今後の高齢社会には欠かせない?「診断書代行取得サービス」とは

ソニー生命保険株式会社は、「診断書代行取得サービス」を9月19日から開始すると発表しました。

診断書代行取得サービスの開始について~より多くのお客さまへ適切に保険金・給付金をお届けするために~

《要約》ソニー生命は、請求手続に必要な書類を準備いただく負担を軽減するため、「要介護」または「身体障がい」の認定を受け たお客さまを対象として、保険金・給付金をご請求いただく際に必要となる診断書を、当社がお客さまの代わりに取得するサービスを開始しました。

目次

保険金の請求に支障をきたすケースとは

生命保険契約で保険金・給付金を請求する際には、医療機関が発行する医師の診断書が必要になります。この診断書は、保険金・給付金を請求する人が医療機関に作成を依頼して取得します。しかし、診断書の依頼にあたって、請求する人が体調を崩していたり、障害状態となって医療機関に行くことができないことが考えられます。その結果、保険金・給付金の請求が長期間行われないケースも実際に発生していました。保険契約をして保険金・給付金の支払事由に該当しているのに、必要なときに資金を取得することができないという事態が生じてしまうのです。

そこで、請求手続きに必要な書類を準備する負担を軽減するため、診断書を請求する人が一定の要件であることを条件に、その人に代わって医療機関に診断書の発行を依頼し、取得するサービスを開始しました。ソニー生命では指定した委託会社がこのサービスを行います。このサービスにかかる利用料金は発生しません。診断書の作成費用は、従来通り保険金・給付金を請求する人が負担することになります。

サービスの留意点

ソニー生命の場合、このサービスを利用できる人は、請求者もしくは被保険者が「要介護状態にあること」、または「身体障がいの認定を受けていること」が要件となっています。

この場合の「要介護状態」とは、公的介護保険の「要介護1~5」に認定されている人になります。「要支援」の状態は除外されています。

また、「身体障がい状態」は、身体障害者手帳の交付を受けている人です。

最近、このようなサービスを導入する生命会社が出てきています。生命保険会社によって、このサービスを利用できる要件がありますので、念のため事前に確認しておくとよいでしょう。

「指定代理請求人」を指定しているか確認を

生命保険文化センターでは、保険金・給付金の請求に関して、消費者向けにこのような手引きを公開しています。

保険金・給付金の請求から受取までの手引き//www.jili.or.jp/seikyutebiki/index.html

ここでは、「指定代理請求人」といって、傷害や疾病で保険金・給付金を請求する意思表示ができないケースや、治療上の都合で傷病名や余命告知が行われていないケースで、保険金・給付金を代理して請求できる人をあらかじめ指定する制度が紹介されています。

指定代理請求人となれる人は、一定の親族が要件となっています。周囲に一定の親族がいる人は、指定代理請求人を指定しているかどうか、確認をしておきましょう。以下はその場合の留意点です。

  • 指定代理請求人に対して、保険契約の存在、保障内容・請求時の連絡先などをしっかり伝えておく。
  • 指定代理請求人との離婚・死別など家族構成の変化があったときには、一定の親族に早急に変更手続きを行う。

問題は、一定の親族がいないために指定代理請求人が指定できない場合や、保険金・給付金を請求する意思表示ができるにもかかわらず、「保険金の請求に支障をきたすケースとは」の状態で請求ができない場合です。

前述の診断書代行取得サービスは、そのような状況をカバーする制度であると言えます。生命保険会社の中には、保険金・給付金の請求書の作成を代筆するサービスを導入し、同様の状況をカバーしているところもあります。

このようなサービスが行われる背景とは

高齢者が保険金・給付金の受取人となっていて、実際にこれらを受け取る局面で、視力・聴力・日常動作能力などの低下していることが想定されます。そのため、請求書類に所定事項を書き込むことが困難になったり、必要書類の取得が困難となるなど、手続きや請求のための実際の行動が困難になる可能性があります。また、認知症等により保険金・給付金の請求を自発的に行うことも困難となる可能性もあります。

従来はこのようなケースでも、同居・別居の家族が補助することが可能であったかもしれません。しかし、その高齢者に親族がいないなど、保険金・給付金の請求者本人の家族による補助が不可能となり、請求を代行する人も周囲にいない状況も考えられます。

このような状況の中で、保険金や給付金の請求ができないと、医療費・必要な生活費の支払いなど資金繰りに大きな影響を与えます。

そこで、生命保険協会では、平成26年から業界を挙げて「高齢者に配慮した取組みの推進」と銘打ち、特に契約の締結、契約のメンテナンス、保険金・給付金の支払いの各局面で、高齢者の特性に配慮した取組みについてのガイドラインを策定しています。

前述のサービスは、この流れの中のひとつとして位置づけられたものです。

まとめ

生命保険契約を締結する際、とかく保険金・給付金の金額や保障内容、保険料など、契約の入り口部分にのみ注力しがちです。

従来の一般的な家族構成では、本人が請求できなくても、配偶者や子・その他親族が代理人として行うこともできたでしょう。しかし昨今の高齢化や家族構成の多様化を考えたとき、私たちが独力で保険金・給付金を請求できないことも想定しなければなりません。

生命保険各社に対して、このような流れにしっかりと対応した取り組みを期待していることはもちろんです。私たち自身も生命保険契約の出口部分、すなわち、保険金・給付金を迅速・円滑に受け取れる体制をいかに整えるか、という点にも注力すべきです。

参考

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この記事を書いた人

1962年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。 生命保険会社を経て、現在、独立系ファイナンシャル・
プランニング会社である株式会社ポラーノ・コンサルティング代表取締役。
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 CFP®認定者認定者。十文字学園女子大学非常勤講師。
個人に対するFP相談業務、企業・労働組合における講演やFPの資格取得支援、大学生のキャリアカウンセリングなど、
幅広い活動を展開している。

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