超低金利政策の影響で学資保険の返戻率が下がっていくなか、「他に良い手段はないか」と探している子育て世帯も多いようです。そこで、少しリスクもあるけれど、教育資金を準備するのに有利な手段の候補として挙げられるのが、2016年から始まった「ジュニアNISA」ではないでしょうか。
ここでは、ジュニアNISAとはどのような制度で、どのようなメリット・デメリットがあるのかを説明します。
ジュニアNISAってどんな制度?
通常の「NISA」は、20歳以上の成人が年間120万円分までの株式投資や投資信託で得た値上がり益、配当金・分配金が非課税になる制度です。対してジュニアNISAは子ども用のNISA制度で、年間80万円分までの投資が対象となります。もちろん、小さな子どもが自分で投資をすることはできないでしょうから、実際には両親や祖父母などが代行することになります。
利用できる人 | 日本に住んでいる0歳から19歳の未成年 |
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口座開設可能数 | 1人1口座のみ(変更は不可) 金融機関を変更するにはこれまでの口座の廃止手続きが必要 |
非課税対象 | 株式・投資信託等への投資で得られる配当金・分配金や譲渡益 |
非課税投資枠 | 新規投資額で毎年80万円が上限 未使用枠を翌年以降に繰り越すことはできない |
非課税期間 | 最長5間 5年経過後に新たな非課税投資枠への移管保有が可能 |
投資可能期間 | 2016年~2023年 期間終了後も非課税のまま20歳まで保有することが可能 |
運用管理者 | 口座開設者(未成年者)の二親等以内の親族(両親・祖父母など) 親権者以外の場合は親権者の委任が必要 |
払い出し | 高校3年生(3月31日に18歳である年度)の12月31日までは原則としてお金を引き出せない 制限期間中に払い出しをすると口座開設時まで遡って課税 災害時などの例外あり |
ジュニアNISAの非課税期間は5年なので、毎年80万円まで非課税投資枠を作ることができ、5年で合計400万円までの投資を非課税とすることができます。5年の間に株などを売却することもできますが、売却代金は別の払い出し制限付き課税口座で管理され、18歳まではお金を引き出すことはできません。
株や投資信託を保有し続けて5年の期間が終了したらどうなるのかというと、新しい非課税投資枠を作れば、そこに移管(ロールオーバー)することができます。新たな非課税投資枠の上限は移管した株や投資信託も含めて80万円となります。
ただ、ジュニアNISA制度は2023年で終了することになっています。延長される可能性がないとは言えませんが、2024年以降は新しい非課税投資枠を作れないことも想定しておきましょう。
制度終了後は、新しい非課税投資枠を作れなくなっても、保有している株や投資信託は子どもが20歳になるまで、非課税で運用し続けることができます。売却することもできますが、18歳になるまでお金を引き出すことができないほか、新たな買い付けもできません。
ジュニアNISAのメリット・デメリット
ジュニア NISAのメリットは、なんといっても学資保険より高い運用益を期待できるということです。また、
「ボーナス時だけ積み立てたい」
「お祝いでお金を貰ったら、その分だけ多く積み立てたい」
「何か大きな出費があって家計が苦しいときは積立額を減らしたい」
などというフレックスな積立ても可能です。少額でも利用できるので、学資保険に加入したうえで、家計に余裕がある時にだけジュニア NISA口座で投資することも可能です。
また、ジュニアNISAは年間80万円までと決まっているので、他に年間30万円以上の贈与をしなければ、ジュニアNISA口座で祖父母が孫のために積み立てをしても贈与税はかかりません。相続対策として祖父母から孫へ計画的に贈与したいということなら、ジュニアNISAを活用してもいいでしょう。
デメリットは、株や投資信託に投資をするのですから、元本割れをする可能性があることです。たまたま子どもの進学時期が経済状況の悪い時期と重なって、元本割れしていると困ってしまいます。子どもの進学を先延ばしにするわけにはいきません。それだけに堅実な投資対象を慎重に選ぶ必要があります。
以上から、これまで投資経験がなく、投資が苦手という人には、ジュニアNISAはハードルが高いかもしれません。
ジュニアNISAを始めるには
ジュニアNISAを始めるには、金融機関に子ども名義のNISA口座を作ることから始めます。口座開設は以下のような流れとなります。
- 金融機関を選び、ジュニアNISA口座開設書類を入手 →
- 金融機関に書類を提出する(マイナンバーが必要) →
- 金融機関から税務署にジュニアNISA口座開設申請 →
- 申請結果の連絡が金融機関から届く →
- ジュニアNISA口座開設完了 →
- ジュニアNISA口座での取引開始
NISA口座が開設されると、他の金融機関に替えることができないので、金融機関は慎重に選びましょう。選ぶ際のポイントを挙げると……
- 手数料
- 相談窓口があるか
- 取り扱っている商品の内容
たとえ値上がり益や配当金・分配金が非課税になっても、手数料が多くかかるのでは旨味が減ってしまいます。手数料は一般にネット系の証券会社が有利ですが、投資する商品を自分で選べるかも大事なポイントになります。
自分で検討して選べるのであれば、ネット系でよいのですが、投資する商品を相談して決めたいのなら、手数料が高めでも最寄りの店舗に相談窓口がある金融機関が良いかもしれません。
また、それぞれの金融機関で取り扱う商品が違うので、たとえば株に投資したいという場合には、証券会社に候補が限られてきます。それぞれの家庭の事情によっておススメの金融機関は違ってきますので、じっくり検討して選びましょう。
ちなみに...
NISA制度には、一般NISA、ジュニアNISA以外にも「つみたてNISA」の制度があります。20歳以上が対象となりますが、年間40万円まで最長20年間の積立てが、2037年まで非課税対象となります。
もし、両親どちらかが「NISA」を利用していないようなら、学資資金積立目的で、「つみたてNISA」を利用するという手段もあります。対象となる商品は長期投資に適した投資信託に限られるので、投資に慣れていない人も比較的始めやすい制度となっています。