質の高いがん医療を提供する「がん診療連携拠点病院」とは

がんは日本人の死亡原因1位の病気であり、その意味で国民的な課題であるともいえます。そのため、地域によってがん医療に格差が生じることのないよう設置されているのが、「がん診療連携拠点病院」です。

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全国どこでも高度ながん医療を受けられるための拠点

現在、日本では平成18年に制定された「がん対策基本法」に基づく「がん対策推進基本計画」に従い、がん医療の整備が進められています。その一環として、地域ごとに提供されるがん医療に格差が出ないようにすること(「がん医療の均てん化」といいます)があります。

医療法という法律により、各都道府県は、一定の地域単位ごとに、定められた医療を提供できる体制を整えておくことになっています。この地域単位を「医療圏」といい、おおむね複数の市町村が含まれる範囲で、健康増進・疾病予防から入院治療まで一般的な保健医療を提供するのが「二次医療圏」です。この二次医療圏に一か所を目安に、がんについて優れた医療を提供できる医療機関を都道府県知事が指定し、厚労省が認可する形で、「がん診療連携拠点病院」が指定されます。

これによって、日本のどの地域であっても、質の高いがん医療が受けられることを目指しています。

「がん診療連携拠点病院」でない病院が、がん治療に適さないというわけではありませんし、「がん診療連携拠点病院」だからといって完治が約束されているわけでもありません。しかし、メディアでしばしば取り上げられるような、特定の「がんの名医」を遠方まで訪ねて頼らなくとも、身近な地域で高度ながん医療が受けられる体制づくりが、国によって進められていることは知っておいてください。

現在、全国におよそ400の「がん診療連携拠点病院」があります。一覧は厚生労働省のサイトで確認できますので、自分の地域ではどこにあるか、一度確認しておきましょう。

がん診療連携拠点病院の役割と今後の課題

がん診療連携拠点病院は次のような役割を担っています。

  • 専門的ながん診療の提供
  • 専門的な知識・技術を持つ医師の配備
  • 患者への情報提供と相談対応
  • 地域の医師・医療機関との連携と協力体制づくり

いずれも重要な役割ですが、最後に挙げた「地域の医師・医療機関との連携と協力体制づくり」について少し解説を加えましょう。

現在、日本の医療制度では、高度な先進医療設備を持つ拠点病院を中核として、地域の中小病院や診療所が連携したサテライト医療を展開しています。日常的な診療は地域の診療所をかかりつけ医として利用し、高度な医療が必要な場合は拠点病院を利用するという形です。

がん診療連携拠点病院には、がん医療において、同じような体制をつくる拠点機能が期待されています。長期に渡るケアが必要になりがちながん医療では、専門医、かかりつけ医、薬剤師、看護師といった医療従事者が役割分担をしながら、総合的に治療・ケアをしていくことが重要だからです。

なお、がん診療連携拠点病院の現状には、課題もあります。がん治療は日進月歩で、新しい医療技術が開発されたときにはどうしてもひとつの拠点病院に技術が一極集中しがちです。結果、それぞれのがん診療連携拠点病院によって得意ながん治療の分野が異なってしまうという現象が起こりやすいのです。

これでは「全国どこにいても高度ながん治療を受けられるようにするという理念からは遠ざかってしまうことになるので、今後は、がん治療専門医師の育成と確保、カルテの電子化などによるがん診療連携拠点病院全体での情報共有などを通じて、医療技術の平均化を促進させる連携が求められています。

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