「月払」「年払」でもなく「全期前納」or「一時払」?学資保険の保険料はどう払うのがお得なのか。

保険料の支払いは、毎月支払う「月払」のほか、半年分や一年分をまとめて支払う「半年払」「年払」という形もあり、まとめて払うと少し保険料が安くなるというメリットがあります。その最たるものが、必要な保険料を全額まとめて先払いする「一時払」です。

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「一時払」と同じく一括で払い込む「全期前納」。どう違う?!

必要な保険料をまとめて先払いするのが「一時払」。ここまでは問題ないと思いますが、実はもうひとつ、 「全期前納」という払い方もあります。 読んで字のごとく、これは、保険料をすべて先に納めてしまうことです。

……同じでは?と思ってしまいますよね。確かに、契約者から見れば、「必要な保険料を一括で支払う」ことに変わりありません。ところが保険会社側では、この2つは区別され、取り扱いが異なっています。

具体的には、全期前納した場合、その保険料はいったん保険会社が「預かった」形になり、以後、年払と同様に毎年1年分ずつが保険料の支払いに充てられます。払込期間が10年間の保険があったとして、10年分の保険料を全期前納した場合、契約者は10年分の保険料を払い込んだ気でいますが、手続き的には1年分の保険料とみなされ、残りの9年分のお金は保険会社が預かることになります。そして1年後に、また1年分が支払われたものとして処理されます。

すべての保険料を一括で払い込む一時払いと違い、ややこしいですよね。

保険会社によって、どちらの取り扱いもある場合や、どちらか一方しかできない場合がありますので、一時払と言ったときに何を指しているのかをきちんと確かめておく必要があります。

なお、前納は全期でなくても、一部だけ行うこともできます。月払をしている保険について、向こう3か月分だけ前納するといった取り扱いです。前納する分の保険料については所定の率で割引があります。

一時払と全期前納とで違う契約上のメリット・デメリット

一時払と全期前納は、保険会社内部における取り扱いが違うため、その結果、いくつかの点で違いがあります。

契約者に万一のことがあった場合、一時払だと保険料は返ってこない

学資保険は、契約者が払込期間中に亡くなったり、高度障害状態になったりした場合、以後の保険料が免除されるのが基本です(払込免除特約)。

このとき、保険料を全期前納していると、前納したうちの、まだ保険料として充当されていなかった分が返金されます。10年分の前納をしていて、3年で亡くなった場合は、7年分が戻ってくるわけです。これは、前納したものは預けていただけで、契約者死亡により、以後の保険料は払わなくてよくなったのですから、その預り金が戻されたということです。

一方、一時払していた場合、このような返金はありません。保険料はすでに全額「支払ってしまった」のであり、免除されるべき「以後の保険料」が存在しないからです。

途中解約した場合の解約返戻金は一時払の方が多い

学資保険を解約すると解約返戻金が受け取れます。このとき、全期前納ではやはり、まだ支払っていない未経過の払込期間分のお金も合わせて返金されます。一時払は解約返戻金のみとなります。ただし、払込総額が異なりますので、解約返戻金額自体は一時払のほうが多くなります。

生命保険料控除は、全期前納は毎年、一時払いは一回のみ。

全期前納は、初年度の払込以降も毎年保険料を支払っていることになるので、毎年、保険料控除を申告できます。しかし一時払は最初の年ですべて支払ってしまっているので、保険料控除を申告できるのは最初の一回だけです。

保険料は一時払の方が安く、返戻率も一時払の方が高くなる

一般的な月払などに比べると保険料は安くなり、結果、返戻率もアップします。まとまったお金を先払いしている分、保険会社が運用しやすくなるためです。当然、手続き的にも一括ですべてのお金を払い込む一時払が有利になります。保険料の割引率は低くなく、保険会社によりますが、1~2割ほど安くなると言われています。

前納した場合の割引率は「前納割引率」として公開している保険会社も多いです。以下は、いくつかの保険で現在、公開されている前納割引率になります。

保険会社前納割引率
明治安田生命0.06%
日本生命0.01%
ソニー生命0.01%
フコク生命0.05%
住友生命0.06%
三井住友海上あいおい生命0.01%
損保ジャパン日本興亜ひまわり生命0.01%

この割引率ですが、単純に保険料に掛ければいいというわけではなく、預金の利息などと同様に複利になり、また、前納する期間に応じて掛かりますから、割引率がわかっていても実際に保険料がいくらになるかは簡単には計算できません。そのため、前期前納の保険料がいくらになるかは、個別に見積もりを出してもらう必要があります。

また、前納割引率は、「前納によって保険会社が預かったお金につく利息」でもありますので、予定利率をもとに決まります。残念ながら2017年の標準利率引き下げにともない、前納割引率も引き下げられました。その結果、前納することでお得になる割合も下がってしまったことになります。

結局、一時払と全期前納とではどちらを選ぶのが賢いのか?

では、一時払と全期前納とを選べる場合、どちらに決めるのがお得なのでしょうか? 割引率は一時払のほうが高いため、返戻率を追求するなら一時払ということになります。もちろん、一括で支払うだけのお金を用意できることが前提です。

ただ、先に述べたような、保険料や返戻率以外の点を忘れてはいけません。一時払では、保険料控除を申告できるのが最初の一回だけになってしまうなど、割引率以外の面では「全期前納」のほうがメリットが大きいです。

特に大きいのが、契約者死亡の場合です。契約者死亡時に以後の払込が免除されるのは学資保険最大のメリットです。

一時払でも支払いは発生しないものの、全期前納は未経過分の返金があるため、いくらか救いになるでしょう。契約者が亡くなっているのでお得というのもおかしい話ですが、「死亡時のリスクヘッジ」という保険本来の役割を活かせるのは、全期前納の方です。

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