日本は公的な医療費支援制度が充実しているおかげで、民間医療保険の必要性を疑問視する声も少なくありません。
最も身近にあるのは健康保険制度。保険適用内の診療であれば、最低でも治療費の7割は国が肩代わりしてくれます。
区分 | 自己負担額 | |
---|---|---|
義務教育就学前(※1) | 2割 | |
義務教育後~69歳 | 3割 | |
70歳~75歳未満 | 現役並所得者(※2) | 3割 |
それ以外 | 2割 | |
75歳以上 | 現役並所得者(※2) | 3割 |
それ以外 | 1割 |
※1:6歳に達する日以後の最初の3月31日以前
※2:標準報酬月額28万円以上。ただし単身世帯で年収383万円、夫婦世帯で520万円未満である場合は除く
青少年に特化した医療費支援制度もあります。各都道府県が実施する「子ども医療費助成制度」では、子どもにかかる医療費が無料になり、一部では18歳未満にまで対象を拡げている地域もあります。
さらに極めつけは高額療養費制度。簡単にいえば、医療費の“払い過ぎ”に制限をかけてくれる制度で、月初から月末の1ヵ月間にかかった医療費が上限額をオーバーすれば、越えた分の差額が払い戻されます。上限額は年齢や所得によって異なりますが、70歳未満の一般所得者なら、最大でも1ヵ月約9万円程度になります。(※詳細は医療費の自己負担を大幅に軽減。高額療養費制度とはをご覧ください)
保険の効かない医療費もある
しかし、なかには健康保険や地域の制度を利用しても全額負担しなければならない費用もあります。代表的なのは特別療養環室・通称「差額ベッド代」。快適な療養環境を求めて患者が希望して入室する部屋で、個室、2人部屋、4人部屋とグレードによって分かれています。費用は病院側が独自に設定するのでバラつきがありますが、平均は5,000円~6,000円といったところ。(詳細は差額ベッド代に対する基礎知識をご覧ください)
また、先進医療や高度医療といって、保険診療として認められていない(正確には対象とするか検討中)の医療技術を受けると、そこにかかる費用は全額自己負担になります。先進医療を受ける確率は低いとされているものの、200万円~300万円もする高額医療もあり、万一、このような治療を受けるとなると相当の負担になるのは言うまでもありません。(先進医療についての詳細は人気の先進医療特約は本当に必要なのか?で詳しく解説しています)
結局、入院すると自己負担額はどれくらいかかるの?
保険が適用される診療、効かない診療が混在していることはわかりましたが、では実際のところ、入院するといくらぐらいのお金が必要になるのでしょうか。
上の円グラフは、生命保険文化センターが調査した、直近の過去5年間の入院でかかった費用をまとめたものです。平均で22.1万円。平成25年度版の同調査が22.7万円だったので、多少下がっています。ちなみに、自己負担額の総額を入院日数で割った1日あたりの自己負担額は1万9,800円と、こちらも前回調査の2万1,000円よりも下がっています。高額療養費制度を利用しなかった人も含まれているため、利用率が100%ならもう少し低い金額になっていたかもしれません。
医療費以外にかかるお金も想定しよう
22.1万円を高額と感じるかどうかは個人の価値観次第ですが、一般的な感覚でいえば高額といっていいでしょう。貯蓄のない人にとっては特に厳しく、傷病手当金のない自営業者ならその間の収入が完全に途絶えてしまいます。ローンの返済が残っている世帯はその支払いもキツくなるでしょうし、シングルマザーなどの場合で、幼い子どもを預かってくれる親族や友人もない場合、その間の施設費なども必要になってきます。