2020年度導入予定の高等教育無償化。誰が対象?内容は?

「人づくり革命」の中で、幼児教育無償化とともに議論されてきた高等教育無償化が、2020年よりスタートする予定です。制度の細部はまだ決まっていない部分もあるものの、どのような内容なのかを押さえておきましょう。

高等教育無償化、2020年度導入

 2017年9月に立ち上げられた「人生100年時代構想会議」。この大きな柱である「人づくり革命」として、低所得層の幼児教育無償化や高等教育無償化について議論されてきたものが、2018年6月に閣議決定され、「経済財政運営と改革の基本方針2018(骨太方針)」に盛り込まれました。

人づくり革命、教育の無償化先行(日経新聞)

《要約》政府は6月13日、人生100年時代構想会議を開き、安倍政権の看板政策である「人づくり革命」の内容を決めた。幼児教育・保育の無償化は2019年10月から始め、2020年4月から低所得者を対象に大学の無償化を実施する

生産年齢人口が減少する中、高齢者雇用の拡大を図るため、65歳以上への継続雇用年齢の引上げに向けた環境整備なども急がれるものの、具体的な内容は詰めきれていません。まずは、教育の無償化を優先して進める方針が固まり、現在、詳細な制度設計が行われています。

なお、教育の無償化の財源としては、2019年10月に予定されている消費税率引き上げ(8%⇒10%)による増収分から1.7兆円が充てられます。

少しだけ触れておくと、2019年10月からスタートする「幼児教育・保育の無償化」は、認可保育所や幼稚園に通う3~5歳児や住民税非課税世帯の0~2歳児の保育料は原則、無料になります。認可外の保育所やベビーシッター等でも、自治体が「保育が必要」と認定した世帯の場合、月3万7,000円を上限に補助されます。

ただし、待機児童解消のための対策や保育士不足問題も解消されていないため、地域によってはしばらく混乱しそうです。

高等教育無償化の内容は?

では、本題の高等教育無償化の内容を見ていきましょう。

高等教育無償化は大学や専門学校などの高等教育について、低所得世帯の授業料や学生生活費を国で支援する制度です。低所得世帯の子供たちが経済的な事情で大学や専門学校などに進学できないことがないよう支援し、格差が固定されないようにするためのものです。

内容としては、「授業料・入学金の減免」と、生活費の分が返済不要の「給付型奨学金」の2本立てです。給付型奨学金は、住民税非課税世帯を対象に2017年よりスタートしていますが、これが拡充する形です。大学などの受験料や、2020年度より大学入学共通テストで活用される英語の民間試験の受験料も一部支給される見込みです。対象者にとっては非常に助かる内容と言えそうです。

以下は、「経済財政運営と改革の基本方針2018~少子高齢化の克服による持続的な成長経路の実現~」(骨太方針)にまとめられた内容をベースに、ほかの資料なども合わせて整理したものです。

<高等教育無償化の内容>

  • 授業料減免(授業料+入学金)

・授業料の減免措置

国立大学…授業料(53万6,000円)を免除
公立大学…国立大学の授業料(53万6,000円)が上限
私立大学…国立大学の授業料+私立大学の平均授業料(87万8,000円)と国立大学の授業料の差額の2分の1を加算した額(70万7,000円)が上限

・入学金

国立大学…入学金(28万2,000円)を免除
公立大学…国立大学の入学金(28万2,000円)が上限
私立大学…私立大学の入学金の平均額(25万3,000円)が上限

*短期大学、高等専門学校、専門学校も大学に準ずる

  • 生活費等の給付奨学金

・対象経費

修学費、課外活動費、通学費、食費(自宅外生に限り、自宅生分を超える額)、住居・光熱費(自宅外生に限る)、保健衛生費、通信費を含むその他日常費、授業料以外の学校納付金(私立学校生に限る)、大学等の受験料。

×娯楽・嗜好費は対象外

・給付額:検討中

 

授業料無償化や給付型奨学金について、支援が満額適用されるのは、住民税非課税世帯(年収270万円未満)の学生のみです。これに準ずる、年収300万円未満の世帯では住民税非課税世帯の学生の3分の2、年収300万~380万円未満の世帯は3分の1となっています。

ただし、ここでいう年収は「両親・本人・中学生の4人家族」という世帯をモデルにしたもの。実際は住民税の課税状況が基準になり、家族構成ほかによって変わる点に注意が必要です。

支援対象者や大学の要件は?

高等教育の無償化は、消費税率引き上げ分の一部を使って支援を拡大します。税金を使った支援のため、学生の成績などに要件が付けられています。支援を受ける学生は、親の所得水準のほか、成績や学習意欲などもチェックされます。

特に、高校時代は成績だけで判断することはなく、学習意欲を面談などで確認します。大学等へ進学してからも、毎年、学習状況や成績などがチェックされ、成績が悪いと警告も受けます。警告が続くと支給が打ち切られることもあります。

<支援対象者の要件>

・高等学校在学時:成績だけで判断せず、レポートの提出や面談により本人の学習意欲を確認

・大学等への進学後:学習状況を毎年確認し、1年間に取得が必要な単位数の6割以下の単位数しか取得していないときや、GPA(平均成績)等を用いた客観的指標で成績が下位4分の1に属するときは大学等から警告。警告を連続で受けたときや、退学処分・停学処分等を受けたときは、支給を打ち切る。手続を経て休学する場合は、復学の際に支援を再開できるようにする。

 

また、対象となる大学にはいくつか条件が付けられています。「学問追究と実践的教育のバランスが取れている大学等」が原則で、企業などの実務経験がある教員が一定の授業を担当することなどが求められています。これは、大学で学ぶことが「職業に結びつく」ようにする目的もあるようです。

授業料減免の費用は大学に直接支払われるため、高等教育無償化が経営状況の悪い大学の延命につながり、大学の改革が遅れるといった問題もあるようです。現在、全国約600の私立大学の4割弱で定員割れが起きているとのこと、本質的な大学の改革が求められています。

<対象となる大学等の要件>

・実務経験のある教員(フルタイム勤務でない者を含む)が卒業に必要な単位数の1割以上の単位に係る授業科目を担当するものとして配置され、学生がそれらを履修できる環境が整っている。

・理事として産業界等の外部人材を複数任命。

・授業計画(シラバス)の作成や評価の客観的指標を設定し、適正な成績管理を実施・公表している。

・法令に則り、財務情報や教育活動(定員充足、進学・就職の状況)に関する情報を含む経営情報を開示し、ホームページ等により一般公開していること。専門学校については、外部者が参画した学校評価の結果も開示している。

 

中間所得層に対する支援は?

教育費負担が大きいのは低所得層に限らず、中所得層にとっても重くなっています。「骨太方針」の中では、「こうした低所得世帯に限定した支援措置、大学改革や教育研究の質の向上と併せて、中間所得層における大学等へのアクセスの機会均等について検討を継続する」と、中間所得層に対する支援についても今後検討すると触れられています。

現在、在学中の授業料などを国が立て替え払いをして、卒業後に所得に応じて返済する「卒業後拠出金制度」が検討されているようです(日本学生支援機構の無利子奨学金にも所得連動返還型との違いが分かりにくいです!)。どのような形であっても、中間所得層にも一定の学費軽減措置などがあってしかるべきと考えます。

参考

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