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がんの発症から進行まで。「ステージ」に関する基礎知識

ドラマなどで医師が「あなたのがんはステージ◯◯です」と告知する場面を見たことのある人も多いことでしょう。がんは徐々に進行していく病気であり、その進行の度合いがステージというものであらわされています。

ここでは、がんが進行する仕組みと、ステージについて、基本的な内容をまとめました。

がんは発生後、どのように進行するのか?

私たちが「がん」と呼んでいる細胞は、人間が生命活動を維持していく過程で、正常な細胞が傷ついたり、変異を起こしたりすることによって発生する細胞です。一般的に、がんは以下の流れで発生・進行していきます。

(1)正常細胞
問題のない、正常な状態。
 ↓

(2)異常な細胞
何らかの原因により、細胞の遺伝子が傷つき、そのまま修復されていない状態。
 ↓

(3)がん化
異常な細胞が無秩序に増え、周りに広がった状態。
 ↓

(4)腫瘍形成
がん細胞がかたまり(=腫瘍)となった状態。
 ↓

(5)転移・浸潤
がん細胞が他の組織や臓器に広がっている状態。

また、がん細胞は種類にもよりますが、多くの場合、数年の時間をかけて徐々に大きくなっていきます。

そのため、初期のがんは小さくて発見しにくい傾向にあります。CT、MRI、超音波などの検査であれば直径1cmほど、PET検査であれば5mmほどの大きさにならないと、なかなか発見できません。

がんの進行度を示す「ステージ」とは?

がんの「ステージ」とは「病期分類」ともいい、がんの大きさや広がり具合でがんの進行度を分類した基準をいいます。ステージは5年生存率を予測したり、がんの治療方法を選択するときの参考にしたりします。

ステージの基準や指標は、がんの種類によって異なるほか、国によってローカルルールがあったり、治療の目的によって変わったりもするため、これが絶対という指標はありません。ただ、数ある指標の中でもっとも代表的なのが、国際対がん連合の「TNM分類」です。この分類では、

  • がんの大きさ、広がり、深さ(T因子)
  • リンパ節への転移状況(N因子)
  • 他臓器または遠隔リンパ節への遠隔転移状況(M因子)

の3つの指標からステージを決定します。

表記は「0~Ⅳ」の5段階で、数字が大きくなればなるほど進行している状態です。

このTNM分類も、「胃がんのTNM分類」「肺がんのTNM分類」といった風にがんの種類によって分類方法が異なります。以下は、胃がんのTNM分類です。

N0
リンパ転移なし
N1
胃のリンパ節に1~2個転移
N2
胃のリンパ節に3~6個転移
N3
胃のリンパ節に7個以上転移
M1
胃以外のリンパ節転移
T1a
胃の粘膜のみ
ⅠA ⅠB ⅡA ⅡB
T1b
胃の粘膜下層に達している
T2
胃の筋層に達している
ⅠB ⅡA ⅡB ⅢA
T3
胃の筋層を超え漿膜下層に達している
ⅡA ⅡB ⅢA ⅢB
T4a
がんが漿膜を超え胃の表面に出ている
ⅡB ⅢA ⅢB ⅢC
T4b
がんが胃の表面に出たうえに、他臓器にもがんが続いている
ⅢB ⅢB ⅢC ⅢC

それぞれのステージごとの状況を簡潔に説明すると、以下のようになります。

・ステージ0
がん細胞は発生しているものの、上皮・粘膜部分でとどまっている状態。

・ステージⅠ
がん細胞が臓器の上皮・粘膜部分にあり、少し広がりを見せつつあるがリンパ節への転移はしていない状態。

・ステージⅡ
がん細胞が粘膜の下にある筋肉に達しており、少しずつリンパ節への転移も起こっている状態。

・ステージⅢ
がん細胞が筋肉の層を超えており、リンパ節へも転移している状態。

・ステージⅣ
がん細胞が発がんした臓器の壁を超えて表面に露出し、周囲の血管や臓器に転移している状態。

また、以下の表は「全がん協」(※がん治療を専門とする全国32病院の治療成績を集計する研究グループ)が発表しているもので、1970年代から30年以上とり続けてきた統計に基づく Ⅰ~Ⅳのステージごとの5年生存率です。

ステージ
5年生存率 93.1% 83.8% 54.8% 20.7%

この表を見てもらえればわかる通り、がんは早く見つかれば見つかるほど(=ステージが低いほど)5年生存率が高くなる傾向にあります。「がん治療は早期発見が大事」と言われるのには、こうした理由があるのです。

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