民間の医療保険は、医学・医療の進歩に合わせて年々新しくなっています。古い医療保険だと最新の治療実態に対応していない場合もあり、「せっかく医療保険に加入しているのに使えない!(給付条件を満たせない)」という事態が実際に起こっています。
……ということは、私たちは医療保険を乗り換え続けなければいけないのでしょうか? またそうだとすると、定期型と終身型のどちらがいいのでしょうか?
乗り換え時に注意したい「告知」という大敵
医療保険に限らず、保険に加入する場合は「健康状態等の告知(=診査)」が必要です。告知の内容によって引受け(加入)の可否が決まるのです。
新しい医療保険に乗り換えしたい!と思ったときに注意すべきが、この健康告知です。いくら本人が加入したいと思っても、健康状態によっては断られてしまうからです。
乗り換えを検討する際は、新しい医療保険に加入できなくても無保険にならないよう、告知(審査)の結果を待ってから古い保険契約を解約するほうが懸命でしょう。
終身型の医療保険が有利になる理由
以上を踏まえますと、定期型の医療保険はそれだけでリスキーです。定期型はその名のとおり、一定期間の保障ですので、契約期間満了後に新しい保険に加入できない場合は無保険状態になってしまいます。
一方、終身型の保険ですと、自ら解約しないかぎり契約は続きますので、定期型保険が抱える乗り換え時のリスクは回避できます。
保険料は「終身払」一択
あくまで「一定の期間で保険を乗り換え続けること」を前提に終身医療保険に加入する場合、次に考えなければならないのは、保険料の払込方法です。
一時払、終身払、短期払の3種類のうち、保険料を安くおさえることができるのは終身払です。一時払や短期払は、本来なら一生涯かけて払い込む分を期間短縮して納めるわけですから、トータルで見ると割引がきいているのですが、月々で計算すると保険料は割高になってしまいます。ここでは短いスパンでの乗り換えを前提としているため、1回あたりの保険料が最も少ない終身払が賢いでしょう。
ただし、意外にも保障内容に満足し、乗り換えしなかった場合は一生涯払い続けることになります。老後の収入が年金しか見込めない方には重い支出になるかもしれません(とはいえ、医療保険の保険料が払えるくらいのライフプランは立てておくべき、と思いますが)。
結論:乗り換え続けるなら終身型…しかし新商品に振り回されるのはナンセンス
医療保険が、医学の進歩や医療情勢、また消費者のニーズによって毎年新しくなっているのは事実です。たとえば、保険会社はかつて、手術給付金の対象となる手術を、自社が指定する88項目(約600種類)の手術に限定していました。これが現在では、公的医療保険制度が適用される手術(正確には「診療報酬点数表」に記載されている手術)を対象としている会社が多く、その数は約1,000種類あります。以前に比べると約400種類増えたということです。
入院給付金もそうです。かつては入院4日目からを給付対象としてたのを、今では1泊2日はもちろん、「日帰り入院からでもお支払い」と宣伝する保険会社も珍しくなくなりました。
ここでは、新商品が出ることで自分の保障内容が気になり、安心を買う意味でも乗り換えしつづけたい方を想定して話を展開した結果、「終身型の医療保険の終身払」と結論付けましたが、実際にはナンセンスだと思います。
短期間でドラスティックに変わることは稀ですし、新しくなるたびに乗り換えをしまくるのは適切とは言えないためです。保険見直しのタイミングは原則、ライフイベントやライフステージの更新などに行うなどで十分でしょう。
なかには賢く乗り換えしづづけている方もいるかもしれませんが、そのためには保険の最新情報にアンテナを張り巡らせる必要があり、簡単にできるものではありません。適切な情報を適切なタイミングで手に入れたいと考える一般的な方なら、そうした情報収集に長けたFP(ファイナンシャル・プランナー)などの相談者を近くに置くほうがよほど手っ取り早く、また正確です。
保険のことばかり気にしすぎて保険貧乏にならないためにも、医療保険の乗り換えは保険のプロに相談することをオススメします。