近年の報道を見ていると、高齢ドライバーが加害者となってしまう交通事故が増えているような印象を受けます。
しかし、最近の高齢ドライバーが以前に比べて急に事故を起こしはじめた、などという不自然なことがあるでしょうか?
実は高齢ドライバーの事故率自体は高くはない?
そこで、警察庁交通局『平成28年における交通事故の発生状況』にまとめれた「原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり交通事故件数の推移」を見てみると、高齢ドライバーが特に事故が多いとは見て取れません。事故率としては 16~ 19歳および 20~ 24歳が突出しており、運転者層全体で見ると高齢ドライバーの事故率はむしろ低いものになっています。
高齢ドライバーの事故率は高いどころか低いことが真実なのに、なぜ今、高齢ドライバーによる事故が増えているかのような印象になっているのでしょうか?
一つは、やはりイメージの問題があると思います。加齢による視力・聴力など身体能力の衰えはもちろん、反射神経・運動能力・判断力の低下等が出てくるのは事実のため、”高齢ドライバーの運転は危険なもの”というイメージは拭えません。
また、昨今の少子高齢化により、高度経済成長期から近年まで車社会の中心となっていたドライバー全体の年齢が高齢化し、ドライバー全体に占める高齢者の割合が高くなっていることも大きいでしょう。ライフスタイルの多様化や若者の車離れなども相まって、さらに車を運転している人の多くが高齢者とする割合を押し上げています。
先に示した参考データは、『原付以上運転者(第 1当事者)の年齢層別免許保有者 10万人当たり交通事故件数の推移』という点で、運転者全体としての高齢ドライバーの増加がデータに反映されていないところがポイントです。
事故率自体は高くなくても、事故を起こすと重大事故に繋がる?
それでは、こちらのデータを見てみましょう。先ほどと違い、『ドライバー全体としての年齢層別交通事故件数の推移』を示したグラフです。
このグラフを見ると、 20代、 30代、 50代の件数が多く、やはり 70代以上の高齢者の運転が危険なものとは判断はできません。
若年層の死亡率の高さの理由は、運転技術自体の未熟さや、若さゆえの無謀運転もあるでしょう。一方、 70代以上の高齢ドライバーは、加齢による視力・聴力・反射神経、判断能力の衰えのほか、突如の体調不良も原因かと思われます。そう考えると、 高齢ドライバーの事故は軽度で回避することが困難な結果、重篤な死亡事故案件になってしまう傾向があるかもしれません。
特に、事故の原因が認知症等の加齢からきている場合は報道も過剰になり、「高齢ドライバーの事故が急速に多発している」かのような印象につながったと考えられます。
全体をとおして
少子高齢化は今後も続きます。ドライバーに占める高齢者の割合が増える限り、高齢ドライバーによる死亡事故が増えていくのは致し方のないことです。
高齢ドライバーの免許更新期間は短くする(=身体能力の衰え等を早期に発見できる仕組みづくり)、免許証そのものを返納してもらう(=それに代わる身分証明書を支給)など、国は安全対策を練っていくべきでしょう。自動運転の技術向上にも注目していきたいです。