団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローンを組むときに、ローンの債務者(返済している人)が死亡や高度障害状態になった場合、ローンの残債(ローンが残っている金額)を保険金で相殺(一括返済)し、遺族にローンを残さない保険です。通常、住宅ローンを組んだときに加入します。
近年の団信は、死亡時だけでなく、がんなどの疾病保障を付したものがあります。このがん保障付団信について、見てみましょう。
「がん団信」とは、団信にがんの保障をつける特約
団信にがん保障をつける特約(ここではがん団信とします)は、がん(悪性新生物)にかかった場合、死亡時と同様に、ローンの残債を保険金で相殺します。つまり住宅ローンを気にすることなく、がん治療に専念することができます。
誤解のないようにしたいのは、がん団信はローンの残債を相殺するのであって、債務者の治療費などには充当されません。また、次のような点にも注意してください。
- 上皮内がんは保障しないのが一般的
- がん保険同様、加入当初90日の免責期間がある
さらに、特約部分を途中で解約できない団信もあります。加入するときはしっかり確認しましょう。
がん団信の保険料は住宅ローン金利に上乗せされる
団信の保険料は、一般的に住宅ローンの金利に上乗せされます。つまり返済時の利息相当部分に団信の保険料が含まれます。がん団信の場合、がん保障部分としてさらに0.1~0.3%が特約保険料として上乗せされます。
仮に、3,000万円の残債の場合、金利が0.3%とすると1回当たりの保険料相当分が7,500円になります。がん団信をつけることで住宅ローンの返済額が7,500円アップするということです。一見、高そうにみえますが、この特約によって、がんにかかった場合は残債が相殺されるのですから、保険金額3,000万円のがん保険に入ったようなものです。
たとえば、診断給付一時金100万円、入院給付金日額1万円のがん保険を30歳から65歳までの有期払にした場合、月払で3,120円になるとしましょう。この保険と比べてみると、がん団信は実はかなり割安といえます。しかも、団信の場合は、返済のたびに残債が減っていくので、それに合わせて利息相当部分すなわち保険料相当部分も減っていきます。
がん団信の必要性を考える
住宅ローンを組む場合、通常は団信に加入することになっていますが、そこにがん保障を付けるべきかを考えてみましょう。東京都福祉保険局の「がん患者の就労等に関する実態調査(平成26年5月)」によると、がん治療によって収入が減った人の割合は約58%、また退職した人の割合は約21%になります。
また、長期休業等の理由で、昇進・昇給に影響が出ることも考えられ、収入に対する影響はかなり大きいといえます。がん保障のない団信の場合、死亡または高度障害にならないと保険金がし支払われません。つまり、がんにかかった場合でも、住宅ローンを抱えることになります。
収入が減った状態で、生活費とローン返済の支出のうえに、さらに治療にかかる支出が増えます。それを踏まえて、がん治療時に住宅ローンの残債を気にしないでよいことや、そのための保険料が割安であることを考えた場合、がん保障を付した団信に加入するメリットは高いと言えるでしょう。
がん団信に入っていると、がん保険は不要?
では、がん団信があれば、がん保険は不要なのでしょうか? がん団信はがんにかかった場合に住宅ローンの残債に保険金が支払われますが、債務者の治療費は支払われません。そのため、がん治療のための費用を別途準備しておく必要があります。がんにかかった場合の住宅ローンの返済と治療費の確保は切り離して検討すべきなのです。がん団信に加入しているから、がん保険は不要だという結論にはなりません。