孤独死問題は高齢者だけの問題じゃない!?

2019年5月17日、一般社団法人日本少額短期保険協会が「第4回孤独死現状レポート」を発表しました。その概要から、「孤独死」の実態や問題、リスクについて考えてみましょう。

目次

孤独死の実像を映すレポート

「第4回孤独死現状レポート」は、一般社団法人日本少額短期保険協会・孤独死対策委員会に所属する少短保険会社や協力会社が提供した、孤独死に関する支払案件のデータを統計化したものです。賃貸住居内における孤独死の“実像”を示す初の資料として注目されています。

同協会では、孤独死の実態について発信することで、その問題点やリスクについて広く知ってもらうことを主旨としています。

なお、レポートでは、孤独死について「自宅内で死亡した事実が死後判明に至った1人暮らしの人」と定義しています。

<レポートの対象・期間> 

対象:少額短期保険会社の家財保険(孤独死特約付き)に加入している被保険者

収集データ:孤独死対策委員・協力会社から提供された孤独死のデータ

期間:2015年4月~2019年3月

収集項目:年齢、性別、事故発見日、死因、死亡推定日、都道府県、発見者、発見に至った事由、居室平米数、遺品・残置物の撤去費用(損害額・支払保険金)、原状回復費用(損害額・支払保険金)、家賃保証(支払保険金)

単身世帯の増加が孤独死の増加につながる

孤独死が増え、社会問題として捉えられるようになってきましたが、その背景には単独世帯の増加があります。図表1の厚生労働省「国民生活基礎調査(平成28年)」を見ても、単独世帯とその予備軍と考えられる夫婦のみの世帯の増加が顕著です。2016年時点ですでに、単独世帯と夫婦のみの世帯を合わせた世帯が全世帯の半数を超えているのがわかります。

図表1 世帯構造別にみた世帯数の構成割合の年次推移

(厚生労働省「国民生活基礎調査(平成28年)」)

(厚生労働省「国民生活基礎調査(平成28年)」)

国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(2018年推計)」によると、2040年には単独世帯が39.3%、夫婦のみ世帯が21.1%になると推計されています。両者を合わせると6割を超えます。

世帯総数は2023年には減少に転じるのですが、単独世帯は増加します。単独世帯数が減少を始めるのは2032年以後です。そのため、2032年までは孤独死も増えていく可能性があるといえそうです。

孤独死の平均年齢は61歳。自殺も多い!

レポートによると、孤独死の平均年齢は男女とも61歳と比較的若く、高齢者未満(65歳未満)の孤独死が5割を超えています。60歳未満は男女ともにおよそ4割というのも驚きです。また、男女比ではおよそ8:2で、女性の4倍も男性の孤独死が多いことがわかります。

孤独死者の死因では、病死、原因不明に次いで多いのが自殺で、男性10.2%、女性16.3%を占めています。ちなみに、厚生労働省「人口動態統計(2017年)」によると、死亡者のうち自殺の割合は男性2.1%、女性0.9%であることから、孤独死の原因として、自殺の割合が高いことがわかります。

図表2 男女別死因の構成割合

(「第4回孤独死現状レポート」より)

(「第4回孤独死現状レポート」より)

自殺による孤独死者の年代を細かく見ると(図表3)、30代>20代>40代>50代>60代>70代の順に少なくなっていきます。自殺による孤独死は20代~40代が72.8%と高く、全国の自殺者より割合が高いことがわかります。性別の特徴としては、男性が30代(26.7%)、女性が20代(38.3%)と高くなっています。

図表3 年齢階級別自殺者の割合

(※)厚生労働省社会・援護局総務課自殺対策推進室 警察庁生活安全局生活安全企画課 「平成30年中における自殺の状況」より

(※)厚生労働省社会・援護局総務課自殺対策推進室 警察庁生活安全局生活安全企画課「平成30年中における自殺の状況」より

発見までの日数は平均17日 

孤独死は、発見までの日数も問題になります。発見されるまでの日数は、平均で17日だそうです。3日以内の「早期発見」は40.2%で、女性の方が高めです。30日以上経過する割合は14.3%。男性の方が長期化しやすい傾向があります。

第一発見者は多い順にみると、①不動産の管理会社・オーナー、②親族、③福祉(ケアワーカー・配食サービス・自治体・配達業者・ガス電気等の検針員等)、④他人(近隣住民ほか。「異臭」や「郵便物の滞留」で発覚)、⑤友人、⑥警察です。

「早期発見」では訪問・音信不通が88%超で、30日以上の長期化するケースでは、訪問・音信不通のほか、異臭や家賃滞納などで発見される割合が上昇します。自治体によってはすでに行っていますが、早期発見のためには、ヤクルトや弁当の宅配その他で定期的な訪問をすることも有効といえそうです。

孤独死が多い時期や地域は?

季節や地域で孤独死の発生に偏りがあるかどうかですが、季節では7月が最も多く、1月、8月が次に多いものの、年間を通じてさほど大きな変更はありません。

地域差ということでは、孤独死の平均年齢に差があります。最も若いのは九州・沖縄の55.8歳で、次が北陸・中部の56.4歳。平均年齢が最も高いのは関東の62.8歳で、九州・沖縄と比較すると7歳の差があります。

<孤独死の平均年齢>

  • 九州・沖縄 55.8歳
  • 北陸・中部 56.4歳
  • 北海道・東北 58.7歳
  • 中国・四国 59.0歳
  • 関西 61.1歳
  • 関東 62.8歳

孤独死の損害額と保険金額

今回のレポートのデータは、「孤独死保険」といわれる賃貸住宅オーナー向けの保険を扱っている会社が提供する形で集められたものです。実際の損害額や支払われた保険金額は次の通りです。

<残置物処理費用>

  • 損害額(n=2,044)平均21万4,120円(178万1,595~1,080円)
  • 支払保険金(n=1,851) 平均20万7,342円(500万円~1,080円)

<原状回復費用>

  • 損害額(n=2,797) 平均361,392円(4,158,000~5,400円)
  • 支払保険金(n=2,514) 平均288,016円(3,000,000~5,400円)

<家賃保証費用>

  • 支払保険金(n=215) 平均321,840円

孤独死とどう向き合うか?

以上、孤独死のリアルなデータを見てきましたが、レポートでは、次のようなまとめがなされています。

1.孤独死は高齢者だけの問題ではない!

孤独死発生時の平均年齢は61歳で、現役世代も4割を占めます。50代の孤独死も70代並みに多いことも問題。

2.自殺による孤独死に対策が必要

孤独死で深刻な問題は自殺が多いこと。全死亡数に対する自殺率に比べ、非常に高くなっています。しかも、自殺による孤独死は20代~30代の女性で多くなっています。

3.早期発見のために見守りサービスも  

孤独死の発見までにかかる日数は平均17日で、「3日以内」の発見は4割程度です。自治体やボランティアによる単身世帯への見守りサービス等の導入を検討し、早期発見につなげる努力も必要です。 

4.孤独死対策のために  

孤独死は今後も増加傾向にある中、孤独死対策の必要性が高まっています。孤独死の実像を把握することが的確な孤独死対策の第一歩となります。

賃貸住宅のオーナー向け補償

賃貸住宅に住んでいる身寄りのない人が亡くなった場合、次のような問題が残ります。

  • 部屋に残された家財等の処理
  • 部屋の原状回復
  • 家賃の清算(未納分)
  • 事故物件となったことでの家賃の低下

孤独死による家財等の処理や原状回復(特殊清掃)、未納家賃の清算の負担は連帯保証人、次いで借り主の相続人にあるとされます。連帯保証人が負担しても、本人に対して請求する権利があり、つまりは相続人に請求することができます。しかし、遺産の状況によっては、相続人が相続放棄をする可能性もあり、結局は、賃貸住宅オーナー自身が負担するケースもあります。

こうした「孤独死リスク」に備えるための保険や特約もあります。例えば、アイアル少額短期保険「無縁社会のお守り」は、賃貸住宅を4室以上保有するオーナー向けの補償。保有する賃貸住宅で、孤独死や自殺、犯罪死が発生した場合、原状回復費用として1事故最大100万円が支払われるほか、事故後に空室や家賃の値引きになった場合、最長12ヶ月間、1事故最大200万円まで補償されます。破損や汚損等がなくて被保険者に費用負担がなく、原状回復費用保険金の支払事由に該当しない場合は5万円が支払われます。保険料は月300円/戸。少額短期保険ハウスガードの「オーナーズプロテクター」も同様の補償を備えています。

また、三井住友海上火災保険や東京海上日動火災には、賃貸住宅オーナー向け火災保険に付ける「家主費用特約」があります。賃貸住宅内での孤独死や自殺、犯罪死によりオーナーが被る家賃収入の損失や、清掃・改装・遺品整理等にかかる費用が補償されます。

「自分で備える」補償・保障も!?

孤独死をした時に周囲に迷惑をかけたくない人は、どうすればいいのでしょう。

例えば、ジック少額短期保険には「賃貸住宅生活者総合保険」に「孤立死原状回復費用保険(特約)」が付けられます。この特約は、万一、自分が孤独死をした際に、汚損清掃、修理、残置物撤去費用などが支払われます。

他にも、賃貸住宅に住んでいて、孤独死の際に負担をかけたくない場合は、葬儀費用に100万~300万円の死亡保障を上乗せして用意しておくと、遺族などに負担をかけずに済むのではないでしょうか。

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この記事を書いた人

経済誌・経営誌などのライターを経て、1994年より独立系ファイナンシャル・プランナー。FPラウンジ 代表。個人相談やセミナー講師の他、書籍・雑誌の記事や記事監修などを行っている。95年、保険商品の全社比較を企画・実行して話題に。「保険と人生のほどよい距離感」をモットーに保険相談に臨んでいる。ライフワークとして大人や子どもの金銭教育にも携わっている。座右の銘は「今日も未来もハッピーに」。

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