自転車保険は、第三者の身体やモノを傷つけてしまった際の損害賠償金をカバーする個人賠償責任保険と、自分の怪我の治療費をカバーする傷害保険(正確には交通事故傷害保険)の2つで構成されているものがほとんどですが、このなかに盗難保険が含まれていないのはなぜでしょうか?
自転車事故よりも自転車の盗難に遭う確率の方がはるかに高そうですし、需要もありそうなのですが、各社が自転車保険を用意しないのにはシンプルな理由があります。
自転車の盗難は保険会社もお手上げ?!
自転車の盗難がどれくらい発生しているかご存知でしょうか。警察庁の資料によると、平成23年の自転車盗難の認知件数は337,569件。中期的な視点では徐々に減少しているものの、まだまだ高い件数で推移しています。
ただ、これはあくまで認知件数であり、実際には40~50万件は発生していると言われています。とすると、1日あたり1,000~1,500台もの自転車が盗まれていることになります。もっとも、被害時の状況として、盗難防止のための施錠がなされていなかったものが56.2%もあるので、持ち主に非がないとはいえない事件が半分以上という計算になりますが……。
既に想像がついた人も多いでしょうが、自転車保険が普及しない理由は、盗難件数が多過ぎて保険会社が運用しきれないためだと言えます。自転車ブームを背景に高額自転車の売上が伸びている昨今、その高級自転車の転売を狙った盗難事件も耳にするようになりました。そうしたケースに一つひとつ対応していては、保険という仕組みが成り立ちません。自転車保険がレアな理由にはこのような背景があります。
自転車盗難保険に使える代表的な補償制度
では、自転車の窃盗に為す術はないのかというと、そういう訳ではありません。自転車の盗難を補償してくれる保険や制度があり、万一に備えるならそうしたものを活用すべきだと思います。以下、代表的な補償制度を紹介します。
自転車防犯登録制度
自転車防犯登録は、「自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律」に基づいて行う義務化された制度であり、新しく自転車を購入したときは販売店から登録を求められます。
登録年月日、防犯登録番号、車体番号、所有者の住所・氏名・電話番号を登録すると「防犯登録証」(防犯登録ステッカー)を購入できるので(500円程度・各都道府県により異なる)、それを自転車に貼っておけばOKです。
したがって、わざわざ意識する必要はありませんが、通信販売やインターネットで購入した場合は、購入者が登録に必要なもの(※)を持参して「自転車防犯登録書」で所定の手続きをする必要があることから、なかには登録を済ませていない人もいるようです。人から自転車を譲り受けた場合でも再登録が必要なので、そうしたケースで未登録の人も見られます。
きちんと登録しておけば、登録情報から所有者を割り出すことができるので、実店舗で直接購入した以外のケースでも必ず済ませておきましょう。なお、防犯有効期間は約10年間で末梢されるため(都道府県により異なる)、期限が過ぎた人は忘れずに再登録してください。住所変更した場合も同様です。
■ 登録時に必要なもの
- 自転車本体
- 公的機関発行の身分証明書(運転免許証・健康保険証など)
- 外国国籍の方は外国人登録証明書
- 前所有者の登録カード(お客様控)または、譲渡証明書
- 登録料500円(非課税)
メーカーの盗難補償に加入する
自転車販売メーカーが独自に扱っている盗難補償を利用する方法もあります。ブリヂストンサイクル、パナソニック、ミヤタサイクルなどには最高3年間の盗難補償があり、万一盗難が起こった場合は購入車と同じ自転車または近似する自転車を割引で購入することが可能です。
ブリジストンサイクルを例に挙げると、1年補償で購入車またはモデルの近い自転車を標準販売価格の60%で、3年補償では3,150円で同条件の時点を手に入れることができます。無料で加入できるので手続きしておいて損はありません。
参考:ブリジストンの各種補償制度
//www.bscycle.co.jp/support/insurance/index.html
少額短期保険でカバーする
ジャパン少額短期保険株式会社が取り扱う「ちゃりぽ」は、自転車の購入後1ヵ月後以内の人を対象に5,000円~50万円までの盗難補償プランを販売しています。期間は1年満期か2年満期のどちらかで(途中のプラン変更・継続は不可)、1年満期の場合の保険料は自転車価格の7%。
ただし、施錠していない状態や、自転車放置禁止区域で盗まれた自転車については補償対象外なので注意してください。
参考:自転車盗難保険とあんしん保険の「ちゃりぽ」
//charipo.net/
家財保険を利用する
自転車と名の付く保険に入らなくても、火災保険加入者で家財保険を付帯している場合、自転車の盗難も「家財」と見なされ補償対象になることがあります。いわゆる「オールリスクタイプ」と呼ばれる保険のことで、消費者のニーズに応えるため保険会社がいろいろと補償内容を拡げているタイプの商品です。
しかし、盗難に遭ったときの保管条件(敷地内に停めている、屋根付き車庫限定など)が細かいことや、そもそも自転車を補償対象外としていることもあるため、盗難保険目的で付帯するなら確認が必要です。
保険も大切だが自己管理はさらに大切
以上、自転車の盗難について見てきましたが、やはりというか、他の保険に比べるといまいち頼りないものが多いという印象があります。「何もしないよりはしておいた方がいい」程度でしょうか。自転車の盗難は保険会社が手を出さないほどの領域ですから、仕方ないといえば仕方ありません。
ここは、自分のものは自分で守るという覚悟のもと、施錠を2重にしたり、頑丈なものに変えたりと、できるだけ窃盗犯に狙われないよう気をつけるしかないでしょう。先ほどの警察庁の資料では、半分以上が施錠していない状態で犯行に遭っているとの統計が出ていましたが、それでは盗んでくれと言っているも同然です。
ちょっとした自己管理で回避できることも多いので、面倒くさがらずに最低限の対策はしておきましょう。