実際の銀行窓口相談で実感! 販売手数料開示は消費者の選択にどう影響する?

日本で資産運用がなかなか浸透しない現状を分析し、金融庁は「金融機関等が、真に顧客のために行動しているかを検証し、この分野における民間の自主的な取組みを支援することで、フィデューシャリー・デューティーの徹底を図る」と方針を出しています。

焦点:金融庁が強調する手数料開示、増える銀行負担 差別化必要に

《要約》金融庁により「顧客本位の業務運営に関する原則」が出され、同庁の「市場ワーキング・グループ」(座長=神田秀樹・学習院大学大学院法務研究科教授)の報告書では、7つの原則が明記された。そこには、「顧客の最善の利益追求」、「利益相反の適切な管理」があげられるととともに、「金融商品の手数料等の開示」についても注力されている。

日本が資産運用面で米国にはるか遅れを取る理由として、金融商品の手数料の開示や説明が十分になされないために、売り手に都合の良い販売が行われ、顧客の信頼を失っているのではないかという指摘があるからだ。 手数料を開示すれば、顧客も自分の視点で選びやすくなり、更に手数料競争でコストダウンになって顧客のメリットは増えるという期待もある。

今回は、いつもと趣向を変えて、手数料開示など行動を起こしているメガバンクの窓口に出向き、実際に資産運用の相談を受けてみました。どのような姿勢で「顧客本位」を示してくれるのか? 体感したことを率直にまとめます。

「顧客本位」のためにメガバンクが自主開示する手数料とは?

メガバンクなど金融機関が、顧客本位の業務運営として、フィデューシャリー・デューティー(受託者責任)への取り組みを相次いで公表しました。

例えば、三井住友銀行とみずほ銀行は2016年8月22日に、三菱東京UFJ銀行は同月26日に、「顧客本位」に対するコミットメントとともに、運用商品における販売手数料を同年10月から自主的に開示する旨を明文化しています。

つまり、銀行の窓口で、ある金融商品を販売すると、銀行側がメーカー(保険会社や運用会社など)からどれだけ販売手数料を受け取れるかがわかるようになります。これによって、「販売手数料が高いから提案されたのでは?」という疑いを、顧客側からチェックすることができます。

では、実際に銀行の窓口では、どのように説明がなされて開示されるのか? 今回は、保険商品を使った老後資金目的の運用手段について相談してきたので、その経緯を気づきとともに紹介します。

資産運用相談の流れと、手数料などの説明の実態

銀行の資産運用相談は、概ね次のような流れでした。

  1. 目的や属性等の確認から商品分類へ(約20分)
    運用目的や運用期間、年収や過去の運用経験、年齢や性別、家族構成、ローンの有無など一通り質問シートに書いて出した後、個室に近いブースに案内され、担当者と一緒にタブレットに入力しながら、運用に適する商品の分類まで絞り込みます。

    (ここまでで約20分。非常に中立的な対応です。)

  2. 商品分類から個別商品の仕組み特徴へ(約40分経過)
    分類といっても、そこにはいくつもの保険商品がぶら下がっています。担当者は、その一つ、一番上にあった保険商品を自らがクリックし、特徴を説明してくれました。一部を印刷して具体的な利回りやリスクについても補足で説明。

    更に、「別の種類でもう少し金利が有利な保険もあります」と、比較できる候補を印刷して説明をしてくれました。

    (1つの分類の中でたくさんある商品から、なぜ一番上の商品を見せたのか、その選び方のポイントなどの説明はありませんでした。同じく、別の選択として、他の保険会社の商品が提示されましたが、金利が有利という点以外は、それを紹介した積極的な理由が見えてこず、少し疑問に思いました。)

  3. 商品の詳細説明(相談開始から約1時間経過)
    もう少し詳しい商品情報を知るためには、生年月日をもとに見積もりが必要で、情報提示の後、一時払保険料の額に合わせた受取額の推移を運用パターン別に見せてもらいます。

    説明の最後に、契約申込時の費用(かかる商品とかからない商品がある)、保険期間中の費用、解約時などの費用について説明を受けました。

    (ここまででもうすぐ1時間になりますが、これでは、今までのよくある保険商品説明と変わらない印象。販売代理店としての手数料については、何も説明がないままです。そこで、タブレットで商品解説ページをスクロールした際に、最後のほうに見つけた「募集代理店が受け取る販売手数料について」を指して質問しました。)

    「ここに書いてある販売手数料って何ですか?」

    「これは、私ども募集代理店が保険会社から受け取る販売手数料でして、お客様に直接ご負担いただくものではありません。初年度は、お客様への説明やコンサルティング料として、2年目以降は、お客様のアフターフォローの対価として保険会社から受け取る形になっているものです。」

    (ちなみに2つの商品提案があったので、もう一つの販売手数料も見せてもらいましたが、ほとんど同程度の水準でした。)

販売手数料より契約者負担の「各種手数料」の方が複雑で厄介

タブレットで見せてもらった販売手数料は概略以下のような内容でした。印刷などはされずに、画面でみせてもらうだけの情報です。

《例》
募集代理店(銀行)が受け取る販売手数料:豪ドル建て一時払終身保険

1年あたり、一時払保険料等(外貨の場合は為替レートで円貨換算)の額に、以下の支払率を乗じた金額が引き受け保険会社から募集代理店に対して支払われる。

  • 15歳~75歳:初年度4%、次年度以降9年間0.45%
  • 76歳~80歳:初年度3.92%、次年度以降9年間0.1%

※契約年齢および年度によって上記のように異なります。
※更に契約年齢が高くなるにつれと、初年度分は2%まで下がります。
次年度以降9年間は0.1%のまま。

以上のケースで、一時払い1,000万円の場合を計算してみると、

初年度の手数料は40万円、以降毎年4.5万円×9年分=40.5万円  
合計80.5万円分

 

つまり、トータルで8.05%分の手数料になることがわかります。

今回、提案を受けた2つの商品は、保険会社は異なりましたが、ほぼ同様の販売手数料水準だったので、この情報から、顧客側がどちらが良いかを判断することは難しいと感じました。

しかも、顧客側からすると、販売手数料よりももっと厄介な費用として、契約者が直接払う費用がたくさんあることがネックだと思います。

例えば以下の費用で、これは印刷してもらった設計書にも明記されています。

《顧客が保険契約に関して保険会社に対して払う費用》

  • 契約時の費用(一時払保険料の2.5%~8%程度や、無いものもある)
  • 保険期間中の費用(運用利率から一定割合で差し引く保険関係費)
  • 年金受取ができる場合、年金受取期間中の費用(年金額の0.35%~1%など)
  • 解約する際の解約控除(基本保険金額の1%~10%など)

顧客側がこれらをすべて理解して、違いを比べることは皆無に近いような気がします(実際、筆者の情報交換仲間のFPさん達に聞いても、渋い顔をする人が多くいました)。

この直接的費用だけで、比較して分析することを諦めてしまう人も多いのではないでしょうか? ましてや、自分が直接払わず、目の前の営業担当者や組織にバックされる販売手数料まで考慮する余裕があるとはあまり思えません。

本当に大切なのは売り手の販売ポリシーを開示することでは?

本来、顧客側から契約に関して保険会社に直接払う費用(運営の経費)は、同じ保険商品なら使われるパンフレット類も同じですし、販売窓口問わず同じはずです。

しかし実際は、同じ保険商品でも、規模の大きな銀行は代理店の評価ランクも高くなり、保険会社から販売窓口にバックされる販売手数料は比較的高いと言われます。

また、今回の販売手数料の開示内容を見てわかるように、銀行の販売手数料は、初年度の手数料と次年度以降も毎年続く継続手数料とに分散されています。その結果、パーセンテージだけで見ると、手数料が高いとは見えないかもしれません。

そこで、一般の保険代理店の方に聞くと、通常、一時払の保険は、初年度だけの販売手数料が多いそうです。そして、「銀行の販売手数料は初年度だけでなく、担当者の異動も多い組織なのに、次年度以降こんなにもらえるんだね……。大きい代理店の強みかな」という言葉も聞かれたほどでした。

手数料に注目してしまうと、総額で8%程度でも、初年度と継続と分散することで、単純に高いという批判を回避しやすくなるともいえます。これでは「いたちごっこ」で、根本的な解決にはなっていないような気さえします。

今回、実際に銀行での運用相談を経験して疑問に思ったのは、手数料よりも、具体的な商品を提案する際、「当銀行がなぜこの商品を品ぞろえに選んだのか?」という銀行ならではのポリシーや姿勢が十分に伝わってこなかったことです。

顧客側から見たら、この商品を買うことで自分が豊かになり、同時に銀行も儲かるのを納得したいか、あるいは他の保険代理店等の担当者が儲かるのに納得したいか、「誰とWinWin状態になりたいか?」という視点のほうがわかりやすいのではないでしょうか?

販売手数料の開示は、一歩前進とは思いますが、まずは、金融機関がなぜこの商品を店頭に並べるのか? その理念や考え方を提示してもらったほうがよほど、顧客は選びやすくなるのではないかと思います。

参考

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