生命保険や医療保険に加入する際、過去の傷病歴や現在の健康状態をありのまま告知する義務を負います。これを告知義務と呼びます。
告知義務に違反すると保険金を受け取れないばかりか、最悪の場合は契約解除となってしまうため、告知は正確かつ詳細に行いたいところ。しかし、軽い症状で少し病院にかかっただけなど、記憶に残っていない病歴もあるでしょう。
そうした、悪意のない告知漏れまで一律に”違反者”にされてしまうのでしょうか?
容疑者として調査されることになる
故意にしろ過失にしろ、事実と異なることを告知したことに間違いないため、告知義務違反として調査を受けるのは間違いないでしょう。傷病の種類や重さも関係ありません。告知をしなかった傷病と保険金を請求した傷病とに因果関係がない場合でも同じです。保険会社は、それが告知すべき内容だったかを調査するのです。
告知に値する内容だったと判断された場合、ルールに則って保険契約は解除。保険金が支払われるかどうかは告知漏れした傷病との因果関係によります。
ここで疑問なのは、では「告知に値する内容」とはどんな病歴なのか?ということです。
告知のし忘れでも契約者が守られる場合
告知義務違反は、契約者が「故意または重大な過失により事実を告げなかった場合」に適用されますが、これがどのように認定されるのかは非常に難しい話です。保険会社によっても判断が分かれるところですので、ここでは判例を分析した次の論文を参考に考えたいと思います。
【参考】告知義務違反における故意又は重過失に関する裁判例の分析と検討(PDF)
結論から言うと、次のような要素がそろっていれば告知義務違反にはならない可能性があります。
- 告知漏れした疾病が重大ではない
- 治療期間が短かった
- 治療が終了してから告知(契約)するまでの期間が近接していない
- 病名を告げられていないなど医師からの説明がなかった
告知のし忘れは「故意」ではなく「重大な過失」にあたるのですが、この定義は、「ほとんど故意と言っていいほど著しい注意欠如の状態」と解釈できます。「わずかな注意力があれば告知すべき事実を思い出せたはず」と見なされた場合、告知義務違反と判断されるということです。
そのうえで箇条書きで挙げた項目を眺めてみると……
- 告知漏れした疾病が重大ではない
→軽い治療歴を忘れることは誰にでもあり得る - 治療期間が短かった
→2~3回の通院などで完治した治療歴を忘れることも考えられる - 治療が終了してから告知(契約)するまでの期間が近接していない
→長い年月のせいで単純に忘れることもある - 病名を告げられていないなど医師からの説明がなかった
→そもそも病気だと認識していない場合、それを重要な事実だとは考えない
以上の理由から、こうしたケースで保険会社と争えば折れてくれる可能性が高いと考えれられます。
さいごに
もちろんですが、自分から争う姿勢を見せないと告知義務違反の方向で話が進められるかもしれません。違反を調べる調査員が一筋縄ではいかないケースもありますし、自分だけでは太刀打ちできそうにない場合、国民生活センターや生命保険協会などに相談するのもいいでしょう。