がん保険について調べていると必ず目にする「上皮内がん」という言葉。「がんの軽いもの」くらいの理解をしている人が多いと思いますが、実際はどうなのでしょうか。ここでは「上皮内がん」について、詳しく見ていきます。
「上皮内がん」は「軽いがん」なのか?
がん保険において、そもそも「がん」とは何か、ということは保険商品の約款に定義されています。と言っても、独自に定義しているわけではなく、WHOにより国際的に統一された疾病分類である「ICD」の基準が使用されています。
この中で、腫瘍は「良性新生物」「性質不詳の新生物」「上皮内新生物」「悪性新生物」の4つに大きく分類されており、多くの保険の約款では、このうち「悪性新生物」が「がん」であり、「上皮内新生物」が「上皮内がん」だということになっています。
上皮内新生物も悪性新生物のひとつではありますが、内臓の表面を覆っている粘膜の一部である上皮内にでき、上皮の底にあたる基底膜という部分をこえないものを指します。ただし、例外として、大腸の場合だけ、基底膜を超えても粘膜下層に達していないものは、上皮内新生物と分類することになっています。
悪性新生物は、浸潤・転移を起こして、がんが他の組織に広がっていく性質があります。
一方、上皮内新生物の段階では基本的に転移をきたす能力は持っていないことが多いです。ただし、わずかながら浸潤する場合もあるので、見つかれば取り除きますが、悪性新生物に比べると治療は比較的楽な病気だといえます。また、上皮内新生物は完全に取り除くことができたなら、再発することは比較的少ないのも特徴です。
がん保険の上皮内がんの保障は?
では、がん保険では、上皮内がんをどのように扱っているでしょうか。これは保険商品によって異なっており、
- 悪性新生物とまったく同等に保障している
- 悪性新生物と差をつけて保障している(保障額が半額など)
- 保障していない
上記のいずれに対応が分かれています。
同等に保障してくれたほうがありがたい、と思ってしまいがちですが、上皮内がんは治療が比較的簡単で再発も少ない、ということを思い出してください。つまり、入院などの負担が少なく、治療費も安く済む可能性が高いのです。そうすると、悪性新生物の場合と同額の保障では余分に保障されてしまうということになりかねません。
保険で、一定の保障を得るためには、それだけの保険料を支払う必要があります。つまり上皮内がんも悪性新生物とまったく同等に保障している保険は、上皮内がんを保障していない保険より保険料が高くなっているはずですから、はたしてこの保障が適切かどうかは、よく考える必要があります。
上皮内がんは治療が比較的簡単と述べましたが、一部の乳がんでは、分類上は上皮内新生物であっても悪性新生物と同等の治療が必要な場合もあり、結果、治療費の負担も高額になります。そのため、女性は上皮内がんの保障も手厚くしておいたほうがいいとする意見もあります。
支払いトラブルにならないよう、「上皮内がん」の正しい理解を
上皮内がんの扱いは、保険商品によってまちまちであることに加え、加入者が上皮内がんのことをよく理解していないために、トラブルに至るケースもあるようです。
悪性新生物と上皮内新生物は、医学的には異なるものの、一般の人にはなかなか理解が難しい面もあります。医師からの説明を患者が正しく理解しない場合、支払われると思った給付金が支払われないといったことになりがちです。
がん保険は、保険そのもの仕組みに加え、ある程度の医学知識も必要になるという、ひとつの例だと言えます。