生命保険に対する満足度について考える

「オリコン顧客満足度Ⓡ」を展開する株式会社 oricon MEは、『生命保険』『医療保険』『がん保険』についての調査を実施し2019年、1月4日にその結果を発表しました。

https://life.oricon.co.jp/information/194/

この調査では、生命保険、医療保険、がん保険の3種類について、加入手続き、商品内容、保険料、アフターフォローの4つの観点でそれぞれ採点し、それらを総合評価した総合ランキングを公表しています。

(oricon ME発表内容)

調査対象企業29社 実際の利用者7,889人に調査

2019年、生命保険の顧客満足度ランキング1位はソニー生命でした。昨年2位からの順位を上げての1位獲得です。2位のプルデンシャル生命は、昨年規定のサンプル数が満たずにランキング対象外となっていましたが、2019年は規定数に達しランクインしました。ソニー生命は4つの評価項目のうち3つで1位を獲得。プルデンシャル生命は満足度に大きな影響を与える「商品内容」で高い評価を得て1位でした。なお、本調査の回答者は適用者ではなく、調査時から過去1年以内に加入した方から回答を得ています。

生命保険(医療保険・がん保険を除く)の2019年発表分は、総合評価でソニー生命が1位に輝きました。以下2位はプルデンシャル生命、3位は損保ジャパン日本興亜ひまわり生命、4位メットライフ生命、5位太陽生命と続いています。

本稿では、FPとして既に生命保険に加入した人から様々な相談を受ける経験から感じていることを踏まえて、4つの観点で顧客満足度を確保するために何が必要なのかを考えてみたいと思います。

目次

加入手続き

2016年5月の改正保険業法で、保険募集する際の顧客の意向把握、その意向に沿った保険プランが提案されているかどうかの確認、その意向と提案されたプランの対応関係の説明、その意向と顧客の最終的な意向の比較と相違点の確認が盛り込まれました。

生命保険に関していえば、顧客の死亡保障ニーズを顧客とともに確認することは至極当然のことです。しかし、生命保険の既契約者から相談を受け、保障内容と本人のニーズを確認すると、このプロセスが十分に行われていないケースが散見される印象です。この点は顧客満足度の初歩の部分です。

さらに満足度をアップするためには、加入後どのように見直していくのか、についての概要を解説することです。子どもが生まれたとき、住宅を購入したとき、子どもが独立したときなど、どのように保障を組み立て直すのか、についての方向性を説明してもらいたいものです。これにより顧客がその後どのように契約した保険商品と付き合っていくか、ある程度明確になるでしょう。自分が加入している契約内容に疑義がなく、満足できることにつながるはずです。

商品内容

最近の生命保険商品は、終身保険・定期保険を基本として、三大疾病などの重度の疾病に対する保障を付加したり、介護や就業不能などの保障を付加するなど、生命保険会社によって付加するポイントにアクセントを置いて差別化を図っているようです。その場合、保障されるケース、保障されないケースが複雑になっていることがあります。契約者としては、加入手続き時やアフターフォローで分かりやすく伝えられるかが、満足度を左右すると考えます。この点は保険会社というよりは、顧客の担当者のスキルによることになります。

特約については、死亡保障の上乗せや医療、傷害関連が中心となっています。既契約者から相談を受ける際に、商品内容を約款などで確認していただくと、「このリスクには、保険商品で確保しなくても預貯金で十分に対応できる」という感想を持たれるケースがあります。つまり、起こる確率は低いけれども、実際に起きると経済的に大きな損失に対応する保険商品を厳選して保障設計することが、顧客満足度につながると考えます。

最近、健康管理などの健康増進活動を行なうと、保険料が引き下げられたり、契約後にキャッシュバックされたりする商品が出ています。最近の動きとして注目すべき点ですが、今後どのような方向に向かうのか、どのようなタイプの商品が支持されるのか、注目したいと思います。

保険料

前述のように、最近の生命保険商品は、特に定期保険分野で、基本的な仕組みに様々な機能を付加したものが多く、単純な比較が難しくなっています。

しかし、インターネットチャネルを活用して平準定期保険(保険期間を通じて保険金が変化しないもの)を販売している生命保険会社では、販売にかかる経費を大きく削減できるので、保険料を極力抑えて提供することが可能となっています。さらに健康体割引や非喫煙者割引を適用してさらに保険料を割り引き、保険料の面でさらに優位に立っているものもあります。

インターネットで加入できる生命保険会社のウェブサイトでは、自分に必要な生命保険による保障額を簡単に計算できるメニューを設けています。特に若い契約者層では、このような仕組みを持っている生命保険会社の満足度は高いと考えられます。

もう一点、会社員の中には、勤務先の福利厚生制度である団体定期保険(Bグループ保険)が活用できる場合があります。そのような人への保険コンサルティングでは、福利厚生制度の保険商品との保障内容や保険料の比較を行い、顧客に選択肢を提供することが、顧客満足度を高めるポイントだと思います。双方のメリット・デメリットをしっかりと伝え、顧客が最も合理的な保障設計ができるサポートをすべきです。

アフターフォロー

アフターフォローは、保障内容の見直し(保険金の増額・減額・特約の中途付加など)、保険料の支払いへの対応(月払いから年払いへの変更、前納、保険料の支払いをストップして契約を継続など)、解約、契約者貸付など、多岐にわたります。そして、生命保険会社としての大きな役目である、保険金や給付金の支払いがあります。基本的にこれらの制度は、生命保険会社の中で制度が確立されているので、ここに対する満足度は、ひとえに担当者にかかっているところと言えます。

さらに保険商品だけではなく、住宅ローン、教育資金、公的年金、退職金制度など、個人のライフプランの設計について顧客から相談があっても、的確にアドバイスできる知識を持っていることも顧客満足度につながると考えます。

さいごに

今後高齢者が増え、保険金受取人が認知症などで成年後見人を立てなければ請求できない局面が多発することが考えられます。生命保険会社の最も重要な任務が円滑に果たせなくなる可能性があります。このような局面で、いかに円滑に請求に結び付けるかの、顧客に混乱を生じさせない体制づくりが求められます。その一例が、プルデンシャル生命の「生命保険信託」の制度です。このように、オリコン行っている前述の4つの観点以外に、「現在の生命保険商品を活用した独自のサービス」のような視点で評価するポイントがあってもよいのではと思います。

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この記事を書いた人

1962年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。 生命保険会社を経て、現在、独立系ファイナンシャル・
プランニング会社である株式会社ポラーノ・コンサルティング代表取締役。
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 CFP®認定者認定者。十文字学園女子大学非常勤講師。
個人に対するFP相談業務、企業・労働組合における講演やFPの資格取得支援、大学生のキャリアカウンセリングなど、
幅広い活動を展開している。

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