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マイナス金利の導入で各金融機関の住宅ローン金利が急降下し、今がチャンスとばかりに借り換えに動く人が増えています。狙い通りいけば数百万円の節約が可能ですから、借り換えを検討するのは当然のことでしょう。
しかし、いくら借り換え時とはいえ、誰にとってもお得だとは限りません。借入状況によっては、借り換えをすることでデメリットを被る人たちもいます。
住宅ローンの借り換えは、残債が多く、かつ残返済期間が長いほどメリットがあります。よく言われているのは、「借入残高1,000万円以上、金利差1%以上、残存期間10年以上」が望ましいという目安。これは、1,000万円を1%の金利で10年返済にすると、利息が約52万円(つまり52万円浮くこと)になり、この額が諸費用との差し引きを考えたときに損をしないギリギリのラインだからです。
主な諸費用 | 金利1%の利息(節約額) | |
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・事務手数料 / 3~5万円 ・印紙税 / 1,000万円超~5,000万円以下は2万円 ・登録免許税 / 借入額から算出 ・登録手数料 / 10万円前後 ・保証料 / 1,000万円あたり約20万円 ・団体信用生命保険料 / 金利に含まれる場合は0.3%程度 |
→ 計30万円~50万円(ケースによる) | 約52万円 → 金利1%以下だと諸費用を下回る可能性あり! |
参考までに、住宅金融支援機構(以下、機構)による「民間住宅ローン借換の実態調査(2015年度)」を見ると、借り換えまでの経過期間はすべての金利タイプで「5年超10年以内」が多く、まだまだローンが残っているうちに少しでも有利な商品に乗り換えていることがよく分かります。
とはいえ、諸費用のなかで最も高い保証料は、「一括支払型(外枠方式)」であれば元の銀行から未経過分が(少しは)戻ってきますし、最近はネットバンクを筆頭に保証料がかからない金融機関も増えてきているので、さほど気にする必要はないでしょう。大切なのは表面上の数字ではなく、借り換えの目的をハッキリさせることです。
トータルの返済額を減らしたい人は、現在のような低金利時に固定金利型の住宅ローンを選ぶことをお勧めします。有名なのは、官民で手がける全期間固定金利型の「フラット35」ですね。低金利が顕著になり始めた2016年3月以降、フラット35の申請件数が増えたことから、同じ目的意識を持って動いた人が多いのだろうと推測できます。
もともと全期間固定金利型で借りていた人、当初固定金利型で借りていて、優遇金利が終了する人はチャンスだと思います。
毎月の返済額 | 総返済額 | |
---|---|---|
元の住宅ローン | 10万1,176円 | 2,428万2,300円 |
借り換え後 | 9万3,774円 | 2,250万5,736円 |
差額 | 7,402円 | 127万6,564円 |
変動金利型で借りているけれど、全期間固定金利型に変更したい人は、それこそ借入状況によって判断が異なります。たとえ変動金利の方が安くても、残返済期間が長い場合は全期間固定型の方が有利に進むかもしれません。総返済額を抑えるのが目的ですから、安全性を重視する意味では良い選択だと思います。
先ほど、「借り換えに踏み切る目安はさほど気にしなくていい」と述べましたが、まさにこれがそのケース。金利上昇リスクに巻き込まれたくない、安心した返済プランに立て直したいという人は、できるだけ低金利なときに、全期間固定金利型、または固定期間が返済中のローンより長いものに借り換えてください。
目的は異なりますが、方法は総返済額の削減でやることと同じですね。タイミングによっては月額または総返済額が上がる恐れはあるものの、代わりに安心感を得ることができます。
とにかく当面の返済額を抑えたいという場合は、総返済額アップの覚悟で現在よりも金利が低い変動金利型、または当初固定金利選択型を選ぶといいでしょう。職場環境の変化で収入が減った人や、子供の教育資金のために支出を抑えたい人、または当初固定金利の特約終了後の金利がキツいと感じた人などが当てはまるでしょうか。
一時しのぎな方法ですが、低金利状態が続けば借り換えのメリットを十二分に得ることができます。もちろん、その逆もありますが……。
借り換えは諸費用がネックだったり、手続きが面倒だったりでハードルが高いように感じますが、上手く活用すれば相当の節約効果があります。結果がブレないためにも、まずは借り換えで何を実現したいのか、目的をはっきりさせましょう。そのうえで自分の借入状況を把握し、冷静な目でメリットが出る可能性を計算してください。
どうしても不利な結果に陥りそう人は、無理して“借り換えブーム”に乗っかる必要はありません。返済中の住宅ローンがベストだった、そう考えるのが正解だと思います。