がんの再発・転移はどれくらい起こる?

がんは、一度治療すれば必ず完治するというものではありません。治療が終わった後も、常に再発・転移を気にしなければいけない病気です。

ここでは、がんの再発や転移とはそもそもどういった意味なのか、そして再発がどの程度の確率で起こるものなのか、といった情報をまとめました。

目次

がんが「再発する」「転移する」とはどういうことか

がんの再発・転移とは、そもそもどういった意味なのでしょうか?

まず、「再発」とは、「治療によりなくなったように見えていたがんが、再び発症してしまうこと」です。再発は、手術で取りきれなかったがんが大きくなったり、治療により小さくなっていたがんが再び成長し始めたりして引き起こされます。

また、最初にがんが発症した場所は「原発巣(げんぱつそう)」といい、その場所とは別の場所で同じタイプのがんが見つかった場合や、転移したがんが見つかった場合も再発と呼ばれます。そのため、「再発という大きなカテゴリーの中に、転移という小さなカテゴリーがある」と認識してください。

再発は大きくわけて以下の3タイプに分類されます。

  1. 局所再発……原発巣と同じ場所もしくはすぐ近くの場所での再発
  2. 領域再発……原発巣の近くのリンパ節もしくは組織でがんが成長して再発
  3. 遠隔(全身)再発……原発巣とは離れた臓器、器官での再発

次に、「転移」とは、「発症したがんが、原発巣とは別の臓器や器官に広がっていること」を指します。

転移といっても、「がんが別の場所に移動した」というわけではなく、原発巣はそのままの場所で残っています(もしくは治療により小さくなった状態でそこにあります)。その意味では、転移というよりも、「拡大」や「悪化」といった言葉の方がイメージしやすいかもしれません。

転移の種類としては、血管を経由して血の流れが豊富な場所に転移する「血行性転移」、リンパ液の集まるリンパ節への転移である「リンパ行性転移」のふたつが代表的です。これらとは違い、周囲の器官に直接広がってゆくことを、特に「浸潤(しんじゅん)」と呼び、転移とは区別します。他に、がんのできた臓器から細胞がはがれおち、近くの胸腔や腹腔に広がる現象は「播種(はしゅ)」と呼ばれます。

がんの再発はどれくらい起こるのか?

がんの再発率は臓器やステージによって違いがあるため、一概にどれくらいと断言することはできません。ただ、がん治療では、治療後5年間再発しなければ治癒とみなす考えが一般的なため、「5年生存率」が再発率のひとつの指標として用いられています。

たとえば、以下は大腸(結腸・直腸)のステージ別生存率です。

1年生存率2年生存率3年生存率4年生存率5年生存率
ステージⅠ100%100%99.3%99.1%98.9%
ステージⅡ98.9%96.9%94.0%92.9%91.6%
ステージⅢ97.4%93.6%89.8%86.6%84.3%
ステージⅣ69.9%46.4%32.5%23.9%19.6%
※「全がん協生存率」のデータを元に作成

原発巣であるがんのステージが低ければ低いほど、生存率は高くなる(=再発しにくい)傾向にあります。ただ、がんは種類によって生存率が大きく異なります。たとえば、以下は肝臓がんのステージ別生存率です。

1年生存率2年生存率3年生存率4年生存率5年生存率
ステージⅠ93.8%86.4%76.3%67.0%58.9%
ステージⅡ88.7%74.2%59.5%48.5%39.7%
ステージⅢ52.0%35.6%25.2%19.8%15.2%
ステージⅣ21.9%9.5%6.1%4.0%3.3%
※「全がん協生存率」のデータを元に作成

ステージⅠの5年生存率で比較した場合、

  • 大腸がん……98.9%
  • 肝臓がん……58.9%

と、その差は歴然です。 もちろん、これらはあくまで一例であり、治療から5年後以降に再発することも、もちろんあります。そのため、「5年生存率はあくまで再発率を予測するためにひとつの指標にすぎない」ということは覚えておきましょう。

がん保険では、再発にはどのように備えるか?

がんが再発すると、さらなる治療費が必要になるため、経済的にも大きな負担があります。がん保険で、がんと診断された場合に受け取れる診断給付金を、再発時にも受け取ることができればこの負担を保障できるでしょう。

診断給付金が、2度目以降の診断時にも受け取ることができるかどうかは、商品によって異なります。再発のリスクを重く見る場合は、複数回給付が受けられるがん保険を選ぶべきといえますが、給付金が初回のみのものに比べると保険料は高くなります。

また、複数回給付が受けられる場合でも、ほとんどのがん保険では、前回の診断を受け取ってから2年以上経過していることなどといった給付の条件を設けています。すると、せっかく保険に入っていても2年以内の再発には対応できないことになりますので、初回の診断を、再発も視野に入れた十分な額に設定しておくなどの計画性が必要です。

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