「先進医療給付金」の保障内容改定で今後どうなるのか

2018年8月17日、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険株式会社は、同社の先進医療保険である「リンククロス コインズ」の保障内容を改定すると発表しました。

1.改定内容

<1>  先進医療給付金の保障内容を改定します先進医療給付金の支払事由から白内障を原因とする療養を除きます。

<2>  先進医療一時金の金額を一部変更しますがんを直接の原因とする先進医療による療養の場合は、支払額を10万円とします。(改定前は、原因に関係なく療養1回につき5万円)

2.改定日

 2018年9月18日(火)

※なお、責任開始日が2018年9月17日以前のご契約は、ご契約時の保障内容が継続されます。“

(出典)http://www.himawari-life.co.jp/~/media/himawari/files/company/topics/2018/a-01-2018-08-17.pdf

「リンククロス コインズ」は画期的な保険商品

通常、先進医療の保障を行う場合、死亡・高度障害等を保障する生命保険商品や、病気やケガによる入院・手術などを保障する医療保険、ガンによる入院・手術などを保障するガン保険に、「特約」として付帯する方法しか選択肢はありません(ガン保険の場合はガンに関する先進医療のみ保障)。

しかし、「リンククロス コインズ」では、先進医療に関する保障を主契約とした商品です。先進医療については通算して2,000万円のほか、「先進医療一時金」と、臓器移植を受けたときの保障をおこなうものとなっています。

保険料が月額500円で、先進医療特約の単価(おおむね月額100円程度)と比較すると高いのですが、既に他の医療保険やガン保険に加入している人が、当該契約を解約や契約転換をしなくても、現状の保険商品を活かしつつ加入できる点が画期的です。

また加入している組合管掌健康保険の高額療養費の付加給付が充実しているので、通常の医療費は自己資金でまかない、先進医療のみ保険商品で備える、というニーズの人にもマッチした保険商品と言えるでしょう。

白内障の先進医療は保障の対象外に

今回の商品改定では、責任開始日が2018年9月18日以後の「リンククロス コインズ」の契約分から、先進医療給付金の支払事由のうち白内障を原因とする療養を除外する措置が取られました。白内障の治療で適用される先進医療は、「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」です。今までの保障内容から除外されるということで、先進医療の保障部分のスケールダウンです。

先進医療を受診できる医療機関は非常に限られているので、近くに受診できる医療機関がない人は、受診するために遠方に出向く必要があります。日程によっては、宿泊費が必要になります。「先進医療一時金」は、先進医療給付金が支払われる療養を受けたときに、先進医療給付金と併せて支払われるものです。今回の改定では、先進医療給付金のスケールダウンをカバーするため、がんを原因とする先進医療一時金の金額を5万円から10万円にアップさせて、一方的なスケールダウンをカバーしています(がん以外を原因とするものは従来どおり)。

既に締結された、責任開始日が2018年9月17日以前の契約は、従来の保障内容が継続されます。

先進医療は限られた医療機関でしか受けられない

ご存じの方も多いと思いますが、先進医療について、念のため復習しておきましょう。

わが国の公的医療保険では、公的医療保険制度が適用される治療、投薬であれば、一部自己負担で医療サービスが受けられます。しかし、公的医療保険が適用されない診療を受けたときは、原則として公的医療保険が適用される診療を含めて、全額自己負担しなければなりません。

ただし、先進医療などの評価療養や、差額ベッドなどの選定療養を受けたときは、その部分は全額自己負担となりますが、評価療養や選定療養部分のみ全額自己負担となります。

先進医療は評価療養のひとつで、全額自己負担であっても、患者の体への負担が軽く受診の成果が期待できる最先端の医療技術を享受したい患者のニーズに応える診療の選択肢です。将来的には保険診療を目指しており、一定の安全性・有効性があるものを、厚生労働省が治療法とそれを行う医療機関を指定しています。

「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」で生活の質が向上する

この診療は先進医療のひとつで、白内障の患者に対して行う手術です。

従来の白内障手術で用いられてきた「単焦点眼内レンズ」を使用した再建術は、その後メガネを使用する必要があり、日常生活に支障をきたすケースが多いと言われています。

多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術を行うことにより、メガネの依存度が格段に軽減され、生活の質が向上されるとされています。ちょうど10年前の2008年7月に先進医療として適用が開始されています。

保障内容改定の背景は?

先進医療と言えば、放射線治療のうちがん細胞に直接粒子線を照射する重粒子線治療がその名称のみならず、診療にかかる費用が先進医療の中でも最も高額となるものとして有名です。以下の図のように、実施医療機関がごく限られていることもあり、件数はここ4年間ほとんど増えていません。

しかし、「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」は実施医療機関がここ4年間で2倍近くとなっており、それに比例して件数も2倍に増えているのです。「リンククロス コインズ」の被保険者への給付金の支払いも、年々増加していることが予想されます。この診療の1軒当たりの費用は重粒子線治療と比較すると小さくなっていますが、この金額であれば保険商品で備えたいという人もいるでしょう。

  多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術 重粒子線治療
件数 1件当たり費用 実施医療機関数 件数 1件当たり費用 実施医療機関数
2016年7月~
2017年6月
14,433 581,224 555 1,558 3,149,172 5
2015年7月~
2016年6月
11,478 554,707 459 1,787 3,093,057 5
2014年7月~
2015年6月
9,877 401 1,889 4
2013年7月~
2014年6月
7,026 310 1,639 4

(厚生労働省HPより筆者作成)

今回の改定は、最近の「リンククロス コインズ」による先進医療給付金の支払実績が想定していたものよりも大きく上回り、現行の保険料でまかなうことはできないという状況となったと推測されます。保険料をアップするよりは、保険料を据え置き、保障内容を制限する経営判断だったのでしょう。

他の保険会社でも今後同様の取扱いを行う可能性があります。最新の医療をカバーする特約については、このような取扱いが行われることを想定しておくべきだと考えます。それだけわが国の医療技術が進歩しているのでしょう。

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