元利均等返済と元金均等返済の違いは? お得なのはどっち?

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住宅ローンの契約時には、金利タイプと同時に返済方法を選択しなければなりません。ここで言う返済方法とは、返済額に占める元金と利息の割合をどのように決めるか?ということです。

住宅ローンの返済方法には、元利(がんり)均等返済元金(がんきん)均等返済の2種類があります。一文字違うだけですが、特徴や計算方法が異なり、どちらを選ぶかで家計への影響が大きく変わってきます。

返済方法とは、言い換えれば「利息の支払い方」

住宅ローンは借りた金額だけ返せばいいのではなく、利息を支払わなければなりません。住宅ローンの利息は高額なうえ、計算が複雑で、たとえば3,000万円を金利1%で借り入れた場合、「3,000万円 × 1% = 利息額30万円 」とは、簡単にいきません。このように、元本だけに金利がかかることを単利といいますが、住宅ローンでは元本に利息を足したものに金利がかかる複利が使われます。

住宅ローンの利息計算は、

  • 前月の借入残高 × 月利(借入金利を12ヶ月で割り算したもの)

の式に当てはめて、毎月発生する利息額を割り出します。先ほどの、3,000万円を金利1%で借り入れた場合だと、1回目の返済時に支払う利息は、

  • 3,000万円 × 1/12%=利息額2万5,000円

となります。

2回目の返済時に発生する利息は、1回目の返済後の借入残高に、月利を掛け算します。仮に、借入残高が2,995万円だとしたら、2回目の利息は、

  • 2,995万円 × 1/12%=利息額2万4,958円

となります。これが完済まで延々と続きます。

住宅ローンは借入金額が大きいため、毎月発生する利息額が大きく、完済まで支払う利息の総額は高額になります。金利1%で3,000万円借りて、これを30年で返済するとしたら、利息の総額は470万円ほどになります。このように、住宅ローンの返済は元本の支払いだけでなく、毎月発生する高い利息も同時に払っていくので、毎月の返済額に占める「元本返済分」 と 「利息支払分」の割合をどのように設定するか?を、契約時に決めておく必要があるのです。利息の占める割合を決める方法はいくつかありますが、住宅ローンでは元利均等返済と元金均等返済のどちらかを選ぶことになります。

完済まで返済額が一定の「元利均等返済」

元利均等返済は、毎月決まった返済額を支払っていく、最もポピュラーな返済方法です。毎回の返済額が均等になるように、返済額に占める元本と利息の割合を調整する仕組みになっていて、返済が進んで借入残高が減少すれば利息が減り、元本に充当される額が増加していきます。

住宅ローン図解【保証】_06

元利均等返済を選ぶメリットは、返済額が常に一定なので長期にわたる返済計画が立てやすいことです(変動金利型の適用金利が変わらない場合)。また、次に説明する元金均等返済よりも、借入当初の月々の返済額が少なくて済みます。

デメリットは、借入当初は元本がなかなか減らないことです。初期は借入残高が大きいため、月々の利息がどうしても高くなる、つまり、返済額の半分以上が利息支払いに充てられる状況が続きます。もちろん、年数が経過すれば利息が減り、そのうち元本分と利息分の割合が逆転して、完済間近には返済額のほとんどが元本分の返済になります。

住宅ローン図解【保証】_03

元利均等返済でシミュレーションするには、まずは借入金額、金利、借入期間などの条件から、毎月の返済額を割り出すのですが、一般の人には分かりにくい公式を使います。関数が得意な人はチャレンジしてみてください。

住宅ローン図解【保証02】_15

※月利=借入金利(年利)÷12ヶ月
※返済回数=借入期間×12ヶ月

毎月確実に元本を減らしていく「元金均等返済」

元金均等返済は、毎月、均等に元本を返済していく返済方法です。返済額のうち元本分は毎回固定で、借入残高に応じた利息額が上乗せされる仕組みです。

計算は元利均等返済よりもシンプルです。まず、借入金額を返済回数(借入期間×12ヶ月)で割り算して、1回あたりの元本分を出します。たとえば、3,000万円の借入金額を30年で完済する場合、

  • 3,000万円 ÷ 360回(30年×12ヶ月) = 8万3,333円

となり、この金額が毎月元本支払いに充てられるお金になります。これに利息(前月の借入残高×月利)を足したものが、その月の返済額となります。元金均等返済の返済額は、上乗せする利息額に応じて毎回変わります。そこが、返済額が一定の元利均等返済と最も異なる点です。

住宅ローン図解【保証02】_06

元金均等返済の最大のメリットは、毎月確実に元本が減ることです。初期の元金の減りが鈍い元利均等返済に比べると返済効率が良いため、借入金額と返済期間が同じ条件なら、利息の支払総額は元利均等返済よりも元金均等返済の方が少なくて済みます。

デメリットは、借入当初の返済額が高いことです。先ほど、元利均等返済がポピュラーな返済方法だと言いましたが、初期の返済額が高いと住宅販売業者が販売しにくいといった事情があり、当初の返済額が安い元利均等返済を案内するのが一般的になっているようです。また銀行も、同条件の融資で総返済額が多くなる元利均等返済を提案することが多く、銀行によっては元金均等返済を採用していないこともあります。

借入当初は返済額が高めですが、返済が進むと返済額が減っていき、後期の負担が軽くなる元金均等返済は、「若いうちに返済を頑張って、老後の負担を減らしたい」という人には向いています。

住宅ローン図解【保証02】_03

どちらの返済方法が有利なのか?

同じ金額を借りるなら、利息の支払いを削って、できるだけ総返済額を少なくしたいものです。一般的に、元利均等返済よりも元金均等返済の方が、完済まで支払う利息の総額が少ないと言われていますが、果たしてどれほどの差があるのでしょうか?

借入金額3,000万円、1.8%の全期間固定金利型、返済期間33年という条件で、繰上返済とボーナス払いをしない場合、総返済額はこのようになります。

  元利均等返済 元金均等返済
返済期間 33年3ヶ月(399回) 33年4ヶ月(400回)
1回目の返済額 10万円(完済まで一定) 12万円(経過と共に減少)
1回目の元本充当額 5万5,000円(経過と共に増加) 7万5,000円(完済まで一定)
利息総額 990万0,000円 902万2,500円
総返済額 3,990万0,000円 3,902万2,500円

この条件の場合、総返済額は元金均等返済の方が87万7,500円少ない計算となり、借入金額が同じでも、返済方法の違いで総返済額に大きな差が出ることが分かります。これだけ見ると、元金均等返済を選択する方が断然有利に思いますが、条件によってはそうとも言えない場合があります。

条件を変えると、別の結果が見えてくる?

この事例では、返済期間が33年と条件が同じでしたが、1回目の返済額を見比べてください。元利均等返済は10万円、元金均等返済は12万円で、元利均等返済の方が2万円少ないのです。先ほど、「元金均等返済は、年数の経過と共に月々の返済額が減っていく」と説明しましたが、借入金額3,000万円、金利1.8%、返済期間33年の場合、その減少幅は1回あたり平均112円です。負担軽減を毎月実感するには「ちょっと物足りない金額」、というのが正直なところです。

そこで、元利均等返済の返済額を10万円ではなく12万円で、返済計画を立ててみてはどうでしょう?つまり返済期間を同条件にするのではなく、1回目の返済額を同条件にして比較すると、総返済額はこのようになります。

元利均等返済 元金均等返済
返済期間 26年2ヶ月(314回) 33年4ヶ月(400回)
1回目の返済額 12万円(完済まで一定) 12万円(経過と共に減少)
1回目の元本充当額 7万5,000円(経過と共に増加) 7万5,000円(完済まで一定)
利息総額 768万0,000円 902万2,500円
総返済額 3,768万0,000円 3,902万2,500円

この表でまず見てもらいたいのが、元利均等返済の返済期間。毎月の返済額が2万円アップした効果として、返済期間を7年2ヶ月短縮することができます。期間が短縮すると、その分利息支払額が圧縮されるので、利息総額は768万円となり、返済額10万円の時に比べてぐんと安くなります。総返済額は元金均等返済よりも134万2,500円少なくなり、この条件だと明らかに元利均等返済が有利と言えます。一般的に、元金均等返済のほうが、総返済額が少なるので得だと言われていますが、それは返済期間が同条件の場合に限った話で、あくまで選択肢の一例だと考えるべきです。

結局、返済方法を選ぶ決め手は?

以上、「どちらが総返済額を少なくできるか?」について説明しましたが、実は総返済額の差というのは、繰上返済をすることであっさりと埋まるものです。返済方法の選択で本当に大切なのは、総返済額というゴール地点に目を向けることではなく、20年、30年の長期間に渡って住宅ローンを返済していく過程を、自分の返済プランを中心に考えていくことなのです。

たとえば、住宅ローンの借り入れ直後は若くてまだ収入が少なく、子供の教育費など出費が多いものです。元金均等返済を選ぶと、一番お金が必要な時期に住宅ローンの返済額が高くなり、年齢とともに家計にゆとりが出た時期に返済額が安くなるといった、家計収支と不釣り合いな返済プランになってしまいます。

反対に、今は収入が安定していても、会社の業績悪化や共働きをやめる予定であるなど、将来の収入減少が予想される場合は、返済負担が減っていく元金均等返済の方が安心です。また、変動金利型で借りている人のなかには、将来の金利上昇に備えて、できるだけ金利が低い早い時期に元本を減らしておくために、リスクヘッジとして元金均等返済にしておく、という考え方もあります。

冒頭で述べた、「元利均等返済と元金均等返済の違いで家計に及ぼす影響が変わる」というのは、そういうことです。返済方法は契約後の変更が効かないので、その選択で失敗しないためにも、両者のメリット・デメリットを理解し、長い目で見たときにどちらが自分の家計収支に合う無理のない返済方法か見極めることが大切です。

■メリット・デメリットまとめ
返済方法 元利均等返済 元金均等返済
メリット · 月々の返済額が一定。長期の返済計画が立てやすい
· 返済初期の返済額が元金均等返済に比べて少ない
· 期間の経過に伴い元本が減少。月々の返済負担が軽くなっていく 
・ 返済期間が同じなら総返済額は元利均等返済より少ない
デメリット · 返済期間が同じなら総返済額は元金均等返済よりも高い
· 返済初期は元本がなかなか減らない
· 返済初期の月々の返済額が高い
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