第4回仮想通貨×デビットカードのハイブリッド戦略が期待される 「Wirex Limited(本社:英国ロンドン)」

掲載:2017年8月4日

伝統的な通貨とビットコインを結合する最初の金融プラットフォームを立ち上げたWirex Limited(以下、Wirex社)。海外送金や複数の通貨の両替、そしてビットコインをデビットカードとして利用できるサービスも展開し、既に世界130ヶ国、100万人以上のユーザーがいます。Wirex社は、2017年3月にSBIインベストメント株式会社の運営する「FinTechファンド」より出資を受け、今後の日本での展開が期待されています。 今回、ちょうど来日された、同社のCEO、Pavel Matveev氏にお話を伺いました。吹田 朝子・保険ジャーナル編集部)

対応してくれた人
Wirex Limited
CEO

Pavel Matveev氏 (通訳:Hiro SHINOHARA)

新しい技術は既に受け入れられている技術との連携が必要。そこでカードを選んだ

吹田:なぜ、2014年にビットコインのカード会社をスタートさせたのでしょうか?

Pavel Matveev氏:3年前、当初、ビットコインはIT系のもので、その技術は様々な分野に応用できるけれども、まだまだオタク世界のものでした。当時は、ビットコインの購入や送金のプロセス自体が非常に難しかったからです。

そこで、もっと簡単にする必要があると思い、まずは”easy-coin”を略した『e-coin』という名称でスタートさせました。カードにしたのは、「みんなが信用できる何かとビットコインを連携させる必要がある」と考えた結果、それがカードだと思ったからです。

カードは日常生活に溶け込んでいますし、新しい技術を説明するよりも、新しいカードにしたほうが分かりやすいでしょう。多くの人に仮想通貨を使ってもらいたいというのが本音ですが、普通にやると時間がかかってしまう。しかし、カードという形を取ることで、取引所だけでやるよりも、はるかに早く浸透するのではないかと思いました。これがビットコインのカード会社をスタートさせた動機です。

吹田:このカードを通じて、どのような世界の実現を目指しているのですか?

Pavel Matveev氏:まずは、ビットコインをよりシンプルにし、仮想通貨が日常生活に溶け込み、人々の毎日の生活がもっと暮らしやすくなることを目的としています。

普通の人が普通にカードを使えるように、すべての人がどこでも当たり前に仮想通貨を使える社会を作りたい。それが私たちの目指す世界です。

吹田:御社は、「ハイブリッド・パーソナル・バンキング・ソリューション」と謳っていますが、そのハイブリッドとは何を意味しているのですか?

Pavel Matveev氏:自動車のハイブリッドカーのように、旧世代のクレジットカードで確立された技術と、新しい仮想通貨の技術の両方を一緒に統合しているという意味です。

様々なサービスを展開してきたなかで、一番、力を投入してきたのは?

吹田:創業されてから、以下のようにたくさんのサービスや機能を充実させて来られましたが、最も力を入れてきたことは何でしょうか?

<提供してきた主なサービスや機能>
  • 最初のビットコインデビットカード(無料)をリリース
  • iOSとAndroid用アプリをリリース
  • アプリ上で仮想通貨を米ドルやユーロ、英ポンドへ交換可能
  • 世界中のVISA/MasterのATM、加盟店等のネットワークで利用可能
  • Shapeshift社とパートナーを組み、ビットコイン以外に、イーサリアム、Monero、ライトコインなど35種類ものアルトコインの利用が可能

Pavel Matveev氏:一番最初の命題は、パートナーとなる銀行を見つけることでした。デビットカードを発行し、決済をしたらWirexカードの口座から引き落としをできるように取引できる銀行を探すのは至難の業。まだ法規制もないなか、伝統的な銀行と取引するのは大変でしたが、最近になってようやく間違っていなかったと認められつつあります。

2番目は、クラウドファンディングサイト『 Bnk To The Future』でクラウドファンディングを行ったこと。そのときに『e-coin』という名前から『Wirex』へとブランドを作り変えました。

そして、最新のチャレンジは、シリーズA(※起業したばかりのスタートアップ企業に対してなされる投資)での資金調達です。日本での市場拡大に向けて日本の投資家とパートナーを探しています。

吹田:SBIのFintech-fund から300万ドルを調達されたのですよね。

Pavel Matveev氏:それは、ただのお金だけでなく、ちょうど、スマートマネー(先見の明がある投資家の資金)と呼ぶように、ビジネスパートナーとして非常に重要だと思っています。金融サービス事業を提供するSBIグループはまさに、銀行も持っているので、その提携の意味は大きいです。

日本における今後の事業プランは?

吹田:今後、日本ではどのように業務展開される予定ですか?

P6270134hPavel Matveev氏:日本は最大で最も伸び率が高いマーケットです。その理由のひとつに、モバイルバンキングがまだまだ未発達だから、チャンスが大きいという点があります。

日本人にとってもっと使いやすくなるよう、よりよい銀行の機能を追加していきたいとローンチを考えています。日本語対応、日本円の対応など、日本にローカライズして日本人が使いやすいアプリにしていく予定です。

吹田:なるほど。ただ、日本は、現金流通残高が世界一高く、現金決済比率も非常に高いと言われます。

Pavel Matveev氏:それは興味深い。Wirexのユーザーで言うと、約70%がカードの状態で使っていますが、30%がATMで現金に変えています。日本では引出しニーズが多いというのも分かります。

吹田:さらに日本人は、銀行への信用度が非常に高く、法定通貨として円の預貯金志向もとても高いと思います。そうした傾向の国民に対して、どのようにナビゲートしていこうと思っていらっしゃいますか?

Pavel Matveev氏:新しい分野なので、特に教育という観点は大事だと思っています。ビットコインを持つということは、自分で銀行を持っているということ。「自分の持っているお金は自分で管理する」という視点での教育は、これからも必要になってくると考えています。

Wirexカードを具体的に生活に活かすには?その利便性は?

吹田:日本でより浸透させるためには、ビットコインの買い方から持ち方、使い方などの全体像が分かるとよいと思い、この図を用意しましたが、Wirexアプリでビットコインを買うこともできるのですか?

howto

Pavel Matveev氏:シンプルな形ですが、Wirexのアプリ上で円からその時のレートでビットコインを買うことができます。それは、たとえば、海外で空港の両替所で円を外貨に換えるのと同じイメージです。

吹田: なるほど。ビットコインの購入から保有、買い物の支払い、世界への送金という一連のアクションをWirexのアプリとカード1枚でできるということですね。

Pavel Matveev氏:その通りです。提携しているATMなら、Wirexカードを使って日本円で引き出すことも可能です。

吹田: もう一つ、私のケースですみません。以前、取引所で購入した仮想通貨(イーサリアム)をWirexに入金した際に、Wirexの画面で確認できるまで、丸1日かかっていました。これは通常通りなのでしょうか?

Pavel Matveev氏:イーサリアム等のアルトコイン(代替のコイン)の場合、『Shapeshift』という仮想通貨を変換してくれるサービスにつないでおり、そこを経由している分、時間がかかっています。ですから、手元のWalletではリアルタイムで反映されず、タイムラグが生じてしまうのです。

特に最近は、ICO(新規仮想通貨公開Initial Coin Offering)によって、多額の仮想通貨が短時間に流通しているので、ブロックチェーン全体が重たくなっています。まさに、交通渋滞を引き起こしているように、トランザクション処理のスピードが遅くなっているのが現状です。

今後のさらなる進歩に向けた課題・テーマとは?

吹田:今後の一層の業務展開に向けて、どんな課題や取り組むべきテーマがあると思われますか?

Pavel Matveev氏:新しいマーケットで展開する際に、各エリアの法規制や、個人情報の取扱い、住所の証明書の取り方など管理方法がそれぞれ異なってくるので、それをクリアしていくことが今後の大きな課題です。

ただ、日本は法規制が世界で一番整っているので、非常にやりやすいほうです。

吹田:日本が世界で一番整っているのですね? 本国のイギリスではなく?

Pavel Matveev氏:取引所の規制はNYが最初につくりましたが、決済手段の一つとして、国家レベルでビットコインなどの仮想通貨を認めたのは、日本が世界で最初です。ロンドンは世界の金融市場の中心とも言われていますが、銀行が多く、銀行の力が非常に強い。むしろ、日本のほうがやりやすいです。

吹田:なるほど。Wirexデビットカードは、既に130か国で利用されているそうですが、どの国のユーザーが一番多いのでしょうか?

Pavel Matveev氏:日本です。カードの所有数も決済金額も日本が一番多いです。登録されているユーザー数は、ヨーロッパエリアが多いけれども、2016年の11月頃から日本人のユーザーが急増しています。

ちなみに、日本では、90%がプラスティックカードを持ちたがっていますが、ヨーロッパでは多くがバーチャルカードを求めています。日本人は実体のあるカードを欲しがるようです(笑)。

仮想通貨の法整備が世界で一番進んでいる日本の読者へのメッセージ

吹田:最後に、現在ご利用の顧客、これからの未来の顧客に、メッセージをお願いします。

P6270172hPavel Matveev氏:日本は私たちにとって一番大切なマーケットです。日本はフィンテックが進み、さらに政府の支援もあって、特に仮想通貨の法規制がいち早く整ってきました。その日本で、仮想通貨を使いやすくし、日常生活に浸透させて、シンプルかつ当たり前にみんなが使えるようにしていきたいです。それを提供するのが我々のミッションなので。

ちなみに、新しく発行するカードは、色で分かる通り、女性のお客様を意識しています。女性が好みそうな美しい色でしょう。

編集部の帰り道

世界からみて、仮想通貨に関しては日本が一番、法整備が進んているという点、そして実際にWirexカード利用者も最も多いというのは驚いた。現時点では、Webサイトやアプリの機能解説について、まだ英語から日本語に翻訳されたバージョンなので、なかなか理解が進まないことも多いと思われる。しかし、日本のマーケットにこんなに魅力を感じて、成長を期待してくれている分、これからの進化を一緒に期待もしたいし、そのサービスの充実に合わせてカードを利用してみる価値は大きいと思った。

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