「医療費が払えない・・」そんな時に知っておきたい各種制度

大きな病気や事故で、入院や手術などの治療をしなければならなくなったら、当然たくさんのお金が必要になります。その金額が、思っていたよりも多く、手持ちのお金では足りない。このままではとても払えない。

今回はそんな、「医療費が払えない」という事態にそなえて、知っておくと頼りになる医療費支援の制度の数々を紹介していきます。

目次

1.高額療養費制度

まず、『高額療養費制度』というものを紹介します。

これはどういったものかというと、病院や薬局の窓口で払った金額が、一定の額を超えた場合に、その超えた分の金額を国が負担し、支給してくれる制度です。

当面の医療費用を用意するのはできるけれど、必ずあとで必要になるから、全部を持っていかれるのは辛い。少なくとも、必要な時期までに戻ってきてもらわないと困る。

そんな状況の人たちのために、この制度は存在しています。

そして下の表にあるのが、この制度を受けられる場合のひと月の医療費の支払い金額です。

<年齢・収入による一ヶ月の医療費負担上限一覧>

年齢層所得区分一ヶ月の負担上限額
70歳未満上位所得者(月収53万以上等)150,000円+(医療費-500,000円)×1%
一般80,100円+(医療費-267,000円)×1%
低所得者(住民税非課税の方)35,400円
70歳以上保険料負担が三割(現役並)44,400円(外来)
80,100円+(医療費-267,000円)×1%(入院等)
一般12,000円(外来)
44,400円(入院等)
低所得者
(所得額ゼロ、年金収入のみ等)
8,000円(外来)
15,000円(入院等)
低所得者(それ以外)8,000円(外来)
24,600円(入院等)

この制度のありがたいところは、ひとつの病院や医療機関だけでの合計以外にも、いくつかのパターンで合算して、上限を超えているかどうかの合計にすることができるところです。

病院をいくつか同時に利用している場合は、それらにかかった費用すべてを合計して計算されますし、同じ保険に入っているなら、同居・別居にかかわりなくひとつの世帯での合計として、上限を超えているかどうかが判断されます(これを『世帯合算』といいます)。

また、この制度を何度も利用している場合(12か月で3回以上が基準)、『多数回該当』と呼ばれるものが適用されて、さらに自己負担の上限がさがります。

<多数回該当適用後の自己負担額>

70歳以上保険料負担三割(現役並)44,400円
70歳未満上位所得者83,400円
一般44,400円
低所得者24,600円

※70歳以上のその他の区分の方々については多数回該当なし
この制度を申し込むには、加入している保険の機関に、申請書を送る必要があります。
※一例:全国健康保険協会・健康保険高額療養費支給申請書

病院の領収書など、必要な書類の添付を求められることがあるので、それらも忘れずに一緒に送りましょう。

申し込みが完了すると、3か月ほどで自己負担と実際に払った金額との差額が支給されます。か月もかかるのでは間に合わない、それでは意味がない、という方。または病院の窓口で払う金額を直接減らしたい、という人の場合にも、事前に保険の運営機関に申し込んで「所得区分」の認定証を発行してもらっておけば、病院で月々の上限以上の金額を払わずに済みます。

※参考:厚生労働省保険局 高額療養費制度を利用される皆さまへ

その他、上に載せた、厚生労働省の出している参考資料から、詳しい説明を見ることができます。

2.高額医療・高額介護合算療養費制度

高額療養費制度が毎月ごとの負担から計算されるものなら、1年を通しての負担の合計から計算されるのがこの『高額医療・高額介護合算療養費制度』です。

この制度は、介護合算と書いてあるとおり、高額療養費制度の対象になっている家庭に、介護保険制度を利用している家族がいる場合に利用できるものです。

計算の方法としては、毎年8月から1年間。医療費と、介護保険にかかった費用を足したものが下の表の金額を超えていれば、超えたぶんだけそのお金がもどってきます。

<高額医療・高額介護合算療養費制度の限度額>

後期高齢者医療制度
+介護保険
(75歳以上のいる家庭)
    健康保険
+介護保険
(70~74歳のいる家庭)
    健康保険
+介護保険
(70歳未満のいる家庭)
上位所得者
現役並所得者
67万円67万円126万円
一般56万円62万円67万円
低所得者
(所得ゼロ)
31万円31万円34万円
低所得者
(それ以外)
19万円19万円

例えば、一般家庭に分類されていて、75歳以上の方のいる家なら、1年で100万円、医療費と介護費用にかかった場合、56万円との差額の44万円が返ってくる計算になります。

※参考:厚生労働省 高額医療・高額介護合算療養費制度について

申し込みの方法や、自分が具体的にどのくらい返してもらえるかなどについては、入っている健康保険の窓口に直接、問い合わせてみてください。

3、高額医療費貸付制度

高額療養費制度を利用する場合、事前の申し込みができていないと、支給まで3か月かかることになります。そのため、当面の医療費が足りないときにはそれだけでは、間に合わないということもあります。

そんなときのために用意されている制度がこの『高額医療費貸付制度』です。これを使えば、健康保険の機関から、当面の医療費について利子なしで貸し出してもらうことができます。

借りられる金額の限度は、申し込んだ高額療養費制度で戻ってくる予定のお金の8割から9割程度といったところ。

3か月後、高額療養費としてお金が戻ってくる際にそこから差し引かれます。貸し付けがされるまでの期間は大体、2~3週間ほどのことが多いようです。

申し込みに必要な書類はその人が入っている保険によってそれぞれ違うので、その保険の運営をしている機関にしっかりと確認をしてください。

※一例:全国健康保険協会 『高額医療費貸付制度について 1、申し込み方法』
・自治体ごとの医療費制度

また最後に、住んでいる地方の自治体が行う、医療費の支援制度を利用することができる場合もあります。多くの自治体では、難病や、こころの病気、片親の家庭で医療費を払うのが難しい場合について、その助けとなる助成制度を用意しているからです。

※一例:東京都医療費公費負担事業等一覧

上に載せたのは、東京都のそれぞれの自治体が導入している医療費への助成制度の一覧です。このように、入院や治療が必要な病気の内容しだいでは、国からの支援を受けることも可能になっています。

4、最後に

ここまで見てきた制度には、いくつか注意しなくてはいけない点があります。

申し込んでから給付までにどれも多かれ少なかれ、時間がかかるということも忘れてはいけないということです。申請する際は、余裕を持って、必要だと気付いたらすぐに申し込み手続きをしてください。

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この記事を書いた人

ソクラテス編集部です。

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