「子供の保険」は真に子供のための保険となるのか

少し前までサクラの話題で盛り上がっていたかと思えば、もうすでに4月が終わろうとしています。この季節に産業界では新入社員達が研修を終えてそれぞれの配属先に赴き、新入学の学生や児童達はそろそろ友達も出来つつある時期ではないでしょうか。

新入学前後の季節は「子供の保険」の相談が多くなる時期でもあります。「息子が小学生になるので良い保険があれば教えてほしい」とか「娘が大学に進学したのだが、入っておくべき保険があるか?」などです。

新入学や進学に伴なって、お子さんの行動パターンや活動範囲が変わり、それぞれのリスクが増すことも考えられます。この時期に「子供の保険」について考えることは意味のあることと思いますので、ここで整理してみます。

いわゆる「こども保険」

一般に「子供の保険」は「子供を被保険者とする保険」ですが、それが必ずしも「子供のためになる保険」とは言えない場合もあります。

例えば、保険にコストは掛けたくないが子供のために何かしら入っておきたいとの思いから、とりあえず、いわゆる「こども保険」に加入したとします。名称は様々ですが子供さん本人のケガや病気、後遺障害や死亡を保障対象とする保険です。

子供の保険を優先し自分の保険加入は先送りした状況で、もしも家計を支えている両親のいづれかが不測の事態に陥って経済的に困窮したとしたら、何のための保険加入だったのかと後悔するでしょう。子供を守るためには「こども保険」に加入する前に「ご両親の保険」をキチンと整えるべきなのです。子供がケガや病気で入院・通院した際に保険給付を受けられれば、それはそれで助かるかもしれません。しかし日本ではすべての自治体で「子供の医療費助成」が制度化されており医療費負担が殆ど無いのが実情ですから、その意味でも「こども保険」の優先度は高くないと言えます。

学資保険

子供保険の次なる選択肢として多くの人が思い浮かべるのは「学資保険」ではないでしょうか。学資保険の基本的な機能は、親が健在であっても万一死亡した場合でも子供の学資金の積立が実現できるというものです。近年学資保険については各保険会社の「返戻率」競争が繰り広げられていましたが、ご承知のように市場金利の低迷を受けて貯蓄型の生命保険の収益性が格段に低くなってしまっており、もはや元本確保すら困難な状況になっています。

ネット上の保険比較サイトで確認したところでは、契約者生存時の返戻率は高いものでも100%前後です(支払う保険料総額と受け取れる学資金がほぼイコールの状況)。

契約者(親)が亡くなった場合にはその後の保険料が免除されて契約通りの学資金が受け取れるわけですが、受け取れる時期は進学時などで数年後となるケースが多いです。大黒柱の死亡時にはすぐに保険金を受け取って、家計の激変に対応したい場合もあり、そうしたニーズへの対応には定期保険などのほうが有効です。

定期保険などのいわゆる死亡保険分野では各社の競争や長寿命化による保険料低下傾向の背景もあります。貯蓄性が期待薄の超低金利が続いている現状では、死亡保障は定期保険や収入保障保険など掛け捨ての保険で備え、学資金の積立については貯蓄型保険だけではなく、税制優遇制度もある「財形積立」や収益性の期待もできる「投資運用商品」なども視野に入れたうえで別途検討するのが合理的ではないでしょうか?(そのように視野を広げて検討した上での選択であれば、学資保険も排除される訳ではありません)

子供の賠償責任補償

幼稚園児や小中学生の場合は前記のように子供本人の医療保障などは優先度が低いですし、他人にケガをさせたり物を壊したりした場合の損害賠償は基本的に保護者あるいは管理責任者(保育園・幼稚園など)が負うことになりますので、やはり子供保険等の必要性は低いと思います。むしろ、子供の入進学の時期を家族全体の(特に両親の)保険の確認と見直しの機会と捉えるべきです。

家計の安定のために両親の保障を確保するとともに、子供が他人に損害を与えた場合に備えて、損害保険会社の「個人賠償責任保険」への加入を検討されるようにお勧めします(個人賠償責任保険は家族全員が対象となります)。

学校の推奨保険

大学生、短大生になると社会的には大人となりますし活動範囲も格段に広がりますので少し事情が変わってきます。多くの大学で入学時の手続きや案内文書に加えて「大学生協の保険案内」などが含まれていると思われますが、その内容はどんなものでしょうか。

  1. 学生総合共済(生命共済)
    ケガによる通院治療、病気やケガでの入院・手術保障、後遺障害、死亡の保障が中心で、比較的安価に基本保障を確保できます。

  2. 学生賠償責任保険
    日常生活における他人への賠償責任を補償します。例えば自転車通学中に他人に大ケガをさせてしまった場合などを想定して加入しておくと安心でしょう。ただし親と同居の場合には重複して加入する必要はありません。

  3. バイク保険・自動車保険など
    通学の手段に応じて必要な場合もあるでしょう。

このほか、学費負担者である親の死亡時にも学費を確保する目的の「扶養者死亡保障保険」や親が病気などで就業不能となった場合に学費を確保する「学業継続費用保険」なども経済状況によっては選択肢となり得ます。

子供の将来を見据えた保険加入

大学生であっても社会人になっても親から見ればいつまでも「子供」に変わりはないようで、「将来を見据えての保険を考えてあげたい」という主旨での保険相談は少なくありません。経済的に独立できないうちは親が保険料を負担してあげ、独立したら自分で負担してもらうというプランです。そうしたケースについては次のような考え方があると思います。

  1. 全くの無保険状態では不安なので、不測の事態に備えて最低限の保障を確保しておく。
    →本格的独立までの「つなぎの保障」と考えて、保障期間1年で更新していける「生協の共済」や「全労済」などに加入。ケガの通院や後遺障害、病気などの入院・手術、賠償責任補 償などトータル保障が安い掛け金で確保できます。

  2. 最低限の保障の確保ができて、独身であっても家庭を持つようになっても、将来的に無駄にならない基本的な保険を組み立てる。
    →通常、生命保険は死亡保障であると同時に自身が受け取る高度障害の保障でもあります。また、終身保険や養老保険などなら解約返戻金が将来の活用資金になる面もありますから、無駄になりにくい保険だとも考えられます。ただし、現時点でこれら貯蓄性のある保険は予定利率が非常に低い状況下にありますから、将来の変化も考慮した上での検討が必要です。
    医療保険については意見の分かれるところです。数十年先の国の医療制度事情は不透明ですから、とりあえず短期の医療保険で良いという考え、または安い保険料で加入できる若いうちから終身医療保険など長期の保障にするという考え、いずれも一理あるように思います。

  3. 当面の保障とは別に、老後資金や年金などを意識して将来への積立をスタートさせる。
    →少子高齢化が進む日本では子供たちが高齢者となる頃はますます厳しい時代になるのではないかと考えて、個人年金保険などの積立をスタートさせてあげようという親心は理解できます。しかし、終身保険等と同様に年金商品も非常に低利率です。低利率で固定されてしまうものについては慎重に見るべきでしょう。

本当に子供ためになる保険とは

子供は社会の財産であり、子を思う親の心は人類普遍です。それゆえに親たちは「お子さんのために」というキーワードについつい乗ってしまいがちな傾向も否めません。子供が生まれたら「学資保険」、入学したら「こども保険」、高校・大学に進んだら「学生保険」、新社会人になったら「若者の保険」、子を思う親の気持ちが高揚するタイミングを狙ったセールストークに対しては冷静に対応したほうが良いでしょう。

子供のためにあれやこれやと多額の資金を掛けてあげたのは良いが、自分たちの将来への対策が不十分なままで老後を迎えてしまったのでは、長期療養や介護などで結局子供に大きな負担を強いるようになるかも知れません。

冒頭で触れたように「子供のための保険」の第一は、子供を無事に育て上げ、将来、子供に重い負担を負わせないように家計リスクを安定化する「親の保険」なのだと考えます。

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