車を買い換えるなどした場合は、保険の対象を新しい車に変更する手続きが必要です。これを車の「入れ替え」といいます。
自動車保険は1年ごとに更新している人が多いようですが、途中で車が変わる場合は、そのときに手続きをしなくてはなりません。
車を変えたら必ず「入れ替え」手続きが必要
入れ替えの手続きは決して難しいものではありません。保険会社に連絡をして、車が変わることを申し出て、新しい車の車検証(の控え)を提出するだけです(保険会社によって、別途、申請書類の記入などが必要な場合があります)。
処理の時間が必要ですので、連絡はなるべく早めに行いましょう。新しい車の情報と、納車の日程がわかっていなくてはいけないので、だいたいの納車予定がわかったらすぐ連絡するということでよいと思います。
車が変わるのですから、保険料も変わってしまいます。
納車の日をもって保険の契約内容が変更になったとみなされるので、日割りの計算で、超過/不足する保険料ぶんについては調整があります。超過分の受け取り、不足分の支払いに関しては、保険会社の担当者から説明を受けてください。
入れ替える車が、新車を購入した場合と、中古車を購入した場合とでは、特に手続きの違いはありません。
もし、入れ替えの手続きを忘れてしまうと、事故があったときに補償されないことになってしまいますので、必ず手続きは行いましょう。ただし、納車までに手続きができなかったとしても、買い換え後30日間は猶予期間があります。このことは「車両入れ替えにおける自動担保特約」という特約で定められています。30日を超えると、特約の効果がなく、補償がなくなってしまいますので、できるだけ早く手続きをしてください。
人から車を譲ってもらった場合は名義変更を先に行う
ディーラーから新車や中古車を買ったなら、車を入れ替えるだけですが、個人間で譲渡をした場合は、少し事情が変わってきます。と言っても、新しい車の情報を保険会社に伝えて入れ替えの手続きを行うことには変わりありません。
ただ、このときに、車の名義変更をきちんと行っておかなくてはならないという点に注意してください。
保険会社は、名義変更が行われたことをもって「納車」があったとみなします。保険会社に控えを提出する車検証の名義も、変更後の、自分のものである必要があります。
保険会社の入れ替えの手続きは簡単でも、車の名義変更は、実はそこそこ面倒です。車庫証明、印鑑証明、譲渡証明書、自動車農政証明書などの書類を集め(車庫証明は警察署、印鑑証明は役所など、入手できる場所が違うのも厄介です)、陸運局で手続きを行わなくてはなりません。
名義変更を終えていないと納車とみなされず、補償が効果を発揮しませんから、自分が譲り受けた車を運転したいと思う日までに、すべての手続きを終えられるよう、段取りをしておく必要があります。
親族間の譲渡では等級の引き継ぎも可能
親族間で車を譲渡した場合、等級の引き継ぎが可能です。高い等級を引き継ぐことで、保険料の面で有利になることもありますので、可能なら積極的に利用したいですね。ただし、等級の引き継ぎにはいくつかのルールがあります。
まず、等級の引き継ぎが可能なのは以下の4つのケースです。
- 配偶者間(内縁含む)での車の譲渡
- 同居の親族間での車の譲渡
- 個人事業主が法人化した際、個人から法人へ譲渡
- 上記の逆で、法人が解散して個人へ譲渡
後ろの2つは少しニュアンスが異なり、身近な例としては前の2つでしょう。ここでは、「同居している家族でなら、等級が引き継げる」という理解でOKでしょう。
親族であっても、同居していなければ引き継げないことに注意してください。親の車を子どもに譲る場合で、子どもが独立して引っ越すタイミングなどでは、行えないことになります。運転者範囲など、補償については、別居していても生計を共にしている(仕送りを受けている学生など)ときは範囲に含められますが、等級の引き継ぎではそれはできません。
また、等級の引き継ぎは、引き継ぎ元の等級が、引き継ぎ先より高い場合に行います。引き継いだことで等級が下がってしまうと、むしろ保険料が高くなるのですから引き継ぐ意味がありません。うっかりやってしまうことはないと思いますが、念のため、注意しておきましょう。
等級引き継ぎの流れは?
等級引継ぎの流れは次の手順で行います。
- 配偶者間(内縁含む)での車の譲渡
- 同居の親族間での車の譲渡
- 個人事業主が法人化した際、個人から法人へ譲渡
- 上記の逆で、法人が解散して個人へ譲渡
保険契約者(保険料を払う人)と記名被保険者(補償の対象になる人)は別々であることもあります。両方を変更しておくことを忘れないようにしましょう。
なお、車を譲り受ける側がすでに車を持っていて、この車が不要な場合は、譲渡後に廃車にしても構いません。この場合、
- 配偶者間(内縁含む)での車の譲渡
- 同居の親族間での車の譲渡
- 個人事業主が法人化した際、個人から法人へ譲渡
- 上記の逆で、法人が解散して個人へ譲渡
という流れになります。過程が増えましたが、基本的には同じです。
よくわからなくても、保険会社または代理店の担当者に相談すればやり方を教えてもらえますので、難しく思う必要はありません。せっかく等級が上がっている人は、ぜひ利用するようにしたいものです。
家族が車を買ったら、入れ替えを利用して保険料がお得に?
譲渡ではなく、家族が別の車を買った場合、その人が新たに自動車保険に入るだけのことですから、本来は入れ替え手続きなどは関係しません。ですが、前述の、「同居の親族なら等級の引き継ぎが可能」な仕組みを利用して、入れ替えを行ったほうがトクをする場合があります。
たとえば40歳の人が車に乗っている家で、20歳の息子が新たに車を購入して保険に入るといった場合などです。
40歳のお父さんは長年、車を運転していて、等級が上がっているとします。一方、息子さんは新たな契約ですから6等級からのスタートです。このとき、お父さんの保険契約を、息子さんの名義で息子さんが購入した新車と入れ替えます。すると、この契約はお父さんの等級を引き継げるため、息子さんが6等級で契約するより保険料が安くなるのです。
一方、お父さんはもとの車に、新しい保険をかけます。等級は6等級からのスタートになりますが、年齢が高いため、息子さんが6等級で入った場合より保険料が安くなります。全体として、一家の保険料が割安になるのです。
<入れ替えを行わない場合>
- お父さん 車A 14等級 →保険料は安い(等級が高いため)
- 息子さん 車B 6等級 →保険料は高い
<入れ換えを行った場合>
- お父さん 車A 6等級 →保険料は安い(年齢が高いため)
- 息子さん 車B 14等級 →保険料は安い(等級が高いため)
この方法は、同居している親族間のみ可能です。同居の親族でありさえすれば親子でなくても構いません。
お父さんに事故歴がある場合など、必ずしも絶対安くならないこともありますが、一度、調べてみる価値はありますので、保険会社に相談してみるとよいでしょう。
この方法は、家族で複数台の車を所持しているときで、そのうち1台を廃車することにした場合にも使えます。廃車した車の等級が、残る車よりも高かった場合、入れ替えの手続きをすることで等級が上がるため、保険料が安くなる可能性があるのです。
この場合、まず入れ替えの手続きを行った後、残す車の名義変更を行い、不要な車を廃車にします。廃車にする車の保険は解約で構いませんが、7等級以上ある場合は、今後、また車を買ったときに利用するために「中断」しておく手もあります。
なお、どの車も廃車にせず、新たに購入したわけでもない所有中の車同士の入れ替えはできません。