がることがあります。その場合、年金額も下がってしかるべきだと思いますが、年金額は据え置かれています。高齢者の購買力を下げないためだそうです。賃金が下がったら現役世代の購買力も低下すると思うのですが、そこは考慮されていません。

新ルールは、物価が上がっても、賃金が下がれば年金額も下げるというものです。物価より賃金にスライドさせるということですね。導入は2021年4月からです。

「マクロ経済スライド」は、現役世代の減り具合と平均余命の延びを考慮して年金額の変動率を調整するしくみで、2004年の年金大改革のときに導入されました。2023年まで、毎年、物価の上昇率から1%程度ずつ年金額を減らしていく予定でした。しかし、物価下落時には適用しないルールがあり、これまでに適用されたのは2015年度の1回だけでした。従って、年金額の抑制は予定通りに進まず、年金支給水準は想定より10%程度高い状態にあります。

新ルールのマクロ経済スライドの強化とは、物価下落時には今まで通り年金額は下げないけれど、物価上昇局面になったら数年分をまとめて減らすという内容です。2018年度から導入されます。ある年、物価が上がったのに年金額は数%も下がったなんてことが起きるかもしれません。

公的医療保険の負担が増える!

現在、公的医療保険と公的介護保険の高齢者の負担を増やす改革が検討されています。厚生労働省が最初に提案した内容がどんどんトーンダウンしていますが、政府・与党案がまとまったので概要を見ておきましょう。ポイントは70歳以上の高額療養費の引き上げと、後期高齢者医療の保険料軽減特例の段階的廃止です。

70歳以上の高額療養費は、年収370万円未満で住民税を納めている人は、通院時の自己負担上限が2017年8月から月1万4000円(現在は1万2000円)に、2018年8月から月1万8000円に上がります(年間負担額の上限は14万4000円)。入院時の自己負担上限も、2017年8月から月5万7600円(現在は月4万4400円)に上がります。年収370万円以上で現役並み所得のある人も負担増になります。

後期高齢者は、現在、74歳まで夫や子どもに扶養されていた高齢者は9割軽減されています。それを、2017年度から7割軽減、2018年度から5割軽減になり、負担が増えます。比較的所得の高い高齢者向けの軽減措置も見直され、負担増となります。

また、公的介護保険の自己負担割合は、高所得者は2割ですが、これを3割に引き上げる案が検討されています。

自助努力で老後資金を作るには…?

社会保障制度の改革によって、老後の収入は減る一方、負担は増える状況は、今後も続くと思われます。自助努力の重要性が増すわけですね。

国は、それを後押しするため、自己責任で運用する制度を作っています。2017年1月から、個人型確定拠出型年金(iDeKo)の加入者の範囲が拡大しますし、2018年1月から小額投資非課税制度(NISA)に積立型を新設するそうです。現在のNISAは、非課税機期間5年・投資上限は年120万円ですが、積立型は非課税期間20年・投資上限は年40万円になります。対象となる商品は、これから検討されます。現行制度と新制度の選択制になるそうです。

老後資金作りは、税制優遇のメリットがある制度を優先的に利用すべきだと思います。しかし、iDeKoは積立期間が短い50代後半の人は十分にメリットを享受できないかもしれませんし、60代はそもそも対象外です。NISAは一定期間の運用益に対する非課税措置は魅力的ですが、元本割れをする可能性があります。

そこで、元本割れは避けたい人向きの保険を紹介します。明治安田生命の「かんたん保険シリーズ ライト!」の「じぶんの積立」です。「ライト!」シリーズは、若者の保険離れをストップするために開発された商品群ですが、「じぶんの積立」は満6歳~65歳まで・健康状態に関わらず契約できるので、50~60代の老後資金作りにも利用できます。

満期は10年で保険料払込期間は5年、月々5000円~2万円(5000円刻み)まで契約できます。年齢・性別に関わらず、いつでも返戻率と受取率は100%以上なのが最大の特徴です。積立中に保険料が払えなくなって解約しても払った分は戻ってきますし、満期の10年後には103%になって戻ってきます。

保険は加入後の早い時期に解約すると払った分の保険料は戻ってこないものですが、この保険は、いつ解約しても払った分は戻ってくるという不思議な保険です。それを実現できたのは、いわゆるドアオープナー的な商品だからのようです。というのは、加入窓口は営業職員で、他の保険も進められる可能性があるからです。

国が用意してくれている制度を利用するにしても、民間金融機関の商品を利用するにしても、社会保障で不足する老後資金は自力で作る手立てを講じないといけないということですね。

参考

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この記事を書いた人

1994年、ファイナンシャルプランナー資格取得。その後、独立系FPとして、長年にわたって携わってきた一般誌やムック、単行本などの編集・ライターの経験を活かし、マネー系記事の執筆・監修の他、セミナー講師として活動。最近は、終活や生前整理など、人生のしまい方にもフィールドを広げている。

複雑でわかりにくい保険や社会保障制度など、身の周りのお金に関する様々なコトを「わかりやすくひも解く」がモットー。

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