がんは日本人の2人に1人がかかる病気です。しかも日本人の死亡原因第1位ということですから、がんになった場合の備えはしっかり検討しておきたいものです。
ただ、がんのなかには女性特有のがんもあります。乳がん、子宮がん、卵巣がんと、男性より心配しなければいけないがんの種類は多いのです。
ということは、女性は男性よりがんに対する備えを多くしなければならない、ということなのでしょうか。
がんになる確率(罹患率)は男女でどう違う?
国立がん研究センターの統計(2013年)によれば、下の図のようにがんになる人の数は50代半ばまでは女性の方が多いのですが、50代後半からは男性の数が急激に増加します。生涯での罹患率は男性が62%であるのに対し女性は46%ですから、男性の方が罹患率は高いのです。
ですから、決して女性の方が男性よりがんになりやすいということはありません。がんは男性にとっても女性にとっても同じように怖い病気です。
がんにかかる治療費は男女でどう違う?
がん治療費に男女差があるかも比べてみましょう。下の表は、厚生労働省が医療費を調査した結果を基に健康保険で3割負担となった金額をまとめたものです。
がんの治療費には健康保険の対象にならないものもありますし、入院時の差額ベッド料金や食事代などは含まれていないので、これでがんの治療費すべてを捉えているのではないのですが、男女別、がんの部位別に細かい統計が取られているので比較してみましょう。
男性 | 女性 | |||||
入院 | 入院外 | 入院 | 入院外 | |||
日数 | 医療費 (円) | 医療費 (円) | 日数 | 医療費 (円) | 医療費 (円) | |
胃がん | 12 | 185,676 | 10,848 | 13 | 184,213 | 8,696 |
結腸がん | 11 | 182,259 | 13,578 | 12 | 180,958 | 11,358 |
直腸S状結腸移行部及び直腸がん | 12 | 217,267 | 18,924 | 13 | 218,177 | 14,693 |
肝及び肝内胆管がん | 11 | 179,507 | 12,834 | 12 | 172,248 | 11,862 |
気管,気管支及び肺がん | 13 | 195,842 | 29,420 | 12 | 201,064 | 20,405 |
乳がん | 10 | 159,684 | 13,377 | 9 | 166,263 | 15,849 |
子宮がん | ― | ― | ― | 11 | 181,602 | 7,985 |
悪性リンパ腫 | 16 | 285,465 | 20,395 | 16 | 273,924 | 17,040 |
白血病 | 20 | 458,751 | 28,495 | 20 | 447,677 | 20,912 |
その他の悪性新生物 | 12 | 186,471 | 14,712 | 13 | 197,484 | 16,146 |
※厚生労働省「平成28年度医療費の動向調査」を基に筆者作成
男女別に見比べてみても、どちらかが特に多いということはないようです。男性にはない子宮がんの医療費が特に高いということもありません。ですから、治療費に男女差はないと言っていいでしょう。罹患率でも治療費でも男女差がないということは、女性だからといって特別ながん予防やがん保険は必要ないと考えることができます。
ただし、この表に入らない女性特有の費用として、乳がんで手術した後の、乳房再建術や抗がん剤治療が長引いて髪が薄くなってしまった場合のウィッグにかかる費用が考えられます。
女性用のがん保険に入った方がいい?
乳がんの乳房再建術やウィッグなど女性特有の費用に備えるためには、女性用のがん保険で備えた方が良いという考え方もあります。女性用のがん保険で保障される病気の範囲や保障内容は、保険会社によってさまざまで、一概には言えませんが、一般のがん保険でがん診断一時金を多めにすることで対応しても良いのではないでしょうか。入院給付金や手術給付金は事前に受け取ることができませんが、診断給付金なら診断を受けた時点でまとまったお金を受け取ることができるので、最初にお金の心配をしなくて済みます。
それでも、母親や叔母が乳がんの手術をした後に辛そうだったのを見てきたなど、自分なりの理由があって女性用の保険に加入したいと考えるなら、加入することをお勧めします。どのような保障が良いかはそれぞれの事情によって違います。正解はひとつではありません。
ちなみに……
日本人女性に最も多いのは乳がんで、生涯罹患率は9%ということです(国立がん研究センター調べ)。ただ、乳がんは自分で触診できる数少ないがんでもあります。定期的にチェックして早期発見できれば治る確率も上がります。
がんになった場合の経済的備えを検討するのはもちろんのこと、乳がんに限らず、定期的に検診を受けて早期発見に努めることも、忘れず心がけたいものです。