第1回メガバンクとして Fintechにいち早く取り組んできた 「みずほフィナンシャルグループ」

掲載:2017年5月29日

仮想通貨や人工知能(AI)など、何やらお金の世界でも、大きな変化の波が来ているのを感じている人も多いのではないでしょうか?
「Fintech ~暮らしの未来予想図」では、Finance(金融)+Technology(テクノロジー)が進むことで、「私たちの暮らしがどうなるのか?」「今のうちに把握しておくべきことはないか?」といった視点に注目し、時代の最先端をいく会社の担当者へのインタビューをまとめてお伝えします。吹田 朝子・保険ジャーナル編集部)

対応してくれた人
みずほフィナンシャルグループ
デジタルイノベーション部 オープンイノベーションチーム
シニアデジタルストラテジスト

工藤 麻貴氏

Fintechで銀行も大きく変わるのでは?

吹田:ちまたではビットコインも流行り、これから私たちのお金ってどうなるのだろう?と気になる人が増えているようです。いきなりで失礼ですが、銀行も窓口がなくなるのではないか?という人さえいます。実際どうなのでしょうか?

工藤氏:銀行の支店や窓口がなくなっちゃうの?という質問はよくありますが、そんなことはないと考えています。ビットコインなどの仮想通貨は、信用度が低い国などから浸透しているようで、日本でもある程度は広がるでしょうが、法的裏付けのあるお金を顔の見える窓口でやりとりすることを好むお客様も多く、選択肢が多様化するなかで、棲み分けされていくのではと捉えています。

吹田:確かに高齢者など、従来のやり方が安心する方もいますよね。でも、銀行自体、どんどん変わっていく流れにあるのではないでしょうか?

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工藤氏:イノベーションの時代にあることを意識して、〈みずほ〉にはFintech専担部署として、デジタルイノベーション部という組織があります。みずほ内のリテールや法人向け、海外向けやアセットマネジメントなど、ターゲットや業務別の各組織の垣根を超えて、常務直属の独立した組織となっています。デジダルイノベーション部では、「お客さまのサービス向上」のため、国内外の外部機関と組んで「新規ビジネスを創出すること」を目的に様々な分野から65名程度が集まっています。

吹田:どんな人たちが集まっているんですか?

工藤氏:キャリア採用として〈みずほ〉の外の組織からメンバーに加わっているのが全体の約半数で、理系出身者も多いです。また、海外留学・駐在経験者が約65%と高く、まさにダイバーシティがきいた組織になっています。

Fintechで実現しつつあるサービスとは?

吹田:そうした組織などで、実際、どんなことを進めているんですか?

工藤氏:2014年以降リリースしてきた主なものとして、以下のようなサービスがあります。

お金の管理関連
  • みずほMessenger(チャット)
    みずほ銀行のWeb画面で、ページに一定時間滞在しているなど、お客様が「お困り」とシステムが自動判断した場合に、チャットが自動表示され、オペレーターがチャットでやりとりできる。
  • LINEでかんたん残高照会サービス
    LINEで専用のスタンプを送信するだけで、残高や入出金明細の照会結果が通知される。
  • Apple Watch上での残高表示、振込予定日の通知サービス
  • 家計簿アプリと連携し、「一生通帳」として、入出金明細の閲覧が一生可能に。
  • クレジットカード情報を一元管理できる無料アプリ「CRECO」と、「みずほダイレクトのAPI(Application Programming Interface)」が連携(注:APIとは、Webサイトのプログラムを一部公開することにより外部のシステムやサービスと連携させる仕組みのこと)
  • パートナーと楽しく便利に管理できるペア口座アプリ
    アプリに登録した口座の入出金明細の確認や振込期限の通知のみでなく、2人のコメントチャットなどのタイムライン表示でコミュニケーションできる。
接客サービス関連
  • コールセンターで人工知能(AI)Watsonによるオペレーター支援
  • 自動音声翻訳アプリ搭載のタブレット端末の店舗導入
  • 人工知能(AI)Watsonと人型ロボットPepperを連携させ、より高度な顧客体験への取り組み(宝くじに関する照会応対など)
資産運用関連
  • SMART FOLIO(ロボアドバイザー)
    ネット上でのリスク許容度などを踏まえた投資信託ポートフォリオ提案や運用アドバイスを提供
貸付・資金調達関連
  • ビッグデータ・AIを活用したスコア・レンディング(2017年度前半開始予定)
    専用アプリによるスマホ完結型サービスで、融資に関する個人スコアや借入条件を随時、確認でき、入力内容に応じてスコアアップも可能なサービス
  • クラウドファンディングサービスとの連携
    プロジェクトの実行者が資金を提供した支援者に対し、その額に応じてプロジェクトの成果物であるモノやサービス・体験を返すというクラウドファンディングサービスにおいて、紹介・啓蒙促進など連携をはかる。
ブロックチェーン・仮想通貨関連
  • ブロックチェーン(分散型台帳)技術の応用可能性について海外金融機関と連携
  • 国内外のベンダーと協業し、記録の暗号化・共用や、国際間証券取引、仮想通貨、国際送金、独自の実証実験を開始

吹田:本当に幅広く、多方面ですね。スマホ完結などネット上でお金のやりとりができて、すべてが繋がってくるのは便利な一方、すべて丸見えになって怖い! セキュリティは大丈夫なの?という声も聞かれます。

工藤氏:確かにそういう声もあるでしょう。ユーザーのお金にまつわる情報を取り扱うのですから当然のことと思います。日本を含め世界の多くの個人資産管理サービス(PFM)が”スクレイピング方式”を取っており、ログインに必要な情報(ID/パスワードなど)を事業者に預ける方法が主流でした。今後API活用が広がっていくことで、このような不安も払拭していけるのではと思います。

吹田:AIもどこまで進歩するのか気になります。SMART FOLIOは、編集部内でも登録して利用してみましたが、実は、リスク許容度診断などがあっけなくて……もう少し、プロセスなどが見えると実感が沸くなと思ったりしました。

工藤氏:なるほど。AIは、まだまだ発展途上で、例えば、「YES」という回答でも、「迷わずYES」という状態だったのか、「しばらく悩んで迷いながらYES」と答えたのでは、実は違いがあるはずですが、AIが人間の感情認識などまで踏み込むにはまだ時間がかかります。 なので、自動的にできる部分と、人が関与する部分とをうまく棲み分けて行くことが大事と思っています。

みずほの目指す姿は? 銀行は今後、何屋さんになっていく?

吹田:ここまで本当にたくさんのサービスをご紹介くださいましたが、私たちの暮らしに密接なみずほ銀行は、今後どこを目指していくのでしょうか?

工藤氏:簡単に言うと、お客さまが便利であればいい。「いつでもどこでも便利に!」を合言葉にしています。Fintechは目的ではなく、あくまで手段なんですよね。Fintechという手段を使って、サービス業として、お客様の便利さを追求していくことが役割と思っています。

吹田:そのために一番力を入れていることは何でしょうか?

工藤氏:業務というより、注目している要素技術として、「ビッグデータ」「人工知能」「ブロックチェーン」があります。これらを活かして、新しい金融サービスを生み出していこうと、様々なPoC(Proof of concept;新しいアイディアを実現可能か試し、その結果、実現できたか確認すること)に取り組んでいます。

吹田:ビッグデータはどう活かしていくイメージですか?

工藤氏:2400万ものリアルな顧客口座をもとに、お金の入出金などの動き、カード決済、電子マネーでの購入履歴、融資、資産運用など、様々なデータを収集して解析し、マーケティングに活かすなどして、お客様にとてより便利で役立つサービスを創出していきたいと考えています。

吹田: AIのディープラーニングや、ブロックチェーンによる仮想通貨の法整備など、まだまだ目が離せないことがたくさんありますね。日本のお金の動きを見るうえで、みずほフィナンシャルグループの情報はこれからも追っていきたいと思います。ありがとうございました。

編集部の帰り道

なんだか、銀行は今後、どんどん「システム屋さん」になっていくような気がする。「システム屋さんだけど、お金のことは、一部窓口でも丁寧に対応できる存在だよ」というイメージに変わっていくのではないだろうか?

ただ、若い世代を中心に選択肢として広がるであろう、ネット上のサービスは、ユーザーの声もネット上で一瞬にして広がるはずで、栄枯盛衰も激しいだろう。

新規に数多くのサービスを打ち出すだけでなく、ユーザーの意見や評価をきちんと吸い上げて、より使い勝手が良く継続できるものにするために、フォローシステムもしっかりと構築して商品開発に繋がるようにしてほしいと思った。

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