ネット生保って本当に安いの?メリット・デメリット

最近、いわゆるネット生保の広告をよく見かけます。「ネット生保」とは、要はインターネットでの通販のみで保険を販売している保険会社ということです。

ネット生保の特徴はなんといっても保険料の安さ。

入る側としては安いに越したことはないと思うのですが、なにかデメリットはないのでしょうか。また、そもそもネット生保は本当に安いと言えるのでしょうか。

目次

ネット生保の安さの理由は?

保険の料金には、保障を準備するための原資だけでなく、保険会社の経費ももちろん含まれています。保険会社も企業には違いありませんから、保険を販売することで利益を確保する必要もあります。

保険金準備のための保険料を「純保険料」、保険会社の経費になる部分を「付加保険料」と呼んで区別することができます。加入者が支払う保険料は「純保険料」と「付加保険料」の合計になるわけですね。

純保険料部分は、同じ保障内容であれば、保険会社が違ってもだいたい似通ってきます。対して、付加保険料をいくらにするかは各保険会社に任されています。そのため、保険料の差はほぼ付加保険料部分で出てくると言えるのです。

ネット生保の保険料が安いと言われるのは、一般の保険会社に比べて、付加保険料部分が少ないからだとされています。

保険会社の経費の中で、もっとも多くを占めるのが、やはり人件費。

保険の販売と言えば、営業担当の人が職場を訪ねてきたり、個別にプランを作成して相談に乗ってくれたりするイメージがあると思います。もともと個人性が高い商品である保険の販売では、この人的なコンサルティングに各社がコストを注いでいました。

対して、ネット生保では、

商品の内容をシンプルなものにする

シンプルなのでWebサイトやパンフレットだけで十分理解してもらえる

そのため、コンサルティングをする営業担当を用意しなくていい

販売はネット通販で行い、事務手続も簡単に

という、販売のフローを変えることで、大幅なコストの削減を行いました。

そのため、付加保険料を大きく下げることができ、結果として安い保険料が実現しました。これがネット生保の安さのしくみです。

ネット生保がつねに最安ではない場合がある

では実際に値段を見てみましょう。ネット生保と一般生保を2社ずつ、30歳男性が保険金1,000万円で10年間の定期保険を契約した場合の保険料で見積もってみました。

ちなみに、ネット生保は当然ながら、Webサイトで保険料をすぐに見積もることができます。外資系の保険会社の多くもできるようになっていますが、大手の国内系保険会社では、個別に問い合わせないと見積額を調べることができません。おそらくですが、価格だけではネット生保の安さに対抗できないため、値段だけで比較されるのを避け、コンサルティング力で勝負していこうとしているのだと思われます。

保険会社月額保険料
ネット生保A社1,328円
ネット生保B社1,530円
一般生保C社1,830円
一般生保D社2,380円

さて、何社か比べてみた結果は上記のとおり。たしかにネット生保のほうが安いです。ただ、比較的それに迫る勢いの価格まで下げてきている一般生保もありました。最近は、ネット生保が安いというイメージが広がっているため、既存の保険会社もできるだけの努力をしているようです。

それだけではありません。最近の保険商品では、「健康体割引」などと呼ばれる、死亡・病気のリスクが低い人は保険料を安くしてくれるサービスが見受けられます。

健康体割引が適用されるためには、喫煙習慣がないとか、身長体重のバランスが一定範囲内であるとか、条件が設けられています。この条件に当てはまり、割引が受けられさえすれば、ネット生保よりも安い料金で入れる保険が登場してきているのです。

以下に、いくつかの保険商品で、健康体割引にあてはまるとどれくらい安くなるかを調べてみたものを示します。保障内容は先ほどと同じく30歳男性が保険金1,000万円で10年間の定期保険を契約した場合です。

保険会社月額保険料
割引なし割引あり
一般生保D社2,380円2,270円
一般生保E社2,290円1,140円
一般生保F社1,500円1,050円

各社とも1~5割程度は安くなっており、ネット生保より安くなりました。

このように、ネット生保はたしかに安いのですが、条件によっては最安ではないことがわかります。

ネット生保のデメリット「商品説明を自分で読んで理解しなくてはいけない」

さて、先に述べたように、ネット生保が常に最安とは言えないものの、水準として多くの保険会社より安いことは事実です。では値段を基準に考える場合、ネット生保から選べばそれでいいのでしょうか?

たしかに、金額だけなら、ネット生保から選ぶのは有効な選び方です。ですが、保険は、安いほうが絶対に良いというものではありません。安くても、必要な保障が得られなければ意味がありませんので、単に1円でも安いほうが良いというより、自分が必要な保障が少しでも安く手に入るものが、その人にとって良い保険なのです。

そう考えた時、その保険が自分に合ったものかどうかを、きちんと見極める必要が出てきます。商品内容を理解して選ぶことはもちろん、そもそも、自分にはどんな保障が必要なのかを判断することが出発点。

その結果、ネット生保の商品でいいとなれば、もちろんそれでいいのですが、一般の保険会社のように、じっくり相談に乗ってくれる担当の人がいないと、保険の知識がまったく人にとっては、これでいいのかわからないということもあるかもしれません。

ネット生保のデメリットは、この、

商品説明を自分で読んで理解しなくてはいけない

という点に尽きると言えます。

逆に言えば、ネット生保は「自分一人で保険を選べる人向け」の商品なのです。

また、一般の保険会社では、営業担当が会って確認する健康状態の告知などを、ネット生保では、健康診断書を郵送するとか、ネット上の簡単な告知で済ませるといった形になります。前者は意外と面倒ですし、後者は簡単なぶん、審査がやや厳しいという話も耳にします(過去に簡単な手術を受けただけで入れなかったという人がいるという情報がありました)。

つまり、ネットで簡単に申し込めそうなネット生保は、実は案外、簡単ではないこともあるのです。むしろ、営業担当と会ってその日に契約もできる一般の生保のほうが、かえってスピーディーな場合さえあります。

まとめ:進路別かかる費用の総額は?

ここまでの内容も含めて、あらためてネット生保のメリット・デメリットを考えてみますと、次のようなことが言えます。

メリット・一般的に、安い(ただし条件によっては最安ではない)
・商品がシンプルで理解しやすい
・ネットですぐに申し込めて便利(場合によっては時間がかかることも)
デメリット・いろいろ相談しながら保険選びをしたい人には不向き(細かくカスタマイズするような商品ではないことが多い)
・ネット上の告知だけだと審査が厳しいことがある

以上を踏まえて、安いからという理由だけでネット生保第一に考えるのは早計と言えます。

特に、健康体割引が適用される人の選択肢はネット生保には限りません。幅広く、見積もりを比べてみましょう。

そして、自分一人できちんと保険を理解する自信がない人にはあまり向きません。また、手続きもネット生保がいちばん早いとは言えないことにも注意して下さい。

ネット生保がいちばん良いとも、と単純に考えることなく、ネット生保の特徴を理解して、選択肢のひとつに組み込むスタンスが大切です。

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