もしも、がんになってしまったときのためにがん保険があるわけですが、できれば、そもそも「がんになりたくない」ものですよね。では、がんを予防することはできるのでしょうか?
世の中にはさまざまな「がん予防法」の情報が出回っています。ですが、単なる俗説の域を出ないものも多いです。その中にも、確かなものは含まれているのかもしれませんが、根拠のないものも多くて、玉石混交になってしまっていると言えるでしょう。
そんな中で、科学的にがんの研究が行なわれた結果、ある程度「がんのリスク要因」として明らかになってきたものがあります。
リスク要因とは、がん発生のリスクに関係すると思われるもののこと。たとえば「喫煙」は、肺がんのリスク要因です。このことがわかっていれば、「喫煙を避ける」ことが「肺がんの予防法」であるとわかります。
そのように、科学的な研究成果が出てきているがんのリスク要因について、がん情報センターのサイトに記事( //ganjoho.jp/public/pre_scr/prevention/evidence_based.html )がありました。
この記事の情報をもとに、「がん予防法」を考えてみましょう。
生活習慣の改善で予防する
喫煙や飲酒、肥満、運動不足といったことが健康によくないということは容易に想像できます。こういった生活習慣上の問題も、がんのリスク要因です。現在、「リスク要因であることが確実」とされているものとして、以下のようなものがあります。
リスク要因となるもの | 関連するがんの種類 |
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喫煙 | 口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、胃がん、肺がん、膵臓がん、肝臓がん、腎臓がん、尿路上皮がん、膀胱がん、子宮頸部がん、骨髄性白血病 |
他人の煙草の煙 | 肺がん |
飲酒 | 口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、肝臓がん、乳がん |
肥満 | 食道(腺がん)、結腸がん、直腸がん、乳がん(閉経後)、子宮体がん、腎臓がん |
内臓脂肪 | 大腸がん |
高身長 | 大腸がん、乳がん(閉経後) |
喫煙や飲酒を控えることが、ここに挙げたようながんの予防になることがわかります。
中には「高身長」など、どうしようもないものもありますが、そんな場合でも、「背の高い人は大腸がんのリスクが高い」ことがわかっていれば、定期健診で気をつけるなどの行動がとれます。
上記は「リスクを上げる」形でのリスク要因ですが、反対に、「リスクを下げる」ことがあきらかになっているものもあります。
リスクを下げる要因 | 関連するがんの種類 |
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運動 | 結腸がん |
授乳 | 乳がん |
適度な運動をすることで結腸がんの予防に効果的、ということです。授乳は、子どもがいないとできませんから、これも「子どものいない女性は乳がんの検診を積極的に受ける」などしたほうがよいと言えます。
ここまで紹介したのは「リスク要因であることが確実」なものです。ほかに、リスク要因である「可能性大」「可能性あり」という、「たぶん関係あるが、はっきりと証明はされていない」という情報もあります。
たとえば「熱い飲食物」と咽頭がん、喉頭がん、食道がんなどとの関係がそうです。熱い飲食物を頻繁に摂取していると、喉のがんにかかりやすい可能性があるけれども、喫煙と肺がんの関係ほどはっきり因果関係が研究され尽くしていないということです。
食べ物で予防する
次に、食べ物とがんの関係を見てみましょう。「がん予防になる食べ物」の情報は世の中にあふれかえっていて、何が本当なのかわからないという人も多いと思います。 今のところ、はっきりとした研究結果が出ているのは次のようなものです。
リスクを上げる食べ物 | 関連するがんの種類 |
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赤肉・加工肉 | 大腸がん |
β-カロテンのサプリメント | 肺がん |
中国式塩蔵魚 | 鼻咽頭がん |
上記はリスクを上げるとされているもので、つまり(関連するがん予防の観点からは)食べ過ぎない方がよいといえるものです。食べたからただちにがんになるというものでもないですし、食べなかったらこれらのがんに絶対ならないというものでもありませんが、ひとつの目安にはなります(たとえば喫煙も肺がんのリスク要因ですから、煙草を吸う人はβ-カロテンのサプリメントは避けたほうがいいでしょう。リスク要因を重ねることになるからです)。
反対に、食べた方がいいと言えるものはないのでしょうか?
実は、リスクを下げるとしてはっきりと「リスク要因であることが確実」とされているものはないようなのです。今のところ可能性どまりで、研究が進められているものとしては次のようなものがあります。
リスクを下げる「可能性がある」食べ物 | 関連するがんの種類 |
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野菜・果物 | 口腔がん、食道がん、胃がん、結腸がん、直腸がん |
非でんぷん野菜 | 口腔・咽頭・喉頭がん、食道がん、胃がん |
アリウム野菜(ネギなど) | 胃がん |
にんにく、食物繊維、牛乳、カルシウムのサプリメント | 大腸がん |
食物に含まれる葉酸(海苔やパン酵母などに含まれます) | 膵臓がん |
食物に含まれるカロテノイド (緑黄色野菜などに含まれます) | 口腔・咽頭・喉頭がん、肺がん |
食物に含まれるβーカロテン、 食物に含まれるビタミンC(果物などに含まれます) | 食道がん |
食物に含まれるリコピン(トマトなどに含まれます)、 食物に含まれるセレン(アーモンドなどに含まれます)、 セレニウムのサプリメント | 前立腺がん |
※ただし、これらの食物はあくまで予防に関連する可能性がある食べ物であって、すでにできてしまったがん細胞に対して、これらの食事を大量にとったからといって治せるというものではありません。一般的には体によいとされている緑黄色野菜や果物でも、人によっては食べ過ぎることで命を脅かすこともあるということを覚えておきましょう。
ウィルスや細菌の治療で予防する
実は、いくつかの種類のがんはウィルスや細菌への感染がリスク要因になっていることがわかっています。
代表的なものは、子宮がんとヒトパピローマウイルスの関係で、子宮頸がんという種類のがんは、原則、このウィルスの感染によって起こります。このことは、逆に、感染の有無をチェックし、対策できれば早期にがんを発見して治療できることを意味しています。また、ワクチンによって予防することでがんを予防できるともいえます。定期的に感染の有無を検査することが大切です。
ウィルスや細菌感染がリスク要因になるがんは他に、以下のようなものがあります。
リスク要因となるウィルスや細菌 | 関連するがんの種類 |
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ヘリコバクター・ピロリ菌 | 胃がん |
B型・C型肝炎ウイルス | 肝臓がん |
ヒトT細胞性白血病リンパ腫ウイルス | 成人T細胞性白血病、悪性リンパ腫 |
ピロリ菌のことは聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?胃の粘膜のなかに住みつく細菌で、胃潰瘍などさまざまな胃の病気と関係があると言われています。ピロリ菌の予防方法は確立していませんが、感染しているか調べて、除菌することは可能です。「ピロリ菌に感染していなければ絶対に胃がんにならない」わけではありませんが、ピロリ菌による胃がんの割合は意外と多いので、気になる方ははいちど検査をしたほうがいいでしょう。
このように、特定の種類のがんはウィルスや細菌感染の検査・予防などによってがん発症のリスクを抑えることが可能です。