取引信用保険とファクタリングの違いを比較【メリット・デメリットを解説】

企業にとって、取引先の倒産などで売掛金の回収ができない「貸倒れ」は大きなリスクです。

貸倒れリスクに備える主な方法として「取引信用保険」と「ファクタリング」があり、それぞれ下記のような人におすすめです。

取引信用保険

取引先の全部または一部の売掛債権に包括的に保険をかけて備えたい人、貸倒れコストを平準化したい人におすすめ!

ファクタリング
  • 保証ファクタリングは特定の売掛先のみの貸倒れに備えたい人におすすめ!
  • 買取ファクタリングは貸倒れリスクに備えられる側面もあるが、スピーディーに資金調達したい人におすすめ!

本記事では、取引信用保険とファクタリングの違いやそれぞれのメリット・デメリット、どのような人に向いているサービスかを詳しく解説します。ぜひ参考にして自分に合った方法でリスクに備えてくださいね。

目次

取引信用保険とファクタリングの主な違い

各サービスの違いを一覧表にし、比較しました。

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取引信用保険保証ファクタリング買取ファクタリング
主な目的貸倒れに備える貸倒れに備える資金調達
対象となる債権取引先の全部または一部の売掛債権特定の売掛債権特定の売掛金
主なメリット・貸倒れのリスクを回避できる
・金融機関からの評価が上がる
・貸倒れコストを平準化できる
・保険会社が取引先の信用調査を行ってくれる
・貸倒れのリスクを回避できる
・特定の取引先を指定できる
・売掛先に知られない
・建設業では保証料が助成金の対象となる場合もある
・売掛金を使ってスピーディーに資金調達ができる
・貸倒れのリスクを回避できる
・自社の信用力が低くても利用できる可能性がある
主なデメリット・取引先の信用力が低いと加入できない場合がある
・取引先の指定ができない
・100%保証されないケースが多い
・取引先の信用力が低いと加入できない場合がある
・債権回収不能となった場合のみしか保証されない
・利用できる売掛債権に下限がある場合がある
・手数料が高い
・取引先にファクタリングの利用が知られてしまう可能性がある
・偽装ファクタリングや悪徳ファクタリング業者に注意が必要
コストの相場1%〜3%1%〜8%2社間ファクタリング:10%~20%
3社間ファクタリング:1%~9%

次の章からは、それぞれの特徴やメリット・デメリットについて詳しく説明をしていきます。

取引信用保険とは

取引信用保険とは、取引先が倒産などで支払いができなくなった時に損失を補填してくれる保険です。

売掛債権に包括的に保険をかけて貸倒れリスクに備えたい人や貸倒れコストを平準化させたい人におすすめと言えます。

取引信用保険には以下の2種類がありますので、事業内容に応じて利用しましょう。

  • 国内取引信用保険:国内の取引先が債務不履行となり被保険者が損害を被った場合に保険金が支払われる。
  • 輸出取引信用保険:取引先国の輸入制限などで債権を回収できず損害を被った場合に保険金が支払われる。

取引信用保険のメリット4つ

  • 貸倒れのリスクを回避できる
  • 金融機関からの評価が上がる
  • 貸倒れコストを平準化できる
  • 取引先に知られることなく、保険会社が取引先の信用調査をしてくれる

取引信用保険をかけると、売掛金などが回収不能になっても保険金が支払われるので資金繰りの悪化を防げます。そのため、取引信用保険に加入すると金融機関からの評価が上がるのが一般的です。取引信用保険に加入していれば、貸倒れのリスクが低いとみなされるため融資なども受けやすくなる可能性があります。

また、貸倒れは頻繁に起こるものではないかもしれませんが、万が一発生した時のコストは大きくなり、財務を圧迫する恐れもあるでしょう。しかし、取引信用保険をかけておけば貸倒れコストをフラットにでき、キャッシュフローを安定させられます。

信用調査のプロである保険会社が取引先の信用調査を行ってくれるのも、安心感がありますね。

取引信用保険のデメリット3つ

  • 取引先の信用力が低いと加入できない
  • 取引先を指定できない
  • 100%保証されないケースが多い

取引信用保険は取引先の信用力があまりに低いと加入できなかったり、保険料が高くなってしまう可能性があります。

また、補償対象となる取引先は「全取引先」「売上上位10社」などと指定されるのが一般的なので、特定の取引のみに保険をかけたい場合には向いていません。

さらに、売掛金などが回収不能になっても補償される金額は8割から9割程度が多く、全額補償されないケースが多いのもデメリットと言えます。

ファクタリングとは

ファクタリングは、売掛債権を現金化することができるサービスです。主に「保証ファクタリング」と「買取ファクタリング」の2種類があり、どちらも貸倒れリスクに備えられる仕組みですが主要な目的が異なります。

特定の売掛金の貸倒れリスク回避が目的なら保証ファクタリング、資金調達がいちばんの目的なら買取ファクタリングがおすすめです。

  • 保証ファクタリング:貸倒れが発生したときに、対象となる売掛債権の一部が補填される。
  • 買取ファクタリング:売掛金を売却することでスピーディーに資金調達できる方法。売掛金を回収できない場合のリスクは、売掛金を買い取ったファクタリング会社が負う。

保証ファクタリング

保証ファクタリングとは、取引信用保険と同じように取引先の貸倒れに備えるサービスです。

ファクタリング会社に保証金を支払うことで、対象の売掛債権が貸倒れた場合その一部を補填してもらうことができます。

取引信用保険と目的は一緒ですが保証ファクタリングでは売掛債権を指定できるので、特定の売掛債権の貸倒れリスクに備えたい場合におすすめです。

保証ファクタリングのメリット4つ

  • 貸倒れのリスクを回避できる
  • 取引先を指定できる
  • 売掛先に知られることなく、ファクタリング会社に信用調査をしてもらえる
  • 建設業では保証料が助成金の対象となる場合もある

保証ファクタリングは、売掛債権が回収できなくなった時のリスクヘッジを目的としたサービスです。

取引信用保険とは違い、取引先を指定できるのが大きな魅力。

また、取引先に知られることなくファクタリング会社が取引先の信用状況を審査してくれる点も便利です。

ファクタリングの利用が広く普及している建設業では、ファクタリング保証料が国からの助成金の対象となる場合もあるので、当てはまる場合は申請してみると良いでしょう。

参考:国土交通省-売掛債権保全事業について

保証ファクタリングのデメリット3つ

  • 取引先の信用力が低いと加入できない
  • 債権回収不能となった場合のみしか保証されない
  • 売掛債権の下限額が設定されていることが多い

保証ファクタリングは取引先の信用力が低いと利用できない場合があります。信用力が低いほど貸倒れの可能性が高く、ファクタリング会社が負うリスクが大きくなるためです。

貸倒れのリスクヘッジを目的とするサービスなので、債権が回収不能となった場合のみしかファクタリング会社からの支払いはありません。かけ捨て保険のようなイメージで、債権が回収できてもできなくても保証料は返金されないので注意が必要です。

多くの取引先や売掛金の大部分を対象とすると、保証料が膨れ上がるので売掛債権の選定はよく検討しましょう。

その他に、利用できる売掛債権の下限額が数十万円~数百万円に設定されていることが多いので小口の売掛債権には利用しにくいのも注意点の一つです。

買取ファクタリング

買取ファクタリングとは、売掛金を売却しその代金として現金を手に入れられる資金調達方法です。一般的にファクタリングというと、買取ファクタリングを指します。近年、経済産業省も普及に力を入れている資金調達方法です。最短即日で現金化が可能なので、貸倒れリスクの回避に加え、スピーディーな資金調達をしたい人におすすめと言えます。

買取ファクタリングのメリット3つ

  • 売掛金を使ってスピーディーに資金調達ができる
  • 貸倒れリスクを回避できる
  • 自社の信用力が低くても利用できる可能性がある

買取ファクタリングは売掛金の売却なので、審査が柔軟で最短即日で資金調達できるのが大きなメリットです。融資と異なり担保や保証人も不要で、主な審査対象は売掛先の信用力・支払能力なので、自社の信用力が低くても利用できる可能性があります。
また、売掛金を買い取ったファクタリング会社が貸倒れリスクも負うことになるので回収不能のリスクに備えられるという側面も持っているのです。

買取ファクタリングのデメリット3つ

  • 取引先にファクタリングの利用が知られてしまう可能性がある
  • 手数料が高い
  • 偽装ファクタリングや悪徳ファクタリング業者に注意が必要

買取ファクタリングには2社間・3社間という2種類の取引形態があります。3社間ファクタリングの場合には取引先も含めた3社間契約になるので、取引先に知られたくない人は利用しない方が良いでしょう。ただし、2社間の場合は自社とファクタリング会社での取引となるので、取引先への通知は不要です。

  • 2社間ファクタリング:自社とファクタリング会社の2社間で行われるファクタリング。2社間取引なので売掛先に知られる心配が少ない。
  • 3社間ファクタリング:自社・売掛先・ファクタリング会社の3社間で行われるファクタリング。3社間での契約となるため売掛先への通知が前提となる。

また、買取ファクタリングは取引信用保険や保証ファクタリングに比べると手数料の相場が1~20%程度と高い傾向にあります。

ファクタリング業には手数料の上限について法律の定めがないため、資金調達手段としても融資に比べて割高であることが多いです。

貸金業のように登録事業者制度がなく、参入に制限や制約がないことも懸念のひとつ。多くのファクタリング会社は信頼性のある事業運営をしていますが、中には実質貸金の偽装ファクタリングを行ったり、法外な手数料を要求する悪徳ファクタリング会社も存在します。

依頼する時には、事前にしっかりとリサーチし信頼できるファクタリング会社を選びましょう。

保険ソクラテスでは、買取ファクタリングについてファクタリング会社の選び方・おすすめの会社を紹介しています。個人事業主向け・即日対応などニーズに合わせての紹介もしていますので、ぜひ信頼できる会社を選ぶ参考にしてくださいね。

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