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貯蓄性の商品の利率が軒並み下がっている昨今、子どもの教育資金をどうやって準備すればいいか、頭を痛めている人も多いのでは。学資保険も返戻率が下がってしまっていますが、それでも学資保険を利用すべきか、それとも他の方策を探るべきでしょうか?
「保険ソクラテス」では、まず、どうやって教育資金を準備している人が多いのか、アンケートを実施。その結果をもとに、教育資金づくりに詳しいファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんにお話をうかがいました。
※記事中のアンケートは、2017年6月、クラウドワークスを使用し、400名の男女に対して行いました。
――今回、ネットユーザーに、お子さんの教育資金をどうやって貯めているか?というアンケートを行いました。結果、全体の6割くらいの方が学資保険を利用していました。選んだ理由は安全性が高いから、ということのようです。
回答 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
学資保険・子ども保険 | 241 | 60.30% |
定期預金 | 139 | 34.80% |
学資保険以外の保険商品 | 35 | 8.80% |
財形貯蓄 | 16 | 4.00% |
その他の金融商品 | 11 | 2.80% |
投資信託(ETF、J-REITも含む) | 9 | 2.30% |
株式(ミニ株、累積投資も含む) | 8 | 2.00% |
外貨預金 | 8 | 2.00% |
個人向け国債 | 4 | 1.00% |
特に何もしていない | 63 | 15.80% |
回答 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
安全性が高く、損をしなさそうだったから | 115 | 28.8% |
返戻率が高く、多く貯められそうだったから | 109 | 27.3% |
強制的に貯められるので、貯めやすそうだったから | 94 | 23.5% |
親に万一のことがあった場合も安心だから(払込免除や育英年金が魅力) | 93 | 23.3% |
子どもの医療保険としても利用できるから | 53 | 13.3% |
保険会社や銀行などで勧められたから | 33 | 8.3% |
雑誌やネットの記事、友人の話などで「学資保険がいい」と聞いたから | 32 | 8.0% |
その他 | 24 | 6.0% |
畠中:学資保険の利用がずいぶん少なくなったな、という印象です。私の頃は学資保険加入率は8割を超えていましたから。
――教育資金づくりにおいて、学資保険の重要性が下がってきているのでしょうか?
畠中:いえ、それは変わらないと思います。子どもが小さいうちは家計に余裕があります。教育費がかからないからです。お子さんが小さい頃はやりくりがラクですから、学資保険なんてなくても大丈夫と言う人も多いんですが、中学生くらいになって学資保険に入らなかったことを後悔している人はたくさんいるんですよ。
子どもが小さい頃は誰でもやりくりできるんです。でも成長するにしたがって親の意志ではコントロールできないお金が増えてきます。そのときに学資保険に入っているかいないかが、将来の教育資金準備をかなり決めてくると言えます。
子どもが大学に入る頃って、親の老後が近づいている時期なので、その頃から貯金が減るのは怖いことなんですね。親が40代までに子どもが大学を卒業してくれればいいけれど、最近は晩婚・晩産の傾向でそういう家庭はなかなかない。すると、仮に1,000万円の貯金があっても大学生が2人いたらなくなってしまいますよね。それって怖くないですか? やはり、大学入学までの資金を学資保険で準備して、心の余裕をつくるのがいいと思います。
――2017年の予定利率の低下で、学資保険の返戻率は大きく下がってしまいました。今回のアンケートで、学資保険を利用していない人に、利用していない理由を聞くと、返戻率が低いからという回答が多かったです。
回答 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
返戻率が低く、大して貯められなさそうだったから | 55 | 13.8% |
他の貯め方や金融商品に優先して資金を使ったから | 37 | 9.3% |
「学資保険・子ども保険」のことを知らなかった、よくわからなかったから | 34 | 8.5% |
元本保証ではなく、リスクが高いと思ったから | 16 | 4.0% |
育英年金や医療保障など保険の機能に魅力を感じなかったから | 12 | 3.0% |
雑誌やネットの記事、友人の話などで「学資保険はよくない」と聞いたから | 10 | 2.5% |
その他 | 27 | 6.8% |
畠中:それでも、返戻率が110%を超える商品はありますし、105%くらいの商品なら複数の選択肢がありますよね。返戻率を上げるには、短期払にするのがコツです。元本保証で、学資保険の代わりになるような他の商品があるかと言えばないんですよ。あれこれ悩む時間があれば、早めに学資保険に入って、続けていくほうが安全だと私は思います。
私は3人の子どもたちの学費はすべて学資保険をはじめとする保険で準備しました。中学から私立に行くつもりで準備していましたが、下の2人は中学受験をしなかったので、そのお金は海外旅行に使いました。時代が良くて返戻率も高くて有利だった面もありますが、必要なときに必要なお金が貯まっているのは本当にありがたかったです。
私はさすがに(苦笑い)、もう子どもは産みませんが、もし孫ができたら、やっぱり学資保険に入ると思います。ただ、払い方を短期払にするなど、返戻率を上げる工夫をすると思います。
学資保険に入らなくても貯金できるなら、もちろんそれでもいいんです。でも入らずに、貯まらなかった人を私はたくさん見てきています。その人たちに過去に戻ったら学資保険に入るか?と聞いたら「入ります」と言うでしょう。逆に学資保険でお金を準備できた人に、「学資保険に入らないか?」と聞いたら、やっぱり「入ります」と言うんですね。
赤ちゃんのママ同士で話し合っても建設的な意見は出てこないのではないでしょうか。親ががんばってもやりくりに行き詰まる時期を経験してないからです。経験者の意見を聞いたほうがいいと思いますね。
――学資保険を利用している人に加入している商品を聞いたところ、かんぽ生命が人気でした。畠中さんが注目されている商品や、おすすめの学資保険などはありますか?
回答 | 人数 |
---|---|
かんぽ生命 | 71 |
フコク生命 | 22 |
ソニー生命 | 22 |
JA共済 | 17 |
アフラック | 15 |
第一生命 | 12 |
日本生命 | 11 |
明治安田生命 | 9 |
住友生命 | 6 |
メットライフアリコ | 2 |
三井住友海上あいおい生命 | 2 |
オリックス生命 | 1 |
SJNKひまわり生命 | 1 |
東京海上日動あんしん生命 | 1 |
AIG生命 | 1 |
畠中:上位の商品は、いずれも人気商品ですが、この4月に各社とも返戻率がかなり下がったので、そこはより気をつけて選ぶ必要はあるでしょう。中には、返戻率が100%を割り込む商品も出てきましたから。17歳払や18歳払は避けて、できるだけ10年払・10歳払。せめて12歳払ですね。返戻率が下がったのだから、短期払いを原則として、自分の力で返戻率を上げなきゃいけない。
あと、学資保険はドアノック商品という位置づけで、単品加入をなかなかさせてくれない保険会社もあります。そのあたりの注意も必要ですね。アフラックなどが、単品加入OKで良かったんですが、今回、返戻率が100を切ってしまいました……。
――ソニー生命が「学資プラン」と銘打って米ドル建て養老保険を販売していますね。
畠中:私は外貨が好きなので抵抗はないけれど、なんにも考えずに「とりあえず入っておこう」とまではいえないような気がします。
外貨建てを利用するならまず、円高のタイミングで外貨預金で貯めていくのがいいです。その外貨預金から保険料を払える会社もあるからです。それでレートのいいときに何年かぶんか払うなどすると、多少、為替のヘッジができます。
そんなふうに、利用の仕方、加入する側に努力が必要になってきましたね。だから外貨建てを1本目の貯蓄手段にするのはおすすめできません。まずベースを貯めて、2本目に利用するといいのではないでしょうか。
――学資保険に関して、加入時期はいつがいいかなど、入り方のコツなどはありますか?
畠中:昔は学資保険の満期時期、つまり100万円や200万円などのまとまった学資金を受け取るのが契約応当月でした。12月に契約が成立したら、満期時の学資金も12月にもらうという形。今は年金形式の商品が多くて、これは各社が決めたタイミングで支払われます。なので、祝金などを実際いつ貰えるのかをきちんと把握しておいて、いつ・いくら貰えて、そのお金を何に使うのか、あらかじめ計画しておくといいですね。
加入時期は、いつでもいいと思います。出産予定日の140日前から入れますので、出産後の慌ただしい時期よりも、妊娠中に入られたほうが良いかもしれません。医療特約をつけたい場合は、出生前に入ると、子どもが生まれてから健康状態の診査を受けたうえで、医療特約は後から付加することになりますが、貯める目的では医療特約はつけないほうがいいですから。ただ、保険料が安い0歳のうちには入ったほうがいいと思いますね。
――契約するのは父親と母親のどちらがいいでしょう?
畠中:お母さんが専業主婦であれば必然的にお父さんが加入することになるでしょう。共働きなら、1本目はお父さん、2本目はお母さんというふうに入れば、死亡保障の代わりにもなっていいと思います。
――教育資金づくりを考えるうえで、大事なのはどういうことでしょうか?
畠中:よく子ども1人あたり1,000万円が必要だなどと言われますが、その半分は幼稚園~高校までの14年間でかかるお金。残りは大学の4年間でかかるお金。きつさが違うんです。多くの人はまとめて1,000万円で考えてしまうから「どうすればいいかわからない」となってしまいます。
でも「18歳からの4年間で500万円」と考えたら、そのうち200~300万円は学資保険で用意して、200万円は児童手当を貯めておいて……など、考えられるようになる。1,000万円の内訳を考えたほうがいいですね。
今、高校の学費は助成制度がかなりあります。「ウチはお金がないから公立で……」という考え方はもう時代遅れ。公立校に行っても塾代がかかりますし、私立は推薦での大学進学が多いのに対し、公立はたくさん受験するから受験費用もかかる。一方、高いイメージがある私立校は、助成金があるので、トータルでは公立と私立の差がかなり縮まってきています。そういう情報を得ておくことも重要です。
――何にお金がかかるのかを知っておくということですね。
畠中:うちは真ん中の子が、大学を4年で卒業できないかもしれなくて(笑)。そういう計画倒れも起こります。
他に、就職活動の前に運転免許を取ったほうがいいとか。特に地方だと、免許がないと就職が難しい。この費用を親が払わなければならないケースも多くなります。女の子だと、成人式の振袖。レンタルしたとしても、着付けや、写真撮影、祖父母に贈るアルバム代……などを入れると20万円くらいかかってしまうんですよ。そういった付随費用のようなものもあります。知らないと怖いことですね。そのときになって初めて、「えっ、そんなお金もいるの?」となるわけですから。
今、奨学金の返済に困る人が多いということで問題になっていますよね。奨学金はできるだけ借りないか、借りるとしても額が小さいほうがいい。そう思えば、10歳くらいで払い終えた学資保険を大事に持っていて、大学時代の学費の半分くらいは学資保険でまかない、負担をなくすというのは大事。今の奨学金の問題も、もとをただせば学資保険に入らなかったことも、原因に含まれている可能性があるわけです。
――学資保険以外に、積極的に運用していく投資性の商品を利用したほうがいいでしょうか?
畠中:もちろん余裕があるならやればいいですね。でもそれはベースがあってこその余裕です。安全性の高い方法でベースをしっかりつくっておくべきです。
そのうえで、本当に増やしたいなら銘柄を選んで個別株に投資するのがいいと思いますが、今は初心者がやるには相場が少し高いです。今なら投資信託がいいかもしれません。
大事なのは、続く方法でやるということ。運用で儲けることばかり考えている人が多いですが、運用のリスクはぶれ幅です。7%儲かるものがあれば、マイナス7%になるのも想定内なんですよ。そこで、マイナスになったらすぐやめてしまう人は、最初からやらないほうがいいですね。マイナスになることもありつつ、平均では預貯金より高いリターンを目指す、というのが運用です。
私は上がったり下がったりするのは平気で、中には紙くずになってしまったようなものもありますが、トータルではいい数字になっています。でも自分には投資のセンスがないと思ったので、アクティブな売買はやめて、一定以上になったら売る、一定以下なら買う、というルールを決めてやったらそれ以来損をしなくなりました。自分に合った方法を見つけるのも大事ですね。
あとは長い目で見ること。短期間で成果を求めるのは違います。
――きちんと勉強することも必要ですね。
畠中:はい、投資信託だからプロに任せておけばいいだろう、というのではダメですね。定期的に組み換えたりといった作業も必要になります。
そういえば、先日、ある企業の株主総会で、小学生くらいのお子さんが親に連れられてきているのを見かけました。きっとジュニアNISAで株主になった子どもたちではないでしょうか。
――そういう時代なんですね! もしかしたら、お子さんに自分で自分の教育資金をつくらせる、ということもできるかもしれませんね。
畠中:投資教育にもなるし、親子でやってみるのも面白いですね。
――最後に、教育資金に悩むみなさんにメッセージを。
畠中:これだけ奨学金問題が報道されているのに、0歳児のママたちは「教育資金どうしよう、どうしよう」って言っています。私は「とりあえず学資保険に入って、入学時期の費用を準備しよう!」と言いたいです。
運用で増やそうとしても、実力や相場環境などの運の要素もある。ベースの部分の教育資金は確実に貯めるのが鉄則です。それなら、とりあえずでも学資保険に入って粛々と準備しておけばいいのではないでしょうか。
学資保険が万能だとは思わないし、絶対の正解とも言えません。でも不正解ではないと思っています。
――ありがとうございました。