火災保険の基本的な仕組みについて解説します。
火災保険は損害保険の一種で、火災を中心とした、住まいが被った損害を補償してくれる保険です。仕組みとしては「保険の目的」と「補償の範囲」から構成されます。
保険の目的とは、その火災保険が、何にかけられる保険であるか、というもので、「建物」か「家財」、あるいはその両方ということになります。この点については、後で詳しく説明していきます。
補償の範囲とは、その火災保険が補償してくれる対象となるもののことです。火災保険と言っても、火災の被害だけをカバーするわけではなく、風災・水災といった自然災害的なものから、人に窓を割られた、など人的被害も含むことができます。補償の範囲については、以下の記事で詳しく解説していますので、参照してください。
ところで、「家財保険」という保険商品を目にしたことはないでしょうか。家財保険とは、その名のとおり、家財に発生する損害を補償する保険のことで、実はこれは「家財(のみ)を保険の目的とした火災保険」のことです。「住宅保険」や「住宅総合保険」などという名称も、補償の範囲が火災だけではないという意味で、火災保険を言い換えたものです。
このように、火災保険は、まったく違った呼び名で商品化されていることがあります。仕組みは同じですので、すべて「火災保険」として考えて問題ありません。
建物と家財は別に考える
火災保険に加入するときは、保険の目的として、「建物」「家財」「その両方」のいずれかを選択します。建物とは住まいである家そのもの。家財とは、その家の中にある家具やその他さまざまな品物のことです。建物と家財を別に考えるというのが、火災保険の仕組みで重要な点です。
たとえば火災で家が全焼し、建物も家財もすべて失われたとしても、「建物のみ」の保険に入っている場合は、失われた家財の損害は補償されませんし、「家財のみ」の保険に入っている場合は、その逆で、建物の損害は補償されません。
住まいが賃貸の場合、建物は自分のものではありませんから、建物の保険には入る必要がありません。ただし、自分の部屋が火元の場合、貸主に対して賠償責任を負ってしまうことがあるため、賃貸の場合は、自分の部屋の家財に火災保険をかけたうえで、貸主への損害賠償を補償する特約をつけるのが一般的です。
また、賃貸の建物オーナーは、自分が貸している建物に火災保険をかけますが、それぞれの部屋の中の家財は借主のものですから、オーナーは家財に保険はかけません。
戸建の持家に住んでいる人にとっては、建物も家財も自分のものなので、一般的には両方に保険をかけますが、あえてどちらか一方にすれば保険料を抑えることもできます。もっとも、火事になった場合に被る経済的リスクを考えると、保険料を抑えるために保険の目的を絞るのが現実的かどうかはよく検討する必要があります。
分譲マンションの場合は少し複雑で、建物はすべてが自分のものではありませんから必要ない……と思いきや、区分所有という形で、自分のものである部分(専有部分)にだけ建物の保険も必要、ということになります。エントランスやエレベーターといった、いわゆる共用部分は、オーナーや管理組合が保険をかけています。管理費のなかにすでに保険料が含まれていることが多いでしょう。
住まい方のパターンと、必要な保険の目的を整理すると以下のようになります。
住まい | 家財 | 建物 |
---|---|---|
持ち家(戸建) | 必要 | 必要 |
持ち家(集合住宅) | 必要 | 必要(専有部分のみ) |
賃貸 | 必要(貸主に対する賠償責任を補償する特約を付帯) | 不要 |
建物とみなされるもの・補償されない家財
ものによって、これは建物なのか家財なのか微妙なものもあります。たとえば、造り付けのキッチンや、庭に置いている設置型物置などは、建物の一部とも考えられそうですが、家財のような気もします。
一般的な火災保険では、以下に挙げるものは「建物」とみなしています。
- 門や塀、垣など
- 畳やふすまなどの建具
- 建物に取り付けてあるエアコン
- 建物に取り付けてある流し台・ガス代など
- 建物に付属している物置
これ以外のものは、原則として「家財」としてみなされます。ただし、家財であっても、火災保険の通常の補償対象にならないものや、補償のために特約が必要なものもあります。以下に挙げるものがそうです。
- 所定の金額以上に高価な貴金属や美術品など
- 現金や有価証券(株券など)
- 動物、植物
- データ、ソフトウェア、プログラムなど
- 家から持ち出していた家財
- 自動車
貴金属・美術品・骨董品など、30万円を超える資産価値があるよう品物は、通常の契約では補償されず、別に特約をつける必要があります(そのぶん保険料は上がります)。
自動車は火災保険では補償されません。自宅が火事になって車庫にあった自動車が損害を被っても、補償するためには自動車保険(車両保険)をかけておく必要があります。