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フラット35の審査は、民間の住宅ローンよりも甘いと言われています。事実、会計検査員が住宅金融支援機構(以下、機構)に対し、提携する金融機関の一部で適性を欠く審査が行われているとして、指導を求めたこともありました。
→フラット35、民間の審査に甘さ 検査員が指摘(日本経済新聞)
フラット35の審査はどのような基準が設けられているのか? 民間の住宅ローンとも比較しながら、その特徴や注意点などを調べてみました。
長らくの間、フラット35には機構が担当する本審査しかありませんでしたが、最近は事前(仮)審査を行う金融機関が増えてきました。といっても、民間の住宅ローンのような精度の高いものではなく、利用条件に合致しているかいないかを判断する”足切り”のようなものだと思っていいでしょう。
フラット35が求める条件というのは、大きく分けると「物件」「返済能力」「人」の3つです。
冒頭で「フラット35の審査は甘め」だと述べましたが、物件に対してはうるさいです。購入対象の住宅が、床面積や耐久性、断熱性など、指定の技術水準をクリアしていなければならず、それを証明する『適合証明書』を取得しなければなりません。
技術基準は、戸立てなら新築か、中古住宅によって異なります。マンションの場合も別基準が設けられています。
一戸建て等 | マンション | |
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接道 | 原則として一般の道に2m以上接すること | |
住宅の規模 | 70m2以上 | 30m2以上 |
住宅の規格 | 原則として、2以上の居住室(家具等で仕切れる場合でも可)、炊事室、便所、浴室の設置 | |
併用住宅の床面積 | 併用住宅の住宅部分の床面積は全体の2分の1以上 | |
断熱構造 | 住宅の天井または屋根、外壁、床下などに所定の厚さ以上の断熱材を施工(断 熱等性能等級2レベルの断熱構造) |
|
住宅の構造 | 耐火構造、準耐火構造または耐久性基準に適合 | |
配管設備の点検 | 点検口等の設置 | 共用配管を構造耐力上主要な壁の内部に設置しないこと |
区画 | ・住宅相互間等を1時間準耐火構造等の界床・界壁で区画 ・住宅と住宅以外の部分の間を壁・建具等で区画(併用住宅に限る) |
※フラット35「物件検査の関連資料」より一部抜粋して引用
なお、省エネルギー性、耐震性などに優れた住宅の場合、フラット35よりも金利が安い「フラット35S」を利用することができます。
正確には経済負担率と言いますが、要は”貸りたお金を返せる資質があるか”を見るもので、年収に占めるすべての借り入れ(フラット35を含む)の年間合計返済額の割合を申告しなければいけません。具体的には、年収400万円未満なら30%以下、400万円以上なら35%以下と定められています。
たとえば、年収500万円の人の場合、許容される総返済負担額は175万円までですから、自動車ローン、教育ローン、カードローンなどを含む年間合計返済額がそれを越える人はアウトです。
日本国籍または永住許可を受けている特別永住者であること、申込時の年齢が満70歳未満であること(ただし親子リレー返済の場合は満70歳以上でもOK)と、特に厳しい条件はありません。民間の住宅ローンと違い、職業や雇用形態についてとやかく言われることもないことから、人よりも物件重視の審査だと言えます。
事前審査は1日~数日とスピーディな一方、本審査は半月~1ヵ月、書類の不備などがあった場合は2ヵ月ほどかかると言われています。
事前審査 | 本審査 |
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・本人証明資料 ・所得証明資料 ・他の借り入れの確認資料 ・事前審査申込書 |
・本人証明資料 ・所得証明資料 ・他の借り入れの確認資料 ・申込書 ・団体信用生命保険申込書(利用する場合) ・物件書類 |
確実に書類を取り揃えるとともに、記入・捺印漏れにも注意してロスをなくしましょう。
申込窓口になった金融機関が事前審査を行い、問題がなければ、いよいよ機構による本審査です。機構は15日~25日間ほどかけ、事前審査と同様の視点でチェックしていきますが、提出書類に誤りが見られたり、虚偽の報告があったりしないかぎり、基本的にはパスできると言われています。
ただし、転職や失業など申込者側に大きな変化があった場合や、過去にクレジットカードの支払いトラブルがあるなど、信用問題にかかわる事実が発覚した場合は、落とされる可能性も十分にあります。