第5回最短3タップで入力できるインターフェースにこだわり、お金と生活の振り返りを習慣化!家計簿アプリおカネレコ

掲載:2017年12月22日

Fintech分野に注力した事業を展開し、家計簿アプリのダウンロード数は420万ダウンロード(2017年12月現在)、 三菱東京UFJ銀行の主催するMUFGアクセラレータにも第一期企業としても採択され、数々のサービスを提供するスマートアイデア株式会社の社長、江尻氏に、ご自身のビジネス展開と目指す将来像についてお話を伺いました。吹田 朝子・保険ジャーナル編集部)

対応してくれた人
smartidea01スマートアイデア株式会社
代表取締役

江尻尚平 氏

なぜ家計簿アプリからスタートを?名称に込められた想いとは?

吹田:理系出身で外資系携帯電話メーカーでの経験を持つ江尻さんが、この金融の世界で、なぜ家計簿アプリからスタートしたのでしょうか?

江尻氏:正直なところ、自分のニーズからスタートしたのです。2012年当初、まさに1食200円の生活を実践しながら、既にある家計簿アプリを自分でいろいろ試していました。しかし、なかなか使いやすいものがなく、実際、続かない人が多いという現状もよくわかったので、それなら「自分みたいにそんなに細かくなくても簡単で続けられるものを創ろう」と思ったのです。

吹田:当時、競合する家計簿アプリもありましたが、自らユーザーとなって使いやすいものをつくったことが、結果的に差別化につながったのですね。つくる際は何を一番大事にしたのでしょうか?

江尻氏:家計簿について「面倒くさい、手間がかかる、時間がかかる」という三大悩みをなくすことを意識しました。まずは入力。最初の入り口をすぐ入力できる画面にしています。「2秒で家計簿」というのは、実際には1秒でもできるが、胡散臭い、誇張していると思われないために、誰でもできる感覚の2秒にしました。

吹田:「おカネレコ」という名称も工夫されているような気がしますが…?

江尻氏:元々は「おカネレコ―ディングダイエット」でした。お金の出入りをシンプルに記録しましょう!そして客観的に実態を把握しましょう!という意図があります。「おカネ」をカタカナにしたのも、「お金」だと欲など感情が出てきやすいため、ネガティブさを感じずに、ポジティブに親しみやすいように「おカネレコ」としました。

吹田:ずいぶんと考えられて深い意図があるのですね。ロゴマークもレジのカゴですよね。

江尻氏:はい、おカネの出入りは人生そのもの。食べたり、日々の生活に必要なもの、中には直視したくないものもあるかもしれないが、おカネや買い物を振り返りながら、自分の生活も振り返ろう!という意味で、「レジかご」です(笑)。

ユーザーインターフェースで、徹底的にこだわった手順の省略とは?

吹田:名称もロゴもとっても親しみやすく可愛いですね。ユーザーはやはり女性が多いのですか?

江尻氏:はい、ユーザーの7割が女性です。主婦はもちろん、働く女性も、時間がない中で、すきま時間でどこでもできるので、使ってくれています。

吹田:御社はWebサイトにも「インターフェースのプロが考えた」とありますね。先ほども、最初の画面から工夫したとのことですが、どのようなこだわりやポリシーをお持ちですか?

江尻氏:大きく2つあります。1つ目は、可能な限り少ない手順で入力でき、手軽で続くこと。2つ目は、デザインや色彩も毎日見るものなので、女性デザイナーさんとともに、シンプルかつ気持ちいい画面に仕上げています。

吹田:少ない手順というあたり、理系的でものすごく細かいこだわりがありそうですね。

江尻氏:具体的には、どれだけ少ないタップ数でできるのか?価格、入力ボタンと3回~4回のタップでできる!という点にこだわりました。当時の家計簿アプリは、最初に登録用の設定項目が多く、毎日の入力時も、最初の画面がまず「現状レポート」(残高がいくらなど)から入るものがほとんどだったのです。それで、登録画面をなくし、入力画面からすぐに始められるようにしたのは、当社のアプリだけだったというわけです。

吹田:使う前にいろいろと個人情報の登録やパスワードなどの設定をするのは確かにハードルが高いです。アプリも入力画面に入るだけでも一手間かかる!という視点は、ものすごい徹底ぶりですね。きっと随所にそうしたこだわりが盛り込まれているのが予想できますが…?

江尻氏:電卓を使ったことがない人はいないだろうという視点で、最初の画面も全体が電卓をモチーフにしています。買い物途中で計算して合計した数字がそのまま入力画面に反映できるようにもしていますし。

smartidea03 吹田:一つ一つの行動に合わせて本当にきめ細かいですね。支出割合を示す円グラフも色合いが優しいグリーンやオレンジ、黄色などですよね。

江尻氏:女性のセンスを大事にしています。この円グラフは好評でして、「他のアプリも試したけれど、やっぱりこれを使いたいから」と戻ってきてくれたお客様もいます。

吹田:お客様の声は有り難いですし、大事にしたいですね。

江尻氏:はい、もうつくって5年になるのですが、デザインを一方的に変えないようにも気を付けています。そもそもこのアプリは、家計簿の習慣化を目指していますし、お客様にとっても慣れたものが一番ですから。基本構成は変えずに、古いデザインも選べるようにして一貫性を保っています。

家計簿は日本文化!実は世界のユーザーを視野に開発!機種対応など苦労も多いが、目指すは世界中のHappy Money Life!

吹田:御社は開発をベトナムでされていて、英語ベースでつくっていると聞きました。確かに言語も英語、日本語、中国語(2種類)、フランス語、スペイン語と設定画面で変えられますね。国際結婚した方にも勧めたことがあります(笑)。

smartidea02江尻氏:英語をベースに必要な言語に変換して世界で使えるようにしています。最近、米国、特に大学生の男女にも使われ始めて、10万人くらいユーザーがいるんですよ。

吹田:海外にはそういうアプリは少ないのでしょうか?

江尻氏:実は、海外では家計簿の英訳がなく、Personal Financial Managementと言われる程度です。それではちょっと硬いので、「おカネレコ」は「Quick Money Recorder」という名称にしています(笑)。家計や家計簿という概念は、日本文化なんだと思いますよ。

吹田:なるほど~!日本文化を海外へ。始めから世界展開を視野にいれていたのですか?

江尻氏:もちろん、そうです。英語ベースで作るとともに、スマホの機種も、日本にない機種含めて6,000から7,000種に対応できるよう、ベトナムにいるメンバーが開発やテストをやっています。実際、iPhoneや Android、タブレットも含め、操作時に不具合がでないように、バグと機種対応は本当に大変なのです。テスト項目は1,600もありますし。

吹田:そんなに多くの機種にわたって対応しているとは驚きです。

江尻氏:設計に関しても、細かい点ではカレンダー表示などいろいろあります。例えば、1か月分などを集計するのに締日をいつにするのか、月末、給料日、祝日対応、さらに機種などによる画面サイズも合わせるのも大変なんです。ベトナムではプログラマーなど20代の若手8人が、それらをコツコツと真面目に取り組んでくれて本当に有り難いです。

吹田:身近に使えるアプリも、そういう取組みや苦労の賜物なのですね。こうしたアプリを通じて、日本や世界をどんな世の中にしていきたいとお考えでしょうか?

江尻氏:目指すビジョンとして、いつもHappy Money Lifeと言っています。おカネって生きていくのに必要な道具でもあり、一方で、囚われているというか、節約しながらも苦しめられたり、不安の要素になったりもしますよね。でも、おカネはもっと人を幸せにするものだし、世界の貧乏がなくなっていくことをイメージしています。おカネを使って人生が幸せになっていく世界ですね。

家計簿から始まる次なるFintechビジネス展開とは?

吹田:家計簿アプリもシリーズ化し、さらに取り組む範囲が広がっているそうですが、特に今、一番力を入れていることは何でしょうか?

江尻氏:まず、「レコシリーズ」は、生活に密着して自然とできるように、わざわざやらなくても習慣化されることを目標にシリーズ化しています。

  • 「ストックレコ」は家の中でのモノの管理ができるアプリ。例えば冷蔵庫の中に、何が入っているか、買わないといけないものや必要なものは何なのか?わかるようにしています。それがあれば、出先でもチェックできて、買い忘れやダブりがなくなりますよね。
  • 「買い物電卓レコ」は、今いくらまで買い物かごに入っているのか、買い物リストに合わせて集計できるアプリ。お店のレジに行く前に計算でき、その金額はそのまま「おカネレコ」の入力金額へと連動できます。
  • 「日記レコ」もあります。日記をつけることでおカネとの付き合い方を振り返られるように、よりステップアップできるようにと思っています。

吹田: アプリを使うシーンに合わせて充実していく形ですね。

江尻氏:一方、三菱UFJ信託銀行さんにご提供している「信託クエスト~剣と魔法とお金の物語~」は金融機関のお客様向けに、ゲームの中で楽しんで投資を学べるように、2017年9月にリリースし、非常に多くの方に利用いただいており、こちらも続編など引続き力を入れていきます。レトロゲームをイメージした世界観で、ゲームのシナリオライターさんにも協力いただいて作成したものです。まだまだお金の知識を身に付けられる場所が少ないので、このゲームを通じて、どこでも何回でも楽しく学んでもらいたいと思います。

吹田: 金融機関の情報というと、商品情報が多いでしょうから、こうしたゲームを通じて学ぶというのは、とても面白いですね。「信託クエスト」は、三菱UFJ信託銀行とのコラボですが、やはり三菱東京UFJ銀行の主催するMUFGアクセラレータプログラムに採択された一期生としてのメリットや苦労などもあるのでしょうか?

江尻氏:新しいイノベーションとして、エンタメゲームを金融機関とコラボできたのはとても有り難いです。その一方、MUFGグループは、銀行、カード、リース、証券、投資信託などたくさんの会社があり、アイデアがたくさん出すぎで、絞り込むのが大変ということが悩みですね(笑)。

「必要ない情報は預からない」姿勢でシンプルにFintech技術や安全性に取り組む

吹田:Fintechでは、テクノロジーの要素が注目されていると思いますが、どの技術に興味を強く感じ、どのように活かそうと思っているのでしょうか?

江尻氏:実は、Fintechは難しいものが多いと思っています。それらが浸透するには、使う側のリテラシーを高めることが必要で、「FP向け勉強会」を開催しているのも、その突破口を開こうと思ってです。

吹田:なるほど。FPもある意味、お客様と金融をつなぐ役割ですからね。江尻さんが意識していることは何でしょうか?

江尻氏:「どうわかりやすくしてあげられるのか?」ということです。いろんなFintech、例えば、仮想通貨や銀行とAPI(※)でつながる口座の管理なども含めて、組み合わせながら、いかに簡単に提供できるか?ということですね。 ※API:Application Programming Interfaceの略。IT用語で、あるソフトウェアから別のソフトウェアの機能を呼び出して利用するための接続仕様のこと。家計簿アプリ事業者がユーザーからIDとパスワードを預かる必要がなくなるため、安全性が高まると言われる。

吹田:「技術ありきではなく、使いやすさ第一」としているところが江尻さんらしいと思います。セキュリティ面についても、どうお考えですか?技術進歩によって、アプリにもいろいろな機能がつくようになり、個人情報の扱いを気にする方も増えているので。

江尻氏:まず、「必要ない情報は預からない」姿勢でいます。だから、登録は不要、個人情報も預からない。

家計簿データはどこに保存されているかというと、これはユーザーのスマホ内のメモリで保存されています。ただ、写真画像はメモリを占有するので、レシートや買ったものなど写真は3枚までです。それでは足りない、バックアップ機能も欲しいという人には、オプションで登録をしてもらったうえで、情報を暗号化してクラウド上に同期させています。今後、情報セキュリティ基準にも対応していきます。

最後に江尻さんのFintech分野での役割や、人生の目標についてお聞かせください

吹田:これからの日本のFintech企業の1社長として、世界の金融業界や世界の人たちのためにも、発揮できる役目は何だと思いますか?

smartidea04江尻氏:やはり今はまだ、一般の方のおカネの知識・リテラシーを高めるために、おカネについて話しをするところ、聞きたいことを聞ける場が少ないので、そこをつなげるのが役目と思っています。ユーザー一人一人が家計の状態からつながって理解を深め、自分にとって必要なものがわかる場を提供したいと思います。

吹田:江尻さんは、3人のお子さんがいらっしゃるんですよね。ご自身の人生、プライベートでもどんな目標をお持ちですか?

江尻氏:15歳10歳8歳の子がいる5人家族ですから、まさにライフプランニングも家計管理も真最中です(笑)。自分自身、小さい頃に使えるおカネが少なくて辛かった経験があるので、「心の貧乏をなくす」ことが目標ですね。

吹田:「心の」とおっしゃるのは、金額ではないということですか?

江尻氏:その通りです。金額でいくらではなく、相対的なもの、本人がどう思っているか?が大事です。金額ではなく心で感じ、幸せにつながることにおカネを使うこと。おカネに対する不安もなくなって人生をプラスに転換していけることですね。

吹田:まさにビジネスでも家庭でも、公私ともに同じ道を進んでいるからこその強さがあると思いました。今日は本当に有難うございました。

編集部の帰り道

本当に朗らかで、怒鳴ることなんてないように見える江尻さん。自社で、日本にいるスタッフのみでなく、ベトナムの人ともまるで家族のように仲よく仕事をしている姿は、新しい働き方を体現しているとさえ感じる。

家計簿アプリは一見、広がりがないものかと思っていたが、日本文化を世界に広げ、日々のおカネの使い方を幸せに変えていくという理念はすばらしく、世界展開も楽しみだ。

技術ありきではなく、いかに使いやすくシンプルにスマートにしていくか?を追求していく信念の先に、これから何が出てくるか一層期待したい。

スポンサーリンク